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リアクション
4−1
その頃、和原 樹(なぎはら・いつき)とフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)、セーフェル・ラジエール(せーふぇる・らじえーる)も食事を受け取って落ち着いていた。
「ここまでは、さほど問題もなかったな」
ディテクトエビルを纏ったまま、フォルクスは言う。
「うん。まだ油断は出来ないけど。前、ライナスさんとこでバイトした時も野盗が出てきたからな。近くの遺跡からモンスターが出てくることが無いとも言えないし……」
「まあ、同行者の数は多いし、何かあっても対応は出来るだろう。戦闘準備もしてきているしな」
出会わずに済むのが一番だが。
そこで、セーフェルが話題を変えた。
「マスターは、どうしてこちらに来ることにしたのです? キマクではなく」
樹は「んー……」と考えるように視線を上げる。
「とりあえず、俺に何かできることがあるか、探しに行きたい。かな?」
「できること、ですか……」
「でも、モーナさんが聞きに行く話っていうのも気になるし。ファーシーさんの足のことも気になるし……あと、ライナスさんも気になるし!」
「……マスター、それは全部というのでは……」
「え、あ、えーと……そうかも」
「前の2つは分かるが、最後のは、彼の何が気になるんだ?」
モーナがライナスに何を聞きに行くか、それによってファーシーの脚に何か進展を齎すのか、それが気になるのは分かるが、ライナス自身の何が気になるのだろうか。樹はフォルクスに、少し照れたような顔を見せた。
「や、趣味とか研究に没頭する生活ってちょっと憧れるから……それを本職にできるかは別だけど」
「ふむ……」
フォルクスは思案するようにそう呟いた。樹は、元々は縁のある依頼だから乗っただけだろう。しかし、そういうところは相変わらずだ。まあ……
「自身にそれが扱えるかは別としても、様々な技術を目にすることには意義があるからな」
「機晶技術……古王国時代に盛んだった技術には、私も少し興味がありますね。私自身の本体を作ったのも昔の技術でしょうし……。魂の在り処についてなどは考えても仕方がないので、あまり気にしていませんが。記録媒体である私に仮に魂が無かったとしても、私はマスターがいて、幸せですから」
微笑むセーフェルに、樹は恥ずかしそうにお礼を言う。
「うん、ありがとう……」
そんなやりとりの中、フォルクスは不穏な空気を感じ取って眉を顰めた。
「何か、近付いてきてるな……」
「おい! 西から何かこっちに来てるで!」
「これは、結構居るな……。しかし、殺気を放ってるやつは人数の割に少ないような……」
飛空艇に乗った陣が皆に注意を促し、いつの間にか復活していた唯斗もワイバーンの上からその人数を確認する。バンダナやボロを纏った人影が40ほど。一見、野盗や盗賊団のように見えるが――
「半分くらいは、ゴーレムか?」
とにかく、手早く片付けを済ませて出発準備をする。
「彼らの為にも、接触しない方が無難です。急ぎましょう」
刀真がモーナを促して出発する。謎の集団を避けるように迂回しようとしたが、相手は進路を変えてこちらに向かってきた。どうやら、明確に自分達を狙っているらしい。
「……仕方ありませんね、とりあえず警告してみましょう……」
刀真は飛空艇から降りて、集団に歩み寄っていく。先頭を歩く、そう背も高くない男に話しかける。
「……何だ、1人でのこのこと……。捕虜にでもなりに来たのか?」
「いえ……。俺達はこの先に用事がありまして、通してくれませんか?」
「残念だが、俺達はお前達に用があるんだよなあ……。ってことで、通すわけにはいかねえ」
下卑た笑いを浮かべ、男は言う。だが、こいつからは妙な自信が漂っていた。身の程知らずの者が放つ安っぽい自信ではなく、自らの力に裏打ちされた自信。
しかし、少しばかり腕に覚えがあろうと関係無い。道を塞ぐのならやることは1つ。
「駄目ですか……」
刀真はバスタードソードに手を掛ける。
「……じゃあ死ね」
金剛力の力を使い、ソニックブレードで首筋を狙う。
「……誰が死ぬか」
だが、男もほぼ同時にソニックブレードを使っていた。獲物もよく見ると上質だ。刃こぼれ1つ無い。
音速の刃が交差し、そして、戦いは始まった。