リアクション
* 獅子の後陣には、教導団の橘 カオル(たちばな・かおる)そして、百合園のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)はロザリンドが担っていた物資の護衛と救護班を代理しつつ戦いに備えている。後方もまだ予断を許す状況ではない。 救護班には、前回、鴉の囚われとなっていた李 梅琳(り・めいりん)も預けられている。 前回の、テング山からテント山にかけての戦いはまさしく死闘であった。テント山の罠等、回避できていなければ形勢は完全に敵側に傾いていたかもしれない。それでも負傷者は、かなりの数に上っていた。死者も多く出ていた。 「人が死ぬのはこれで最後にしたいですぅ……」 メイベルも、大切な人たちを失った。? 東河の近くに作った墓――シャンバラン、怒鳴堵濁酢憤怒一世、ユハラたちの。そして敵であったがジャレイラの戦死したということにも驚きつつ、メイベルは……「戦いに挑みますぅ」! セシリア・ライト(せしりあ・らいと)も祈っている。「ごめんね」隣には、騎狼たちの墓もあるのだ。「イレブンさんたちも一度戦いに敗れて騎狼たちを失ったと聞くけれど、こんな心境だったのかな……」フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も同じように、無言で黙とうする。お墓に祈りを捧げると、陣地に戻る。「さあ、メイベル殿。まいりましょう。最後の戦いです」「ええ。私たちは後詰ですけど何があるかわかりませんから。守りぬいてみせますぅ。って、あれ? ユハラさん?」 そこから陣地の周辺までには、兵たちの簡易な埋葬場にもなっている。鴉やナマズなど敵の死骸は河に打ち捨てられたものもある。「双方に大量の死者が出ましたが、後世の歴史はこれをどう評価するでしょうね?」フィリッパがそう呟いた。 そのあとは、無言で歩いていくメイベルら。 兵の姿がちらほらと見えるが、精神的にかなりまいってきている者も、少なくはない。これだけの戦だ。しかもかなり長引いている。物資が届けられたと言え、堅固な拠点はないのである。そういった点で東の谷は、三日月湖やハルモニア方面での戦いより死に近い場所と言えた。 「木刀剣士さん(橘カオル)はどうしていらっしゃるでしょうねぇ?」 共に、後方を守ることになる。 白兵戦のできる彼がいてくれて、心強く思っているメイベルだが、 「ちゃんとひやかしはしませんとね。ふふふ♪」後方の幕舎についた。「木刀剣士さん。大切な人をしっかり守ってあげないとだめですよぉ。 !」 幕舎を覗いたメイベル。「木刀剣士、さん……カオルさ〜ん?」 「はぁ、はぁ……」 「……」 入っちゃいけないときだったですぅ? ……そう思ったが、「あ。メイリベルか。大丈夫だ」カオルも幾分精神状態がまいっているといった様子だった。テング山の戦いは熾烈であった。あの大将の一撃。助けが入らなければ……死んでいた、かもしれない。死。そう、もういつ死んでもおかしくない。多くの兵が死んだ。それでも、鋼鉄の獅子の仲間たちは、意気高く前線へ出ていく。もちろん、自分も最初の訓練(梅琳……)の頃から同じように戦い、その後もここまで実戦を生き抜いてきたんだ(梅琳……)。だけど、オレは……獅子の皆みたいに、どこか自信が持てないでもいた(梅琳……)。ルカルカやレーゼマン等は、指揮官としても才能を発揮し始めているが、オレはそういう才でもないし(梅琳……)……とか考えながら、訓練、と回想したところで梅琳梅琳梅琳の姿が頭に浮かんできていた。 「メイリン。はぁはぁ」 「……あの。……失礼しましたですぅ」 「あっ。メイリン」 そうだ。梅琳とクロスワードパズルでもしに行こう。カオルは立ち上がった。梅琳。元気になっているかな。あのデートのとき、聞いた梅琳の趣味。うん。メイリン。はぁはぁ。……手を握るくらいはいいよな(?)。そうだ。伝えなきゃ。今しかない。 カオルは、梅琳の休んでいる幕舎にふらふらと歩き出した。 |
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