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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

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「第五試合、ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)選手対、ルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)選手です」
「くふふ……面白そうなゲームをしてるね。僕も魔術師なんだから、当然混ぜてもらうよ。僕と遊ぼうよ〜」(V)
 いつの間に橋を渡ったのか、光学迷彩を解くと共に闇のようにまとわりついていた友達のゴーストを解き放ってニコ・オールドワンドが武舞台の上に姿を現した。
 それを見て、銀のチェインメイルに身をつつみ、イルミンスールの杖を持った、ルルール・ルルルルルがニヤリと笑う。
「なんだあいつ、思いっきり魔法防御に特化した鎧なんか着やがって」
 応援とはいかないまでも、ルルール・ルルルルルの戦いを見守ろうと来ていた夢野 久(ゆめの・ひさし)が少し呆れた。あれでは、マジックスライムに脱がせてくださいと言っているようなものだ。
「そういや、あいつ出場前に、『負けたら皆の前で全裸!? わぁい……じゃなかった、イヤーン困っちゃうー』なんて言ってたよな。そりゃもうすげえ嬉しそうに。絶対、本音じゃ『望むところよ! むしろ御褒美、ごっつぁんです!』って思ってるよな、あれは」
 なんと分かりやすいと、夢野久は軽く頭をかかえた。
 まあ、それでも勝ち進んで優勝してくれれば問題ないわけだが、猛者たちが集まっているこの大会では、そうそう簡単に優勝はできないだろう。すでに名のある者たちがあっけなくスライムの餌食になっている。
「とりあえず、落ちそうになったら素早く回収できるようにこいつらを待機させておくか」
 いつでも割って入れるようにと、二匹の剛雁をそばにおいて夢野久は戦いを見守った。
「ふふふ、では僕のブリザードで葬り去って……うわああ〜!?」(V)
 ニコ・オールドワンドが、ブリザードの詠唱に入ろうとしたその瞬間だった。
「規定違反は失格ですぅ!」
 エリザベート・ワルプルギスの声と共に、ニコ・オールドワンドの足許の柱が勢いよく下に沈んだ。負けたときのために腰にくくりつけていた空飛ぶ箒を使うこともなくニコ・オールドワンドが一瞬にしてマジックスライムに飲み込まれる。
「あらら?」
 やる気満々だったルルール・ルルルルルがちょっとあっけにとられる。
「おおっと、残念ですが、ニコ・オールドワンド選手、禁止されている範囲魔法を使おうとしてしまいました。残念ながら大会規定により失格です。男性選手初めてのすっぽんぽんとなります。あっ、今、救護室にぺっされました。これにより、勝者、ルルール・ルルルルル選手です」
 
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「第六試合、童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)選手対、マリハ・レイスター(まりは・れいすたー)選手です」
「イルミンスールの生徒として、最強の魔法使いの称号は拙者がいただくでござるよ」
 武舞台の上で、童話スノーマンが、野望に燃えていた。だが、端から見ると、台の上に飾られた雪だるまの雪像にしか見えない。
「魔法使いとしては、スノーマンの方が優秀ですから、頑張ってくれますよ」
 あえて参加を見送ったクロセル・ラインツァートが、期待に満ちた目で童話スノーマンを見つめた。
「雪だるまが相手だなんて、楽勝だよね」
 コタツに乗って登場したマリハ・レイスターが、闇の輝石を握りしめて言った。
「甘く見てると痛い目に遭うでござるよ」
 童話スノーマンが、両手を広げた。右に火球、左に雪玉が現れる。
「熱しやすく冷めやすい現代っ子には、これが効果的な魔法でござる!」
 一気に炎と雪を童話スノーマンが放った。いったん下に沈んだ火球と雪玉が、下方からマリハ・レイスターを襲ったが、バリアで弾き返された。
「闇よ!」
 闇の輝石を掲げたマリハ・レイスターが叫ぶ。
 闇の輝石の周囲に発生した闇の塊が、まっすぐ正面から童話スノーマンをつつみ込んだ。
「くっ、くらっ……。」
