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リアクション
デザート デリシャス デンジャラス
可愛くて美味しい苺。それをお菓子にするなんて最高だ。
そう飛鳥 桜(あすか・さくら)は主張したけれど、桜は菓子作りが得意というわけではない。結果、パートナーのアルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)とローデリヒ・エステルワイス(ろーでりひ・えすてるわいす)も引っ張られて来たのだった。
桜がするのは手伝いで、菓子を作る主はアルフとローデリヒだ。
「野郎2人で菓子作りって……」
苦笑するアルフに、まあまあとローデリヒがエプロンをしめながら言う。
「お菓子作りは趣味ですし、私は構いませんよ」
ローデリヒが作るのは苺を丸ごと使った焼きタルト。
苺をきれいに洗ってヘタを取ってゆく……と。横からひょいと手が伸びてきて、洗ったばかりの苺を摘んだ。
「あー、やっぱ美味しい〜」
苺を頬張った桜が幸せいっぱいの顔で言う。
「あ、こら桜! つまみ食いはおやめなさい、お馬鹿さん!」
「つまみ食い? 嫌だなぁ〜、これは味見なんだぞ」
桜は悪びれずに笑った。
「本当にもう……」
桜の手が届かない位置へと苺を移動させてから、ローデリヒはタルト生地を作っていった。
生地が出来たら空焼きして、アーモンドクリームを底に敷く。そこに苺を埋め込むようにたくさん入れてゆく。
そんなローデリヒの菓子作りは危なげなかった……ある1点を除けば。
「ちょ、ローデ兄? ローデー兄ー!」
「はい? どうかしましたか?」
「さっきから、どっかんどっかん爆発音がするんだけど」
ローデリヒが菓子を作るたび、何故か響く謎の爆発音。
「爆発? してませんよ」
「してる、してる、絶対してるってー!」
「何をおっしゃっているんですか、お馬鹿さん!」
桜は抗議してみたが、ローデリヒはそれを笑顔で受け流し、タルトを作り続ける。
何だか腑に落ちないままに桜はアルフの所に、苺のブッセ作りの手伝いをしに戻る。
砂糖を入れて泡立てたメレンゲに、卵黄と砂糖をあわせて泡立てたもの、更に薄力粉を入れてさっくりと混ぜる。
出来た生地は、少し間隔をあけて天板にハート形に絞り出してふっくらふんわりと焼き上げる。
その間にアルフはクリームに苺のピューレを混ぜて、ブッセに挟む苺クリームを作る。その横からひょいと出てきた桜が苺クリームをすくい取った。
「うまそー! 味見〜♪」
「あ、てめ、またつまみ食いを!」
「だから味見だって。うわ、美味しいよこれ! アルフってよくキッチン散らかすけど、料理上手だよなぁ、すごいや」
桜の手放しの褒めように、怒りかけたアルフの表情もつい緩む。
「美味い? そ、そう、か……」
「アルフ、ちょっと嬉しそう?」
「あ? うっせえ見んなボケ! ……って、頬にまで苺クリームついてるぞ」
「へ、どこ?」
桜は慌てて頬をこすった。
「そっちじゃねーよ。こっちだ」
アルフは桜の頬についたクリームを指で取り、それを口に持っていった。
「ん、甘い、な」
「ちょ、今の反則だろう! 不意打ちだよ」
「そ、そろそろ焼ける頃だな」
そう言う桜にさっと背を向けて、アルフはオーブンへと向かった。恥ずかしすぎて桜の顔をまともに見ていられない。
「おや、アルフのも焼き上がりですか」
ローデリヒがアルフを見てにこりと笑い、オーブンを開けた――途端。
ぼぼぼぼーん!
