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イルミンスールの割りと普通な1日

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イルミンスールの割りと普通な1日

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●見せ付けてやる!

「てめぇ、俺とキャラ被っててむかつくんだよ!!」
 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)アッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)を指差して言った。
 それはとても熱意のこもった言い方で、アッシュをにらみ付けた。
 アッシュは何がどうなっているのか分からないと言った様子で呆然としている。
「はいはい、行きますよ……」
 ヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)が呆れる。ウィルネストの襟元を引っつかみ、迷宮へと引っ張っていく。
「こら、ヨヤ放せ! 俺はあいつにまだ言いたいことが! ふぎゃっ」
 なすがまま引っ張られていたウィルネストだが、急に手を離され尻餅をついた。
「……行、き、ま、す、よ?」
「は、はい……ヨヤさん」
 ぎろりと睨み付けられ、ウィルネストはおとなしく従った。
「先輩の貫禄見せ付けてやるかんな!」
「懲りないやつよのう……。まあ、逃げ回るウィルネストの姿が見られると思うと楽しみだな」
 エルトダウン・シャーズ(えるとだうん・しゃーず)は、ふよふよと宙に浮かびウィルネストたちの後をついていく。
 そして、迷宮内に待ち構えていたのはストーンゴーレムだ。
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)はストーンゴーレムを目にし、久しぶりに昔の仲間と一緒に戦えることに心から喜んだ。
「いくぜぇ!」
 ウィルネストは出会い頭に、アシッドミストでストーンゴーレムを牽制。
 そして、ようやくウィルネストたちに気づいたストーンゴーレムは、緩慢な動作ながらも、地響きを立て向かってくる。
「試しにやってみましょうか」
 風森望(かぜもり・のぞみ)が、ストーンゴーレムの足元にブリザードをまいた。
「ストーンゴーレムさん……物凄く固そうだよ〜……」
 ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)は、望の動きを見て、同じように足元にブリザード。
 しかしストーンゴーレムは、まるで雪原を踏み歩くかのように地面にまかれたブリザードの上を歩く。
「踏み抜いちゃった!」
「むむ、踏み抜きますか……」
 ミレイユも望も、やはり簡単に足止めされてはくれないことは分かっているのか、驚きは少ない。
「望、ミレイユ、大丈夫?」
 後ろから、エルトダウンが火術や雷術でストーンゴーレムの気を逸らしながら、聞いてくる。
 望もミレイユも声には出さず、振り返るだけで大丈夫だと言う意思表示をし、またストーンゴーレムとの交戦状態に入る。
「行っけ――! 天のいかづち!」
 ウィルネストが天のいかづちで断続的にダメージを与える傍ら、レンは自分の行動指針を決めた。
 望やミレイユが足を狙うならば、レンはゴーレムの腕を止めようと。
 ストーンゴーレムの肩関節を狙い、レンは火術を執拗なほどに打ち付ける。
 何度も何度も、火術を打ちつけたことで温度が急上昇し、ストーンゴーレムの一部分だけ、陽炎のように揺らめき始めた。
 温度が上昇したことで、地面に張られたブリザードも溶け出し、水のようになっている。
「これならいけそうかも〜」
 ぬかるんだ地面を見て、ミレイユはほんの少し沈んでいるストーンゴーレムの足元へブリザードを放った。
 ストーンゴーレムの足元は氷付けにされ、力いっぱいに動こうとしているが固定されて動けなくなっていた。
「さてさて、それでは、膝かっくんっと」
 ブリザードで凍った地面から氷術で、杭のようなものを望は作り出す。
 それがストーンゴーレムの膝裏に当たる部分を思いっきり打ち抜く。
「ここだな」
 地響きを立てて転倒したストーンゴーレムの熱された腕を、レンは氷術を使って今度は冷ましていく。
 最初は熱気によって氷が解けていたが、水となったそれは腕全体を覆い、いつの間にか腕自体を氷付けにしていた。
「ヨヤ、行けぇ!」
「全く……」
 背後に回りこんだ、ヨヤがストーンゴーレムの背中を駆け上がる。
 ストーンゴーレムの後頭部まで駆け上がると、ヨヤは背中から一本の、血痕がこびり付いたバットをすらりと取り出した。
 言葉は無いが、その獲物を持ったヨヤはとても嬉しそうに口元を歪め、目は大きく見開いている。
 則天去私で文字を削ると、ストーンゴーレムは抵抗することをやめ停止したのだった。
 そんな狂気の沙汰なヨヤを見て、戦慄する一同だったが、すぐに気持ちを切り替えたのはウィルネストだった。
「先輩方の戦闘、ちゃーんと見てたかァ? ヒヨっ子ちゃん?」
 どこかのカメラに指を向けているのだろう、ウィルネストは天井を見上げたのだった。
 そして、その様子を見ていた、アッシュは、
「おお、凄い! 俺様も一人であそこまでできるようになりたいぜ……!」
 素直に感動しているのだった。