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リアクション
「……これを食え、と言うのか?」
不安気にセルシウスが呟く横で、男らしく口に咥えた割り箸をパキンと割ったハインリヒが勝ち誇った様な笑みを浮かべる。
「どうした? チンタラしてるとオレが全部喰うぜ?」
そう言うハインリヒにも、暑さとは異なる汗が顔を流れていく。
「くっ……だが、私とて栄光あるエリュシオンの男!! 負けん、負けるわけにはいかんのだぁ!!」
「まるでチキンレースじゃない」
ルカアコが呆れたその時、である。
「それ、オイラが貰うよ!!」
元気いっぱいの声を出した正体は、海の家に客として全メニュー制覇を目論んで来ていたクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)であった。
「クマラ、頼んだものは自分でちゃんと責任もって完食するんだぞ?」
テーブルでかき氷とラムネで涼んでいた、パートナー兼保護者役のエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が声をかける。
「わかっているぜ、エース! 育ち盛りのオイラは茶碗に米粒一つ残さない位飢えているんだもん!!」
エースに振り返ったクマラが、ニッと白い歯を見せて笑う。
「飢えているのは知っているよ。一杯遊んだものな……」
シャリッとかき氷を食べるエースが半目でクマラを見る。
クマラと一緒にセルシウス海水浴場へ遊びに来たエースは、海と浜で遊んだ後に、「どうせ海の家はあまり美味しくないし、帰りの道すがら遅い昼食を取ろうか?」とクマラに提案していたのであるが……。
「海の家で普段は食べれないジャンクなメニューを満喫したい! したい! したい!したいー!!」
と、クマラが浜辺で10歳児なじたばた駄々っ子状態で暴れたのである。
なんとかなだめようとしたエースであったが、浜辺のギャラリーの視線の痛さに、逃げるように海の家へ突撃していた。
「(まんまとクマラの策にハマったかな……)」
そう考えながら、エースは、イカ焼きにかき氷、フランクフルト、ソフトクリーム……とご機嫌に海の家のメニューの端から頼んでは食べ、食べつつ次のメニューを注文しているクマラを前に、「その小さな体のドコにそれだけの食べ物が入るのか。不思議だよ」とこぼす。
「どこに? エース、わかってないな?」
「何が?」
かき氷のレモン味を店員に頼んだエースが、目の前に皿を積み重ねていくクマラを見る。
「こんなのは別腹だよ! まだ、メインディッシュを頼んでないんだよ?」
「……メインディッシュ?」
「ラーメン!! 海の家といえばラーメンだよ!!」
「ああ、あんまり美味しくないけど何故か頼んでしまいたくなるアレか」
「さっき店員に聞いたらさ、何か事故があったみたいって言われた」
エースが海の家の端に目をやると、元々日除けのための簡素な屋根があるだけの海の家の一角が、より一層の開放感溢れるオープンな空間になっている。
「事故……ねぇ。ホラ、クマラ、口の端にソフトクリーム付いてるよ?」
エースがクマラの口元を拭ってやる。
「ありがと……ん?」
鼻をひくつかせるクマラ。
「どうした?」
「この匂い……ラーメンだ!」
エースが止める間もなく、クマラが席を離れる。
「やれやれ……と!?」
爆発事故の瓦礫を片付けて戻ってきた店員のノーンに目をやるエース。
「ふぁー、喉乾いたよぉ。沙幸ちゃん、麦茶あるー?」
沙幸がノーンを出迎える。
「ノーン、お疲れ様。ごめんなさい、さっきので店員用の冷蔵庫が壊れちゃったみなたいなのよ……」
「ええーー!?」
二人の前に一輪の赤い薔薇と白百合が現れる。
「え?」
「へ?」
二人が見ると、エースが沙幸に赤い薔薇、ノーンに白百合を差し出している。
「これは素敵なお嬢さん達、花をどうぞ」
微笑むエースに沙幸とノーンが顔を見合わせる。
「えっと……店員さんをナンパしたりするようなお客さんは、即天去私で海の彼方までぶっ飛ばしますけど……?」
「沙幸ちゃんはね、ウェイトレスさんにはおさわり厳禁なんだもん! て先も誰かふっ飛ばしてたよね?」
胸が大きな沙幸は、水着エプロンという装備もあってか、好色家の視線にさらされ続けてきたのだ。既にエースに対しても、右足を一歩引いた構えを取っている。
「とんでもない……君たちも少しぐらいは休憩も必要だよね? てことさ」
ニッコリと笑うエースが、クマラが飛び込んで行った方を見て、
「どちらにしても……休める時に休んでおかないと、体が持たないよ? 熱中症とか、怖いしね?」
エースの提案により、沙幸とノーンはそれぞれラムネとソフトクリームをご馳走になる事になった。
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