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『ナイトサバゲーnight』

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『ナイトサバゲーnight』
『ナイトサバゲーnight』 『ナイトサバゲーnight』

リアクション

 対する甲陣営の前衛に立つセオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)は、向かい来る詩穂の士気を感じて、嘆息を漏らした。
「何だ? いろいろやったってのに、怖じ気づくどころか逆に滾らせたんじゃないか?」
「良いじゃないか」彼に並んで館山 文治(たてやま・ぶんじ)が言った。
「その方が張り合いがあってもんだ。そうだろう?」
「違いない。だが全力でやるのは構わないが、早めの店じまいってのは無しだぜ」
「へっ、そんなことしたら客の酔いを醒ましちまう。陽が昇るまでが営業時間だ」
「頼むぜマスター」
「バーテンだ。それも元な」
 共にショットガンタイプのエアガンを携えて、2人は悠々と戦場へと足を踏み入れていった。
「…ビクティム…ローダリア…」
 余裕さえ感じられる2人を正面に捉えて、銀星 七緒(ぎんせい・ななお)はパートナーたちの名を呼んだ。セオボルトたちには三位一体で挑むべきだと己が警鐘がけたたましく鳴り響いていた。
 ビクティム・ヴァイパー(びくてぃむ・う゛ぁいぱー)ローダリア・ブリティッシュ(ろーだりあ・ぶりてぃっしゅ)は一矢乱れぬ声で
「「了解っ!」」
と応えた。
 ビクティムが身体は機械の身体。
「センサー、最大レベル、正常」
 ローダリアの身体もまた機械、そして『小さな翼』を装している。
「低空飛行可能、戦闘準備OK」
 無口な七緒の身は生身。それでも2人と心は同じ。
「…よし………出る」
「「はいっ!」」
 七緒を中央に、2人は半円を弧を描くように低空を飛ぶ。
 セオボルトが中央、文治が左方を。しかしどうやっても手が足りない。先に迎撃した方が右方をみる必要があるのだが、相手はそれを読んでいたかのように『避ける』に徹した動きをした、徹した動きで迫ってきた。
「くっ」
 セオボルトが一度後方へ退く事を決意したとき、左右から迫る2人が同時に顔を右に向けた。
「左方に生体反応あり」
「急速接近物あり、矢であると断定」
「高度浮上にて回避可能。浮上します」
 機体のすぐ下を矢が過ぎていった。放たれた方向へ瞳を向けると、茂みの中に数名が潜んでいるのが見えた。その中にティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)の姿を発見した。
「見つかりましたね」
 紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は和弓を引き絞りながらに唇を舐めた。「でも、関係ありません、ねっ」
 数射れば当たるなんて思っていません、ですから今回は射った矢を『サイコキネシス』で加速させたのですが。
「これも避けますか…それならっ!」
「!!!」
 通り過ぎたはずの矢が向きを変えて戻ってくる。ビクティムは一度はこれを右に避けたが、上昇の後に背後から迫り来た矢には反応できなかった。
「中りましたァー! 次ッ! すぐ次つぎッ行きますよッ!!」
 ノリノリで次射の矢を握る睡蓮を横目に、プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)紫月 唯斗(しづき・ゆいと)に言った。
「マスター、睡蓮様が妙にノッちゃってます。止めなくて良いのですか?」
「構いませんよ、それがティセラの助けになるのなら、むしろ歓迎するべきことでしょう」
「ティセラ?」
 七緒が目を剥いた。「ティセラが来ているのか?!」
 七緒が、そしてパッフェルもまた茂みの先に瞳を向けた。
 カジュアル服を着たシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)の後方に、ティセラの顔が見えた。
「あれがティセラ?」
 祠堂 朱音(しどう・あかね)は首を傾げた。いつものドレス姿ではなく野戦服を着ているだけで、だいぶ印象が違ってみえる。
