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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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2-07 夢が泣いている

 ここで少し、夢のなかへも……
 だれかがもふもふの夢を見ている頃、些か穏やかでない夢もあった。
「ライゼ。
 やっぱり心配だ……ライゼはセイカと一緒に行ってくれ!」
 声は、朝霧 垂(あさぎり・しづり)の声だ。
「うん……!」
 垂は、夢から現実へと戻っていくなかでパートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)を夢のほうへもう一度とばした。
 それから、
「ナガン、ナガンいるんだろ?」
 呼びかける。
 夢の世界は、赤と緑のツートンカラーだ。
 暗い湖底にだれかが泣いているのが聞こえる。
「ナガン。俺の体にこないか? ……」
 呼びかける。
「……」
 返事がない。
「……泣いてなんかいねェよ」
 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)の声だけが小さく小さくしかし確かに浮かび上がってくる。
「お前ホント良い奴だな。この戦いが終わったら飯をご馳走してやるよ。
 ……セイカを助けてくれて有難う……」
「ああ。でも、行きな。
 やる事があンだよ」
「……そうか、それじゃ、もしアンテロウムに会ったら"セイカが心配していた"と伝えておいてくれ。……」
 垂の声が遠のいて消えていく。
 現実に戻ったのだろう。
「さて。いつまでもこんなとこにはいられないナ。
 何か手がかりはないものかね。ん? キリン……セイカ。そうかさっき伝えておいてくれと言われたばかりだな。だめだ、やはりだんだん薄れていく。このままでは。……」
 キリンちゃん……キリンちゃん……
 なにかが夢のなかをとんでくる。人形?
 カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)のようだった。
 キリンちゃん……キリンちゃん……
「なんだ。アレは?」
 こちらへ向かってくる。わ、く、来るな……
 なんだ。ナガンは自身を見る。自身の姿が見えた。血塗れた教導団の制服を着て、泣いている、白髪まじりの少年だと? 何故……な、泣いている? 泣いてなんかいねェよ。これは、あの人形がイメージしているのか。しかし、ともあれこれで実体ができたぞ。
 とんできた人形が少年の姿をしたナガンをふ、っとかかえた。
 助かるか……
 人形は少年をかかえたまま夢を高速で駆けていく。
 人形の首から上が、黒い羊の頭になっていた。