「……少し吃驚しましたね」
ローデリヒは軽く目を見開くと、オーブンからタルトを取り出した。
「ああ綺麗に焼けていますね。アルフのもよく膨らんでいますよ」
あとはタルトがさめたら粉砂糖を振り、苺クリームで作った薔薇の飾りを載せれば完成だ。
「……ローデリヒ」
「はい? どうかしましたか?」
何事もなかったかのように、ローデリヒが答える。
「……何でオーブンが爆発するんだ。っつーか、何で俺『だけ』こんがり黒こげになるんだ!」
タルトもブッセも、ローデリヒも無傷なのにとアルフは理不尽だ理不尽だと文句を言い続ける。
「貴方だけ爆発? 知りませんよ、そんなの」
何を言っているのかと言わんばかりの顔で、ローデリヒは焼き上がったタルトを持って行ってしまった。
真っ黒になったアルフを面白がるように眺めていた桜は、ふと天井を振り仰ぐ。
「……あれ、今何か聞こえた? リア充なんとかって…………気のせいだよな」
空耳空耳、と桜は気にしないことにして、アルフに顔を洗って来いとタオルを投げてやった。
調理場に入った途端、イシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)は顔をしかめた。
「うぁ……甘ったるい匂い……」
苺やクリーム、バニラの香り。調理中に漂う匂いは、実物を前にした時とは比べものにならないほど強い。
辛いものも苦手だけれど甘ったるいものもあまり好きじゃないイシュタンにとっては、圧倒される甘さだ。
無意識に鼻の辺りに手をやるイシュタンを見て、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が笑う。
「甘いって言っても、今回は採れたての苺で作るスイーツだからね。甘いだけにはならないと思うよ」
「そうなの? ……でもやっぱり甘いんだよね……きっと」
ミルディアの機嫌を損ねたくはないから、後半は聞こえないようにイシュタンは小声で呟いた。
「何か言った?」
「ううん、何も」
イシュタンが首を振ると、ミルディアは気のせいかなぁとまた自分の前の案件に戻る。
「甘い苺を使ったスイーツかぁ……うーん、何を作ろうかな」
試しに食べてみた苺は甘くジューシーだ。
「ホントはスイーツに使う苺はすっぱいほうがいいんだけど……」
この苺をどうすれば生かせるかと悩みに悩んだ後、ミルディアはパイバケットを作ることに決めた。
何層にも生地を折り返して作ったパイ生地を、小型のハート形にして焼く。そのパイを土台にして、苺の薄切りを入れて、シロップに火を入れずに作った苺のピューレをたっぷり混ぜたものをかけて冷やす。その状態でフェスタ会場に持っていっておいて、後は注文が入ったら生クリームをかけて提供してもらえばいい。
「ってことであたしはパイを作るから、イシュタンはシロップと苺のピューレをよろしくっ」
「はいはい」
返事はあまり気乗りしていないけれど、普段からミルディアに鍛えられているからイシュタンのお菓子作りも手慣れたものだ。
「シロップで苺を煮ちゃったらいいんじゃない?」
鍋でシロップを煮ながらイシュタンはミルディアに聞いた。
「いつもならそうしちゃうんだけど、本当にいい苺なら火を入れずに香りを生かした方が良いんじゃないかと思うんだよ」
「香り……」
逆に、この甘ったるい香りををなんとかして欲しいと思いつつ、イシュタンは甘い空気のたちこめる中、鍋を無闇にかき回した。
「わ、どこもかも甘い匂いがするね」
スイーツは嫌いではない東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)にとっては、たちこめる香りも全く苦ではない。自分もみんなに負けないくらい美味しいスイーツを作ろうと、持ってきたレシピ本をさっそく調理台の上に広げた。
「何を作るつもりですかね?」
奈月 真尋(なつき・まひろ)に聞かれ、秋日子は目的のページを開いて示す。