 すぐ横をパッフェルが力無く歩み出した。朱音は慌てて彼女を止めた。
「ちょっと待って! あれがティセラとは限らないでしょ」
「……ティセラに間違いない。間違えるわけない」
 パッフェルは瞬きをすることすら忘れていた。「……どうしてティセラがここに……」
 朱音は自分の瞳を疑った。
 ティセラの事もそうだが、それだけじゃない。ティセラの隣には背の高いパッフェル(宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が立っていて、そしてその向かいには十二星華の一人、双子座のアルディミアク・ミトゥナが立っている。一体なにがどうなっていると言うのか。
「それにしても」ティセラエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)を舐めるように見つめて言った。
「本当にアルディミアクにそっくりですわね」
「よく、言われます」
 確信を持って見抜かれた。エシク本人に騙すつもりはなくても、アルディミアクを知る者は殆どが彼女と間違える。同じ十二星華のパッフェルでさえ、意識が朦朧としていたとはいえ以前に見間違えた事があるくらいだ。
 ティセラは自分の知る者を、自分の仲間を正確に判別できることを証明した事柄がもう一つ発生した。ティセラの眼前に、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)ロイ・グラード(ろい・ぐらーど)を連れてきたのだ。
「パッフェルを連れてきたぞ」
「パッフェル?」
 九条 ジェライザは身長まで完璧に化けたロイパッフェルだと思い、連れてきたのだった。
「そうだ、パッフェルだ。怪我をしていたんでな、治療すると言ったらノコノコとついてきた」
 九条 ジェライザは得意げに言った。「これでサバゲーは終わりだよな」
 ロイロイで黙っているから質が悪い。レイヤーにとってすれば本物と間違われる事こそが最高のステータスであり快楽を得る瞬間なのだから、責めるだけ喜ばせるだけなのだろうが。
「誰ですの? この者は」
「誰って…何をいまさら。十二星華の一人、パッフェル・シャウラだろう?」
「こんな、こんなの……」ティセラの背後で堪えていたセイニィは、とうとう我慢できずにビシッロイを指さして言った。
「こんなのパッフェルじゃないよっ!!」
「!!! 何ぃ!!!」
「!!! こんなのって……!!!」
 セイニィにも見抜かれた。男2人の驚愕の表情がここに並んだ。
 っと、朱音が見ていたのはそんな顔じゃない。セイニィの姿まであるではないか。パッフェルが言うにはアルディミアクはニセモノだが、セイニィは本物だという。もぅ、何が何だか分からない。
「本物であれ偽物であれ」
 シルフィーナ・ルクサーヌ(しぃるふぃーな・るくさーぬ)朱音の視線に合わせて言った。「あちら側に居るという事は、敵という事で良いのですよね」
 ティセラの一行は戦場の音を頼りに森を進んでいた所、偶然にも甲陣営のそばに出たというだけだ。しかし、乙陣営の殲滅とパッフェルの捕獲を狙うという目的は一致する。手を組まれれば、それだけで乙陣営にとっては大きな脅威となる。
「話がまとまる前に仕掛けましょう」
 シルフィーナが茂みから姿を見せると、甲陣営はすぐさま射撃してきた。
「行きます」
「朱音の守りは、ジェラール、お願いね」
「あっ、おい、香住! シルフィ!」
 シルフィーナに続いて須藤 香住(すどう・かすみ)まで飛び出していった。残されたジェラール・バリエ(じぇらーる・ばりえ)は兎に角に朱音に背を見せて立った。パートナーを守れとのご用命だ、押しつけられた感はあっても断る理由にはならない。
「まったく、なんだかんだいって、うちの女性陣はこうなるんだよな……」
 ジェラールの視線の先では早速、駆けるシルフィーナを狙った銃弾が向かい来ている所だった。
「……させない」
 香住がこれを『サイコキネシス』で防いだが、先程に続いての銃撃にシルフィーナは強く眉を寄せた。
「……今私を狙った人はどなたです?!」
「……シルフィ、あそこ」
 隠れているつもりだろうか、木の陰から体が半分出ている。手に持つマシンピストルまで見えている。
「いい度胸です。覚悟なさい!!」