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リアクション
第5章 力使われ 環七南/夜20時頃
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)の装備した無線機のランプが光った。
「こちら空京警察少年課・環七対策本部、八街修史(やちまた しゅうし)。
そろそろ集団暴走行為が始まる。
警察ならびに関係者各位は、暴走行為並びに暴走グループ同士の衝突事案取り締まりに尽力されたい。
ただし、先刻に自警団を自称する者達が暴走グループ同士の衝突現場に過剰介入した、と報告があった。
今夜は既存の暴走グループのみならず、市外から参入してきた暴走グループ、並びに近隣住民の自警協力者が色々騒ぎを起こす可能性がある。現場への介入時には十分注意されたい」
(ありそうな話ですね)
ロザリンドは携帯電話を操作して、今の知らせをメールの文面に起こし、最後に「そういう事だから、やり過ぎないように」と付け加えた上で、事前に聞いておいた自警団の連絡先に一斉送信した。
(今夜の環七はいつにも増して危険度が高そうですね)
“青春(エネルギー)“を持て余しているのは暴走族だけではないだろう。パラミタ大陸で「契約者」としての日々の送る人々──彼らが積み上げた力を持て余すのは、さして珍しい事でもない。
持て余された力は、それ自体が“誘惑“だ。行き場を求めて、「出番はまだかい?」と使い手に囁きかけるのだ。
その“誘惑“に流された時、「契約者」は暴走する。
(“暴走族“というのは、道路を我が物顔で走る者達を指すのではありませんね)
(自分の力に流されて、自分の力に使われてる人の事をも言うのでしょう)
下界を見下ろした。
既に日は没し、立ち並ぶビル群が、窓や看板から煌々と灯をともしている。
その谷間の“環七“に、固まって走るオートバイの群れ。数は6台。ヘルメットも被らず、着ている服の長い裾は後ろになびき、「安全」を全く考慮していないデコレーションが見ていて実に危なっかしい。
急降下。
「そこの暴走族の皆さん! こちらは空京警察の……」
(えーと、今の私は警察のお手伝いですから……)
「こちらは空京警察のバイトをしている者です! 大人しく交通ルールを守って帰ってください。さもなくば捕まえて警察に引き渡しますよ!」
こちらの呼びかけは聞こえたようだ。その証拠に、さらにスピードが上がったのが見て取れる。法定速度はもちろん超過。もしも事故に遭えば、「契約者」でもただでは済まないし、「一般人」なら命を落とすのは間違いない。
ロザリンドは応援を要請しつつ、「サイコキネシス」で暴走族らのバイクを一台ずつ引き止め路肩に寄せさせた。全員停車させた後は、空京警察の本隊が来るまで「警告」を使って延々と説教をした。
「どうして分からないのですか!?
ルールは人を縛るためにあるんじゃありません! 人を守るためにあるというのに……!」
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