 思わずよろけた童話スノーマンが武舞台から落下する。
「拙者は終わらぬ、次回大会できっと甦……」
 最後まで言えずに、童話スノーマンがぽっちゃんとスライムの海に落ちる。結果的にはすっぽんぽんになったのだが、もともと雪だるまである。見た目何も変わらないまま救護室へと運び去られていった。
「勝者、マリハ・レイスター選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第七試合、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)選手対、篁雪乃(たかむら・ゆきの)選手です」
「さあ、魔道士として正々堂々この大会を戦い抜きますか」
 悠々とした足取りで、本郷涼介が武舞台にむかった。
「門にして鍵、一にして全、全にして一たるモノの力を以て我が魔力を開放せん……」
 禁じられた言葉で魔力を高める。
「涼介の奴、気合い入ってるな」
 小冊子十二星華プロファイルを休ませて戻ってきた椎堂紗月がつぶやいた。
「見てなさいよ、隼斗! あたしが凄いってことを分からせてやるんだから!」
 対する篁雪乃の方も、銀髪のポニーテールをプルンと一振りしてやる気満々だ。ちょっと小柄で童顔なため、見た目よりもずっと子供に見えてしまう。そのため、弟である篁隼斗からは、年上であるにもかかわらずいつも子供扱いだ。この大会で実力を見せて、しっかり姉だと、彼に認めさせるつもりらしい。
「本当は風の魔法を使いたいけど……ええいっ! 痺れちゃえ!」
 篁雪乃の放った雷術の電光が、空中で何度も折れ曲がりながら本郷涼介の左側にぶちあたった。だが、バリアのせいでスパークと共に消え去る。
「万物の根源たるマナよ、凍れる炎を以て我が敵を討て!」
 対する本郷涼介が、身体の正中に掲げた杖に魔力を集める。
「フロストフレイム!!」
 スペルと共に、本郷涼介が杖の先を篁雪乃にむけた。杖先の左右から、炎と冷気が大きく弧を描きながらのびる。敵の背後に回り込んだ異なるエネルギーが、同時に敵に襲いかかった。
「はっずれー! そっちじゃないもーん!」
 勝ち誇るような篁雪乃の声と共に、本郷涼介の凍てつく炎がバリアに弾かれて消えた。
「ならば……」
 本郷涼介が、今度は杖を左から右へ振って魔法を放った後、杖を振り戻して篁雪乃の左側へと炎と冷気の流れをぶつけた。だが、これもまた弾かれる。
「こっちも、正面からいっくよー! ……と見せかけて、こっち!」
 あまりフェイントにもならない声をあげて、篁雪乃が正面から放った雷光を直前でかくんと上に曲げて直上から本郷涼介を狙った。激しい光が本郷涼介の身体を照らしたが、バリアのおかげで彼は無傷だ。
「なかなかしぶといな。――聖霊よ! その力、我が魔力と化せ!」
「そっちこそお」
 精霊の力で魔力を補給する本郷涼介に、篁雪乃が言った。
「これは、あたったら痛いかもよー? 雷術、どーんっ!」
 まだ魔力に余裕のある篁雪乃は、構わずそのまま攻撃を続けた。今度は真正面から雷光を浴びせる。本郷涼介も、真正面からそれに応えてみせた。互いの正面で弾かれた魔法が、綺麗に広がって周囲を照らす。
「なんだ、いい勝負じゃないか」
 互いに一歩も引かない二人を見て、椎堂紗月がつぶやく。
「ならば、直上から」
「きっと、後ろががら空きなんだもん!」
 互いに相手のウイークポイントを探りながら二人が魔法を放った。だが、これまでもが防がれてしまう。
「もう後がないか。ならば、全力でいかせてもらう!」
 再び魔力を補充した本郷涼介が、禁じられた言葉で魔力を練りあげた。
「いいかげん、すぱーっと勝たないと、また隼斗に言われちゃう」
 負けるわけにはいかないと、篁雪乃も気合いを込めて雷術を放った。
 それぞれの魔法が、時計回りに回り込んで相手に命中する。
 炎と冷気がぶつかり合って発生した水蒸気の爆発と共に、篁雪乃の身体が勢いよく弾き飛ばされた。
「何よこれー! こ、こんなの認めないんだからー……」
 悪態をつきながらも、篁雪乃がすっぽんぽんになってスライムの海に沈んでいく。この場に身内がいなかったのは、不幸中の幸いだろうか。
 対する本郷涼介も、耐性魔法のおかげで怪我はないものの、感電によって身体の自由を奪われて武舞台から倒れ落ちた。
「ちっ、ここまでか……」(V)
 大の字になってあおむけになってスライムの上に倒れて気を失う。こちらの方は、ちゃんとイルミンスール魔法学校指定水着を着ていたので、一応の醜態を晒すことはなかった。小人さんの頑張りである。
「両者相討ちです!」