「この苺のムースにしようかと思うんだ。簡単そうなレシピだから、これなら私でも作れそう……かな」
語尾がつい小さくなるのは、自分があまり料理は得意でないのを知っている為だ。いつもレシピ通りにがんばって料理を作るのだけれど、適量、というのがさっぱり分からないし、手間取っているうちにどんどん状態が悪くなってしまうしで、なかなか思い通りの出来映えになってくれない。
売り物にするのだから、美味しくないと困るだろうと弱気になっている秋日子に比して真尋は自信満々だ。
「苺のムースたいね? そったらスイーツくらい、ウチん手にかかればあっちゅう間に作れますえ!」
こんなものは不要だとばかりに真尋は秋日子の見ているレシピを調理台の隅に押しやった。
「ちょっと真尋ちゃん……ほんとに大丈夫?」
「見くびらんといておくれやす」
真尋はさっさと苺を洗うと、大胆に潰し始めた。
手順は分かっている様子なのを見て、秋日子も自分の分のムースに取りかかる。
「えっと……材料、ムース10個分で苺1パック……1パック?」
菓子を作る為の苺は、品種別に山盛りに調理台に置かれていて、そこから必要なだけ自由に取って良いことになっている。もちろん……パックになど入っているはずもない。
「パックって言っても、大きさっていろいろあるよね」
「大丈夫か? 秋日子サンたちって料理苦手だって聞いたけど」
うーんと首を傾げる秋日子に、遊馬 シズ(あすま・しず)が声をかける。
「苦手っていうか、私が作るとあんまり美味しくならないんだよね」
食べられないほどじゃないんだけど、と言いながら秋日子は苺を取り分ける。
「何かを作ってるといつも『材料入れ過ぎ』って注意されちゃうから、ちょっと少なめにしておいた方がいいのかな」
「それが少なめか?」
大きなボール山盛りに苺を取る秋日子にシズが目をむいた。
「あ、やっぱり少なすぎるかな。じゃあ……」
「待て待て待て、それ以上取るな。今でも十分多すぎだから」
盛り足そうとする秋日子をシズは慌てて止めた。
「そうなの? ほんっとレシピに書いてある量って分かりにくいんだよね。1パックとかじゃなくて、何kgって書いてくれればいいのに」
「いや、まずその単位からして間違ってるだろ」
うまい苺スイーツが食べられると聞いて付いてきたのだが、どうも雲行きが怪しい。早くもシズは甘いものにつられてここにやってきたことを後悔し始めていた……。
「どこもかしこも賑やかですね」
順調に作り進めている者たちがいると思えば、あちらでは怪しい爆発音が響き、すぐ横で交わされている会話ははなはだ不穏で。
けれどそれらは気にせず、風森 望(かぜもり・のぞみ)はマイペースに菓子を作っていた。
去年は苺大福を作ったから今年は洋風のものにしようと考えて、望はベイクドチーズタルトに苺ジャムをたっぷりとかけて提供することにした。
苺の原形を多く残すプレザーブのジャムにしたいから、木じゃくしで鍋底を撫でるように優しく混ぜる。アク取りは面倒だけれど、これをさぼるとあとで白い膜となって固まってしまうので、丹念に取り除く。
時間をかけていると苺の形が崩れてしまうから火力はやや強め。吹きこぼれぬよう焦がさぬように気を付けて見ていなければならない。
手際よくジャムを煮あげると、望はもう1つ用意してあった鍋をコンロにかけた。こちらにも苺とグラニュー糖が入っている。
「またジャムを作るんですの?」
売り子の制服を着たノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)が鍋の中身をのぞき込んで尋ねた。
「店内では温めたものを出して、持ち帰り用には冷やして食べる用のものを提供しようと思うんです」
食べる際の温度の違いで、2種類のジャムを作っているのだと望は説明した。
「同じジャムを温めるだけではいけませんの?」
