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リアクション
「西に負けるなんて、許しませぇん!」
現れたのはイルミンスール魔法学校校長のエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)だった。ユニフォームに合わせた色のチアガール衣装である。
「あきらめたら、そこで試合終了ですぅ!」
「そうだ、諦めちゃダメだぞ! がんばれ、みんな!」
と、ベンチにいた緋桜ケイ(ひおう・けい)も立ち上がる。
現在、コート内にいる東チームの選手は、五人全てがちびっこだった。
対する西にはちびっこが一名しかいない。いや、正しくは一人もいないはずなのだが……。
『ちぎのたくらみネ! そのまま点を入れたらさっきみたく8点入るヨ』
唯一のちびっこ、緋桜遙遠(ひざくら・ようえん)は背丈が140センチほどになっていた。これでシュートを狙うつもりだった。
「ちっちゃい子ばかりで大丈夫?」
ボールを手にした芽美が向かい合うネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)へ尋ねると、ネージュは言った。
「ちびっこだからって舐めないでよねっ」
と、ボールをはたき落とす。
「ボクたちは強いよ!」
御神楽ヶ浜のえる(みかぐらがはま・のえる)がボールを取り、素早い動きで相手の目を欺く。
「もらうわね」
唐突に現れたイブ・チェンバース(いぶ・ちぇんばーす)にびくっとするのえる。イブは再び隠れ身を使うと、ドリブルを始めた。
「陽太郎!」
「おっと」
楠見陽太郎(くすみ・ようたろう)の受け取ったボールをジャンプして奪うヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)。
「背は小さいけど、運動には自信があるのですっ」
たたたっとドリブルで離れていくと、ヴァーナーは悠久ノカナタ(とわの・かなた)へパスをした。
「カナタちゃん!」
「うむ」
ボールを受け取ったカナタの前に出てきたのは透乃だった。カナタのとっさに投げたボールを上手くブロックし、キャッチする。
「ごめんね」
と、芽美へパスをし、再び陽太郎へ繋がれる。さっさとシュートを決めてしまわなければ、無駄に時間を潰してしまう。そのことに気付いた陽太郎はバスケットに向かって狙いを定めた。
「今じゃ! ちびっ娘ファイブ・トーテムポール!!」
ばばばっとフォーメーションを組む東チーム。ヴァーナーがカナタを肩車し、その上にソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が乗り、その上にはネージュ、一番上にはのえるだ。
『まさにトーテムポール! ユニークな技ネー』
「っ、ぐ……」
さすがに四人の体重を支えるヴァーナーの顔はゆがんでいた。バランスをとろうと踏ん張るが、上の方がぐらぐらと揺れている。
陽太郎は苦笑すると、彼女たちから外れた位置に移動する。相手が一つの場所に連なっている今は、いわばフリースロー状態である。
「行け、陽太郎!」
イブの声援を受けてボールを投げる。
「そ、そこだっ!」
ぴーんと両手を伸ばしたのえるだったが、ボールに触れた途端に感電する。陽太郎は密かに轟雷閃を使用していたのだ!
わずかに勢いは落ちたものの、ボールはバスケットの中へ落ちていく。一方、次々に感電したちびっこたちも床へ落ちていた。
――西:47点。
「こうなったら、あれをやるしかありません」
と、立ち上がるソア。
「誰が入れても高得点の……」
と、ネージュ。
五人は顔を見合わせると、頷いた。
しかしトーテムポールの名残で身体が思うように動かなかった。電気が流れたことも影響してか、先ほどは奪えたはずのボールが芽美から奪えない。
その結果、芽美にシュートを許してしまう。――西:49点。
「ちびっ娘ファイブ・ヘキサカット!!」
「え、何?」
ボールを持った透乃へ五方向からちびっこたちが攻めてくる。逃げ場を失った透乃は取られる前にボールを放したつもりだったが、遅かった。
「もらいましたよ!」
素敵な笑顔を浮かべたソアがドリブルで離れていき、カナタが叫ぶ。
「ちびっ娘ファイブ・イリュージョン!!」
ソアの手からボールが消えた。
「ネーマスター!」
のえるに渡されたと思ったら、次はネージュの手に。
「え、え?」
戸惑う西チームに構わず、ボールは次々と回されていく。
『まさにイリュージョン! さて、この後はどうなるのカナ?』
ボールの行く先が見えなくなって来ると、遙遠が奈落の鉄鎖を発動した。どこにあるか分からなかったボールが、遙遠の方へぽろっと転がって来る。
「ボール、もらいますね」
「あー!」
遙遠はすぐにドリブルでゴール近くまで持っていくと、重力に干渉したままバスケットへボールを投げ入れた。足りない身長を補うように、自身をバスケットの方へ引き寄せたのだ。
『またまた西の得点ネ! やっぱりちびっこ5人は辛いネ』
――西:57点。
「このままでは負けてしまうのですぅ。しっかりしなさぁい!!」
負けず嫌いなエリザベートが叫ぶ。
「ご主人! まだ時間は残ってるぜ!!」
と、応援席から雪国ベア(ゆきぐに・べあ)がソアへ叫んだ。
「ヴァーナー! 諦めないで、頑張って!」
ベンチからケイも声援を送る。
ちびっこたちは再び立ち上がった。白い羽をデザインしたバッヂと、友情の証を示すピンク色と緑色のラインが入ったお揃いのシューズを見つめて。
「ちびっ娘ファイブ・イリュージョン!!」
再び高速パスを回しはじめる五人。だが、西が動き出す前に五人がばらけた。
「今度こそっ!」
と、ボールを手にしたのえるがバスケットへ向かってジャンプする。そしてシュートを打つと見せかけて、ヴァーナーへパス。
空中でボールをキャッチしたヴァーナーは、一気にダンクシュートを放った!
「入った!」
「やりました!」
――東:49点。
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