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リアクション
「「ブッ!!」」
元祖海水ラーメンを吹き出したのは、輪廻、ブルーズ共に同時であった。大体の客と同じリアクションでラーメンを噴出す輪廻と、ラーメンを口に入れてから「ムオッ!?」と叫んだブルーズがブーッ!っとそのままスープを吹き出す。
特に輪廻には、海での潜水中、同じ味を体験した思い出がフラッシュバックする。
二本のストロー付トロピカルドリンクを注文していた天音は、そのドリンクに口をつけかけた所で、ラーメンを吹き出す二人を咄嗟に避ける事に成功していた。
「ゲホ……ゲホ……し、しまった、コーラは炭酸だった!!」
「ムォー……ブヘッ!? み、水を……」
「……飲む?」
天音がトロピカルドリンクを、むせ返る二人にスッと差し出す。
二人はズズズと、凄い勢いでトロピカルドリンクを空になるまですすり、天音はドリンクを流し込む姿を楽し気に携帯写真に収める。
何とか急を凌いだ輪廻とブルーズが荒い息をついた後……。
「このラーメンを作ったのは誰だぁっ!!」
口直しにブルーズとトロピカルドリンクを飲む羽目になったことに怒りを顕にする輪廻が、器を持って立ち上がる。
「……女将を呼べ! スープのダシはきちんと取っているのか!?」
その声に、セルシウスがやってくる。
「女将はいないが、責任者は私だ。何があった?」
「ラーメンだ!! 何だこれは!?」
「……ラーメンだ」
「違う!! これはラーメンじゃない!! ……いいだろう、俺が、本当のラーメンてのを作ってやる!! 厨房を借りるぞ!」
「待て」
走りだそうとした輪廻に制止をかけるブルーズ。
「止めるな!!」
「止めてはいない。ただ、ダシを取るのを忘れるなと言いたいだけだ」
と、先程海で集めた貝類や昆布等見せるブルーズ。
「ふん、やるじゃないか。だが、タレはすなわち化合物の混合、すなわち調合!! 科学実験なら任せておけ!」
ブルーズを伴って厨房へ駆け出す輪廻。
二人を見送ったセルシウスに、テーブルに着いていた天音が声をかける。
「久し振りだね」
「……貴公は、確か、酒場でのポーカーの……」
天音はかつてエリュシオンの誇りを賭けて挑んだセルシウスをワイルドポーカー勝負にて見事撃破していた。その時以来の再会である。
「一度肌を見せ合ったよしみというのも変だけど、聞きたいことがあるんだ?」
「……何だ?」
「入国審査が厳しくなって確認に行けなかったんだけど、君の国、エリュシオンにあるタシガンの薔薇について何か知らないかな? 綺麗な男の子がいる店なんだけどね」
「タシガンの薔薇?」
しばらくの間、シャンバラとエリュシオンは戦争状態にあって互いに行くことができなかった。その間にタシガンの薔薇がどうなったか、と天音は問うたのである。
セルシウスも、その存在こそは知っていたが、興味すらない場所であった。妹は、たまにその店に行っていたようだが……。
「さぁな、だが普通に営業しているようだ。機会があれば今度行ってみるといい」
「そう……営業は続いているんだ……」
天音が意味深げに幾度か頷く。
一方、厨房では、ブルーズと輪廻が、店員やラーメン改良に勤しむノーン、なななを差し置いて、各々の腕を奮っていた。
「僕の手にかかれば、美味いラーメンなんてあっという間だよ!」
次々と調味料を調合する輪廻の頭には完璧なラーメン像が浮かんでいた。
「出来上がったスープは普通の魚介ベースの塩、にあらず!! 唐辛子などのスパイスをフカヒレ等を茹でて取ったゼラチンに包むことにより、時間が経つごとに色と味の変わる。まさに海のようなスープ、いや、海そのものなのだ!!」
「フカヒレなんて、ないよぉ?」
ノーンが突っ込むと、輪廻が端正な顔でクルリと振り向く。
「この海には鮫がいる! それを誰かに採ってきて貰うんだ」
輪廻の言葉を、ブルーズが続ける。
「そう! そして我が作るのは、その海のスープに合う出汁と、具材だ!」
ブルーズの頭にも完璧なプランが浮かんでいた。
「ラーメンの具としては、ワカメ、焼き海苔、星型かまぼこ、それに海の幸! 小鉢に黄身とろとろのボイルエッグ!! そして、後にラーメンの汁に白米を入れる! これで辛くなったスープの味を和らげる効果があると同時に!」
「「海の全てを楽しめる魔法のスープなのである」」
テンションの上がった輪廻とブルーズの声がハモる。
「……仲イイんだね?」
ななながポツンと呟く。
「さらにこのスープの辛味はで汗をかいた後、再び飛び込む海も最高に気持ちいいこと請け合い!! お……新たな調味料を発見! 借りるぞ?」
輪廻が、先ほど陽太が運んできた段ボールから調味料を取り出す。
ノーンがそのドクロマークが付いた瓶を見て、小さく悲鳴をあげる。
「あッ!! そ、それ!?」
ノーンの制止は間に合わなかった。
「え……?」
ポタリ。
……。
…………。
………………。
ドオオォォーーーンッッ!!
派手な爆発音が、海の家の一角を木っ端微塵にしたのであった。
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