「常温で食べることを前提としたジャムを温めると、甘さがくどくなりますから。こちら側は砂糖を減らしてあるんですよ。その分ジャムとしては保存が短くなりますから、店内だけでの使用となりますね」
「甘みの違い……一体どう違うのか、売り子たるわたくしには確かめる必要がありそうですわね」
漂う苺の甘い香りに負けて、ノートは煮ている途中のジャムを一掬い取ろうとした。が。
「熱っ……!」
望がぴっと振った木じゃくしから跳ねたジャムの雫が付き、ノートは慌てて頬を押さえた。
「何をするのです!」
「あらすみませんね。うっかり飛ばしてしまいました。このように、煮ているジャムはとても熱いですから、つまみ食いは遠慮して下さいね」
ほほ、と望は楽しそうに笑う。
「つまみ食い? いいえ、コレはれっきとした試食、もとい仕事ですわ!」
ノートは憤然と答えたが、さすがにふつふつ煮えているジャムの熱さにはこりた。ジャムにかかりきりの望から離れると、そっとすぐ横の秋日子たちの背後へと移動する。
「ほれみんしゃい。ちゃんと出来とるけんね信用しんさい」
真尋が自信満々で冷蔵庫から苺のムースを出してきた。
「なんだかどろどろしてるみたいだけど……」
レシピ無視で作った所為か、ムースの固まりが悪い。
「何をおっしゃいますのん。ムースの命は柔らかさなんどすえ」
言い張る真尋の脇からそっと手を出して、ノートは出来上がったばかりのムースを1つかすめ取った。
(作っている人の邪魔をしないようにこっそりと仕事に励むわたくしの配慮、さすがと言うべきですわね)
にんまりと笑って、真尋のムースを口に……ぐふっ。
「何ですのこの酸っぱさは……!」
つんと口の中を刺す酸味。ところどころ分離した生クリームがねちょりと口の中に貼り付いてきてノートは口を押さえた。
「さわやかな甘さのムースにしてぇですから、お酢ば入れました。かき氷に酢醤油ばかけた『酢だまり氷』がうめぇのと同じ理屈ですばい」
「何が美味しいものですか! こ、こんなものをわたくしに食べさせるなんて許せませんわ。口直しにそちらのをお渡しなさい」
「食べさせたわけじゃないと思うけど……これでいいなら」
ノートにびしっと手を出され、秋日子は自分のムースを渡した。
見た目はどこにでもある何の変哲もないムースだ。
「こちらは美味し……いえ、そうでもないような……あまり美味しくはありませんわね」
「何かヘン?」
「いえ、そういう訳ではありませんのよ、ただ……」
危険な味がするわけではない。どこがおかしいとも言えないけれど、決しておいしくはない。食べるとううんと首を傾げてしまう料理、それが秋日子の『うまずい料理』だ。
「って、苺のムースなんて混ぜるだけの菓子なんだから失敗しようがないだろうに、あんたら揃いも揃って何作ってるんだよ」
2人ともが売り物に出来ないムースしか作れなかったと知り、遂にシズが切れた。
「これはこれでええんどす」
「ちゃんとレシピ通りに作ったんだけど、何がいけなかったんだろう」
真尋は開き直り、秋日子は悩んでいる。この2人には任せておけないと、シズは秋日子が確認していたレシピを取り上げた。
「俺が見本作るから黙って見てろ!」
シズは材料を計量し、書いてある通りの手順で作ってゆく。料理が得意というわけではないけれど、これくらいならレシピ通りに作っていけば何とかなる。少なくとも真尋や秋日子の作ったムースを食べるよりもずっとマシだろう。
「何だか悔しかとですね」
明らかに自分よりも美味しそうなムースを作ってゆくシズに、真尋は面白くなさそうな顔を向ける。
「遊馬くんが料理まで作れるなんて……意外だな」
秋日子は真尋と並んで、シズがムースを作ってゆくのをまじまじと見守った。
そうして2人並んでいる様子に、通りかかったシーラ・カンス(しーら・かんす)がうっとりと見とれる。
「まあ仲良く並んでスイーツを待っているだなんて……」
肩が触れそうな距離、真剣に注がれるまなざし、何か2人で話している様子。
