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リアクション
魂の器・第1章 中 これまでのあらすじ。または原因考察
〜プロローグ〜
蒼空学園。ツァンダ&ヒラニプラ出発日、前日。
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は、翌日に行く依頼について考えた。ファーシーの脚を直す為、ヒラニプラの機晶技師モーナを大荒野に住むライナスという人物の元にまで送り届けるという依頼だ。月夜は、その内容に強い興味を惹かれて参加することにしたのだが――
「機晶技師ライナス……どんな人かな?」
それだけに、ライナスの事が気になる。月夜は携帯電話を取り出し、ユビキタスで蒼空学園のデータベースにアクセスした。特技の資料検索を使って、彼について調べていく。
もしかしたら、今回の技術や装置について何か分かるかもしれない。
「機晶姫の機晶石交換先駆者……。交換による後遺症を寸での所で防止……」
◇◇
「……この時、ファーシーさんはマスターでもあったルヴィさんと正式に結ばれました。ルヴィさんは亡くなっていますが、ファーシーさんは今でも彼の事をとても大切にしています」
2日前、テレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)とミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)にピノとの関係を散々疑われた風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は、彼女達にファーシーとの関係、これまでの経緯を説明していた。女性の護衛という事で、また妙な誤解をされないようにだ。ちなみに、先日の誤解はピノが子供に戻った事で解け、携帯も無事に返してもらって彼は自由の身となっている。
「それで今回、5000年前に友人であった方から連絡を受け、会いにいくという訳です」
「……なるほど、わかりました」
「いろいろあったんだね……つまり、ファーシーちゃんは友達なんだね?」
「そうです。僕は、ファーシーさんの足が1日でも早く治って欲しいと思っていますし、過去に時を共有していた昔馴染みはファーシーさんにとって只の友人以上に貴重な存在だと思います。だから、ファーシーさん達が再会を喜び合えるようにサポートしたいんですよ。また、今回の同行はモーナさんからの依頼による仕事でもあります」
「そういうことなら、私達は留守番していますね。頑張ってください」
「ファーシーちゃん、そのお友達に会えるといいね!」
テレサ達はすっかり安心して、平和的に優斗を送り出した。普通に室内でのんびりとしている2人に、諸葛亮著 『兵法二十四編』(しょかつりょうちょ・ひょうほうにじゅうよんへん)が話しかける。色々と優斗を困らせた為、彼女は自宅謹慎を言い渡されていた。テレサ達が部屋に留まっているので、外に出たらバレてしまうわけで。しかし、それでは退屈である。
「テレサちゃん、ミアちゃん。優ちゃんはファーシーちゃんが未亡人である事を知っているのに、ファーシーちゃんをナンパしてた事があるのよ」
「えっ?」
「本当!? リョーコお姉ちゃん!」
ソファでくつろいでいた2人が振り返る。反応が素早い。
「でも、優斗さんはファーシーさんは友達だって……」
「ウソじゃないわよ。だって隼人ちゃんも現場にいて、隼人ちゃんが止めたんだから。……ウソだと思うなら隼人ちゃんに確認してみたら?」
「「…………」」
2人は顔を見合わせ――テレサが携帯を手に取った。風祭 隼人(かざまつり・はやと)に掛けると、数コールで電話が繋がる。誰かからの連絡待ちでもしていたのだろうか。外に居るのか、電話の向こうはざわついている。
『ん? テレサ、どうした?』
「あ、あの……突然すみません、優斗さんがファーシーさんをナンパしてたって本当ですか?」
『へ? ナンパ……?』
はて、という気配が漂ってくる。やっぱりリョーコの勘違いだったか、とテレサが安心しかけた時、隼人は言った。
『あ、あの時か! あいつ、ファーシーだけじゃなくってルミーナさんにまで手を出そうとして……色目まで使って……』
「……ありがとうございます」
テレサは静かに電話を切ると、ミアとリョーコに報告した。体から立ち上ってくるオーラがコワい。話を聞くと、ミアも怒り出す。
「一体、何人の女の子に声かけてるわけっ?」
「嘘偽りじゃないようですね……ルミーナさんまでって……優斗さん……」
携帯を割れんばかりに握り締めてテレサは言った。
「……尾行しましょう!」
「うん! お友達も連れて行くよ!」
ちなみにこの度のお友達は、狼、強盗鳥、デビルゆるスター、スライム、わたげうさぎというメンバーである。ふむ、このうちの3つは可愛いかもしれない。
そして、2人が出て行った後のリョーコといえば。
「あら、これで自由になったわね」
部屋を出て、コッソリと彼女達を追いかける。ダブル尾行である。