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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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リアクション


「みんなー!! こんにちはーー!!」
 美羽がマイクで観衆に挨拶する。
 彼女の後ろではスタッフ達により、キーボードやドラムセットといった大掛かりな楽器が未だセッティング中である。
「何だ? バンドのライブなんてあったのか?」
「でも、可愛いから良いじゃん!」
 観客の声がチラホラ聞こえる中、美羽が続ける。
「今日、私達はこのセルシウス海水浴場のオープンを記念して、ライブに駆けつけたんだけどね……ドラムを頼んでいた子がヒトデを食べて食中毒になってしまったの。それで、遅くなっちゃったんだ。ゴメンネー!」
 美羽の言葉に、観客席の最前列ににいた中年の男が、傍にいる水着の上にお腹のお肉がたんまり乗った肥満体の男に話しかける。
ジョニー、まさかライブ中止の話ではあるまいな? お前に言われてワザワザここまで足を運んだぞ?」
ラル殿。そうそう焦るものではないでゴザル」
 ジョニーと呼ばれた肥満体が首にかけたタオルで汗を拭う。
「ワシは、蒼空学園のアイドルと呼ばれておる美羽ちゃんのライブを観に来たのだ。貴様やシンがひたすら追いかけている846プロ等、メジャーどころではなくてな!!」
「ラル!! あまり846プロをディスってると、俺が許さないぜ?」
 全身タイツのような黒い水着を着ているガリガリの男。シンが、ラルの言葉にクイと眼鏡を指で持ち上げて唸る。
「ほう、どう許さないと言うのだ? 日に焼ける事を恐れ、そんな水着を着た虚弱体質な体でワシに挑もうというのか?」
「黙れ! マメタンク!!」
 シンが叫ぶ。そもそも一年の大半を自宅で過ごす貴族のシンは、夏という季節が大の苦手であった。巨体のジョニーと違い、痩せているがゆえに日光が体に響くのである。
「ふん、気に入ったぞ、小僧。それだけはっきりものを言うとはな!」
 口ひげを撫でたラルが余裕の笑みでシンを見る。確かに浅黒いラルの体は驚くほど引き締まっていた。年齢が三十代後半辺りだというのにである。そんな自信のあらわれなのか、青い海パンがよく似合っている。
 元々『地下アイドル』と『学園アイドル』限定というマニアックな趣味を持つラルと、メジャーどころを愛するシンは仲が悪かった。
「まぁまぁ、二人とも落ち着くでゴザル」
 ジョニーが間に割って入り、二人をなだめる。
 ラルが苛立つ原因の一つが、内縁の妻にアイドル好きがバレてしまい三行半を突きつけられたからだという事はジョニーしか知らない。
「それにしても、今日はセルシウス殿も来ると思っていたのに、来てないようでゴザルな……」
「ふん! 所詮、ただのミーハーだろう」
 ジョニーが周囲を見渡す中、機材のセッティングが終わったステージ上では、美羽がバンドメンバーを呼び込んでいる。
「まずは、ベース!! コハク!!」
 舞台袖からベースを持って出てきたコハクがペコリと観衆に頭を下げる。
「続いて、キーボードは、ベアトリーチェ!!」
 こちらもコハク同様、温和に挨拶する。
「そして……ドラムの代役として、スペシャルゲスト!! S☆ルシウス!」
 ラルが首を傾げる。
「スーパースター・ルシウスだと? 何者だ?」
 美羽の呼びかけに、舞台袖から姿を見せるS☆ルシウス。
「「「うおおおぉぉぉーーー!?」」」
 観客がその姿にどよめく。
 短い金髪に、病的なまでに真っ白い肌、高い鼻は整形疑惑すら浮上する、そんな姿で現れるトーガの上にヨットパーカーを纏ったサングラス姿の男。
「ビジュアル系!?」
「違う!! キングオブポップだ!!」
 一人、魔界から召喚されたかのような出で立ちの男が無言でドラムセットへと向かう。
 ラルだけが、そんなどよめきの中、ほくそ笑む。
「フフ、この風、この肌触りこそライブよ!!」
 ドラムの前に座ったS☆ルシウスが、華麗にドラムを叩く。
「ジョニー……あれって、まさか?」
「シン総統閣下、吾輩も全く同じ人物を想像したでゴザル。しかし、彼は音楽等やったことがないと、以前……」
「黙れ! 小僧ども。美羽たんが歌うのだぞ!!」
 混乱した様子でシンとジョニーが囁き合うのをラルが一喝し、美羽達の演奏がS☆ルシウスの打ち鳴らしたドラムスティックの音と共に始まるのであった。