(そう、そうなのですわね。ああ、でもいけませんわ、それは禁断の……)
シーラの脳内変換によって、真尋と秋日子の姿は清らかに咲いた百合に囲まれる。
「シーラさん? 俺たちの調理台はこっちですよ」
視点の定まらないシーラに気づいて志位 大地(しい・だいち)は呼びかけた。
「ああ、そうでしたわね〜」
ふわふわと足を運び始めたシーラは、けれどまたすぐに立ち止まってしまう。
そこではミルディアが、完成したパイバケットに試しに生クリームを絞ってみているところだった。
「向こうではこうやって出すわけだけど、ウェイトレスさんに好きな字とか絵とかもらって、遊びを入れてみると面白いかも」
イシュタンに説明しながらパイの上にハートを描いているミルディアに、シーラの脳裏の暴走はまた進む。
(女の子が2人でハート……ああ、ロマンスの香りがしますわ〜)
そんな妄想を重ねられているとも知らず、ミルディアは出来上がったパイバケットを眺めた。
「クリームを絞っちゃったら会場には持って行けないし、これちょっとつまみ食いしてもいいかなぁ」
「でしたらわたくしにお任せなのですわ!」
さっと横からノートは手を伸ばし、パイバケットをさらった。
「まあこれは美味ですわね」
「あああ、食べられた〜!」
ミルディアの叫びに構わず、ノートは満足そうに望のところに戻った。望はジャムを作り終え、ベイクドチーズタルトを会場に持っていけるように並べているところ。
パートナーとしてはやはりこれも味見する義務があるとばかりに、ノートはタルトをさっとさらって食べ。
「! ……☆◆××★!!」
口を押さえて悶絶した。焼ける、焼ける、喉が胃が、身体の内側で熱い痛みが爆発する。
「どこに行ってたんですか、お嬢様。ああ、そちらにあるタルトはダミーの激辛タルトですから触らないで下さいよ」
泡を吹いているノートに望はにこりと笑いかけた。
(な、なんてサディスティックな愛ですの〜。いけませんわ……そんなことまで……)
「ああ、いけませんわ〜!」
遂にシーラの妄想は限界点を突破した。そして何を思ったのか、急に菓子作りを始める。
「……始まりましたね」
大地はこっそりと呟いた。シーラは同性同士が仲良くしている……というか、仲良くしているのだという自分の中の妄想がある地点を突破すると、自浄作用として神業のごとき『やお菓子』を作り出すのだ。
「ああ、いけませんわ、いけませんわ〜」
譫言を呟きながら菓子を作るシーラに思いっきり引きながら、大地は自分の手元に集中した。
パラミタに来る前は菓子を作ることなどほとんどなかった大地だけれど、料理が壊滅的な恋人をフォローする為に弁償しているうちに、料理の腕はぐんぐん上がった。
今日大地が作るのは苺練乳大福。
白あんに練乳を入れてよく煮詰めた練乳あんで、苺を1つずつくるんでゆく。頭の部分の色が透けた方が可愛いから、そこだけを残して全部くるみ終えると、今度はそれを餅生地で包んでゆく。
美味しく、そして形良く。
餅生地できれいにあんを包み込むのは案外難しいけれど、1つ1つに心をこめて作ってゆく。
恋人が食べて喜んでくれるような、それを使って誰かをいぢめて遊べるような、そしてもちろんスイーツフェスタに来るお客さんが喜んでもらえるような、そんな菓子になるように。
大地が苺練乳大福を作り終える頃、シーラもはっと我に返った。
その前には苺のジャムゼリーをふっくらとしたパンケーキにはさみ、その上にロマノフクリームをたっぷりと絞り出した上に芸術的に苺が飾られた、苺のロマノフパンケーキが出来上がっていた。美しく飾られた苺がまるで、パンケーキに咲いた花のように見える。
「途中経過はともかく……お菓子は見事ですね」
「まあ、お恥ずかしいですわ〜」
すっかり正気を取り戻したシーラは、自らの作品を前に恥じらうのだった。
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