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リアクション
第1章 海鮮捕獲大作戦
「美味しいお魚はイングリットにお任せにゃー!」
海に向かって、ありったけの想いを叫んで。
イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)は、3匹のDSペンギンとともに準備体操を始めた。
しかし、ペンギンってこの暑さで平気なのか。。。
「よし、準備万端にゃー!
行くにゃー!」
イングリットの声を合図に、勢いよく飛びこんだ。
水中銃でしとめた魚を、すかさずペンギンがかごへ拾う。
わしづかむウニや伊勢海老も、ペンギンのアシストでかごのなかへ。
なにやら、よいチームワークである。
「ぶは〜っ!
いっぱい獲れたにゃー!
アワビもいっぱいにゃー!
これだけあるし……少しくらいいいよね……じゅるり」
幾度か素潜りを繰り返したのち、浜辺へ戻るイングリット。
かごを覗くと、思わずよだれが。。。
「確かペンギンさんって手先が器用だったにゃー!
お願いにゃー!」
がっとつかんで、すいっとペンギンさんへ渡す鯛。
受けとると、協力してうろこをとりはじめる。
「さすがペンギンさん達はすごいにゃー!
魚の下処理もバッチリにゃー!」
手際のよさに、思わず拍手。
できあがりを待つあいだ、ペンギンさんとキャッチボールをしてみたり。
「あっ!
しまったにゃー!」
ウニをキャッチし損ねて、全速力で浜辺を駆ける。
そこで。
「はにゃっ!?」
イングリットは、追いかけてきたペンギンとともに、落とし穴へはまった。
頭上から、カシャッという音が降り注ぐ。
「ふふーはー!
よい1枚を撮らせてもらったぜぃ!
サラダバー!」
「あっ、こら待つにゃー!」
それは、七刀 切(しちとう・きり)のしわざだった。
『葦原明倫館イチのいたずらっこ』の名に恥じぬおこないを、本日も遂行していたのだ。
イングリットの制止も聞かず、立ち去ろうと歩き出す。
「いやぁ〜うまくいったなぁ。
浜辺に落とし穴とは、思いもよらないよねぇ」
森へ行く人のために、いたって普通の落とし穴を掘った。
即席のため、浅かったのだが。
川へ行く人のためには、たくさんのクラッカーに繋がる糸を張った。
水中にあるその糸を切ると、大音量と紙吹雪のプレゼントが。
お店へ行く人もいるだろうが、無関係の人を巻き込むのは気がひけるので自重。
そして帰ってきた人を迎える校門では、くぐる瞬間にたらいが落ちてくるしかけをば。
切のデジカメには、そんないたずらに遭ったみんなの、驚きの表情が収められていた。
「みにゃーっ!
待〜つ〜にゃ〜っ!」
「うわっ、マジかよ!?
ってかこっちもとかムリじゃん!?」
るんるんしながら写真を見返していた切を、なんとイングリットが追ってきた!
さらに挟み込むように、これまでいたずらの被害に遭った人達が。。。
「さすがに、いたずらにかかった人達全員から逃げるのは無理があったかぁ……」
「観念するにゃー!」
「おしおきはお手柔らかにしてくれると嬉しいなぁとワイは思うんだけど……ダメですか、そうですか、ですよねぇ」
「連れて帰っておえらいさんに突き出すのにゃー。
美味しくないお料理でも、めいっぱい食べさせてもらえばいいのにゃー!」
美味しい食事は、イングリットにとって一番の幸せ。
だからその反対のことをするのが、最も残念なはずだと考えたのだ。
その後のことはまぁ、ご想像にお任せしよう。
ただ、切が残した台詞だけ、書き記しておこうと思うわけで。
「ごめんなさい謝るから普通のお仕置きにしてくださいこれはやばいほんとにやばいって無理に口の中に入れないでくだゴブフォ!?
……明倫、館は……今日も……平和……です……」
それから1週間ほどは、誰も切の姿を見なかったということである。
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