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    ★    ★    ★
 
「エントリーナンバー27番、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)さんです」
「ふっふーん! ついに、ボクのカッコカワイさを披露するときがきたみたいだね!」
 そう声高に言うなり、シュンとロートラウト・エッカートがホバーリング移動しながらステージに現れた。
 オーソドックスな機晶姫らしく、顔が美少女、顔が美少女、顔が美少女……、まだ繰り返すんですか? 顔が美少女でボディはメカメカである。
 コバルトブルーの装甲には、張り出した肩の装甲と腰の追加装甲と胸部の装甲部分にエメラルド色の透明装甲がつけられている。耳はお約束のアンテナになっていた。背部にはプレパラートタンクのような物がついているのだが、いったい何が詰まっているのだろうか。
「このメタリックなボディ! 見た目に違わぬ内部機構! そして、元気いっぱいなカワイイ顔とポーズ! 無敵よ、無敵!」
 ロートラウト・エッカートが、ぶつぶつとつぶやきつつ、スーと水平移動しながら花道を往復した。
「さあ、ボクの最強を見せてあげるんだもんね」
 言うなり、ロートラウト・エッカートがひょいひょいっと客席にむかって手招きした。
 だが、何も起きない。
「こら、エヴァルト! 早くするんだもん!!」
「えっ、俺?」
 いきなり名指しされて、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が戸惑った。
「ええと、何をすれば……」
 のそのそと、エヴァルト・マルトリッツがステージによじ登っていく。そこへ、一気にロートラウト・エッカートが近づいた。
「もちろん組み手だよ!」
 問答無用で、ロートラウト・エッカートが龍の波動でエヴァルト・マルトリッツを下から殴りあげた。腕の装甲が後ろへとスライドし、スリットから余剰の熱が放出されて陽炎が立った。
「はうあ!」
 不意打ちを食らって宙高く舞ったエヴァルト・マルトリッツが、やや時間をおいて落ちてくる。
「とうっ!!」
「ぶうるわぁ!」
 ロートラウト・エッカートが、再びエヴァルト・マルトリッツを殴りあげた。脚部装甲がスライドし、ステージに罅が入った。
「止め!!」
 ロートラウト・エッカートの肩部装甲が開いて張り出し、背部タンクが両方とも傘のように開いた。集中するエネルギーに、力場で歪んだ光が同心円状にロートラウト・エッカートの背後に広がった。そこへ、エヴァルト・マルトリッツが落ちてくる。
 ゴーン!
 再び三度エヴァルト・マルトリッツが打ち据えられると思った瞬間、ロートラウト・エッカートが奈落に落ちた。その穴へ、エヴァルト・マルトリッツも続いて落ちていく。
「ステージを壊しちゃいけないんです!」
 シャーリー・アーミテージが、「×」のプラカードを掲げていた。
「ええと、大変なことになったみたいですが、いかがでしたでしょうか、奏審査員」
「メカにはメカの美しさが、メカ少女にはメカ少女の美しさがあると思います。美はすべてに平等なのです」
「ええと、分かったような分からないような……。ありがとうございました」
 力説する奏シキに、シャレード・ムーンはそう言ってまとめた。
 
    ★    ★    ★
 
「エントリーナンバー28番? 29番? ええと、多分28番、ラストの参加者です。東峰院香奈さんどうぞ」
 名前を呼ばれて、東峰院香奈が現れた。
 白いワンピースの上に羽織った白いケープを軽く翻しながら花道を進んで行く。胸元の赤い飾りリボンがひときわ鮮やかだ。頭につけたカチューシャの左右には、姫百合の髪飾りがついている。
 端まで辿り着いた東峰院香奈が、桜葉忍の姿を見つけて、ニッコリと笑った。
 心配して見ていた桜葉忍が、思わずその笑顔に見とれてしまう。そのまま、桜葉忍は、クルリと反転した東峰院香奈の後ろ姿を見送った。
 ステージに戻った東峰院香奈は、うなじの所にスッと手を差し入れると、長い茶色の髪の間から光条兵器を取り出した。ピンク色の弓で、その名も桜華という。
「どうぞ」
 東峰院香奈が言うと、外岡天が投げた氷の塊をフィリッパ・アヴェーヌがバットで上空へと打ちあげた。それを、東峰院香奈が桜華で撃ち抜く。氷だけに設定した光条が、氷塊を消し去り、中に入っていた桜の花弁を空中に散らした。
 舞い落ちてくる花吹雪の中で、東峰院香奈がニッコリと笑いながらお辞儀をした。
「では、アルマ審査員、最後のコメントをお願いします」
「綺麗だったですよ。でも、もうちょっと、ど派手な演出がほしかったかなあ」
 最後まで色物を期待していたアルマ・オルソンが、ちょっと物足りなそうに言った。