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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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     ◆

 ウォウルたちの店、『スカイホリディ』は、開始と同時に疎らに人が来ていた。勿論、それは客の話である。
「いらっしゃいませーっ!」
 元気に笑顔で接客している結衣奈の声が響き渡る店内では、テキパキと一同が働いていた。
「ちょっとぉ、格好良いわね。店員さん」
「ありがとうございます。お客様」
 きりっとした面持ちで接客をするリオン。
「わぁ、こっちのお兄さんは可愛いねっ」
「ありがとう。アメリカンコーヒーは此方に置かせていただきますね」
 何とも爽やかな笑顔で接客しているのは北都だ。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい? 何か手伝うかい?」
「えへへ、大丈夫です! お気遣いありがとですー」
 結衣奈はその可愛らしい容姿でお客の心をがっちりキャッチしていたりする。
「中辛カレー出来たよぉ」
「北都さぁん、お料理お願いっ!」
「わかった、ありがとうね」
 舞衣奈は調理場で懸命にカレーを作っているし、それをネージュがサポートしている。
「うーん、あっついわねぇ……でもまぁ、まだいっか。何でか大きい扇風機、ウォウル君が持ってきたし、大丈夫でしょ。それにしても大きすぎやしないかしら。この扇風機……」
 祥子は近くに置いてある扇風機をまじまじと見上げ、再び紅茶の下拵えに勤しんでいたりする。
兎に角、店が賑わいを見せていると、裏方の方に三人ほどやって来た。
「お、やってるやってる! 此処ってヘラ男がやってる店だよな」
 突然の声に、調理場で料理をしていたネージュと舞衣奈、紅茶の下拵えをしていた祥子が驚きを見せた。
「わわっ、お客さん。此処は関係者以外立ち入り禁止だよっ……って、あれ?」
 慌てて走ってきいた結衣奈が声の主に声を掛けて動きを止めた。と、そこで北都とリオンがやって来る。
「あれ? 樹さんも手伝いに来てくれたの?」
「ん、おう! あんたたちも来てたのか。手伝いに来てやったぜ。で、ヘラ男と小娘は? 何処行ったんだ?」
 やって来たのは、ウォウルたちから呼ばれてきた林田 樹(はやしだ・いつき)、彼女のパートナーであるジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)林田 コタロー(はやしだ・こたろう)の三人。
「なぁんだ、樹さんたちだったですかぁ。あの人は今呼び込みに行ってるですよぉ」
 関係者だとわかったのか、舞衣奈は再びカレーを作りながら樹に説明した。
「そっか、んじゃま、あたしらもとっとと手伝うとすっか。なぁ、コタロー、ジーナ」
「あい! こたもがんばう、れしゅ!」
「わかりましたわ。でも残念です、樹様が仰っていた『やたらヘラヘラした変質者』をこの目で拝んでやろうと思いましたのに」
「ジーナ……待て。あたしゃいつそこまで酷いこと言った? 『やたらヘラヘラした変質者』じゃあなくて『ヘラヘラしてる変わったやつ』なら言ったんだが?」
「どちらも結果は同じですわ。さ、さっそくお手伝い開始ですわよ!」
 『二人とも結構酷い事言うなぁ』とは誰もツッコミを入れる事はなく、再びそれぞれが所定の位置へと戻っていった。
「それで、ワタシたちは何をすればよろしいんでございますの?」
 自慢のヒラヒラエプロンを掛け、コタローにもお揃いのものを掛けてあげながらジーナが尋ねる。
「外で接客する人がもう一人くらい欲しいかもねぇ。あ、いらっしゃいませ」
 爽やかな笑顔で接客をしながら、北都が現状、必要な人手を三人に伝えた。
「あたしゃパス。絶対にパス。断じてパス! そんな面白いこともねぇのにヘラヘラしてられっかっ」
「ワタシはお料理に専念したいのですわ」
 と、樹、ジーナが言い切ると、二人は顔を見合せてコタローの方へと向く。
「こた、しゃんろおしごろ、できるろ」
「コタローちゃんが接客って、なかなか良いアイディアかもっ!」
 隣で聞いていたネージュが何かに納得して一人頷いていた。
「おや、コタローさんが接客ですが。それは頼もしいですね」
 片付けから帰ってきたリオンがニコニコとコタローに頷いて、北都が注いだコーヒーを持っていった。
「よし、んじゃ頑張ろうぜ!」
 樹の掛け声にジーナ、コタローが返事をして、それぞれの仕事に取りかかった。
「お兄さん、このコーヒー美味しいね」
「ありがとうございます。リオン、そこのテーブル片付けて貰えるかな」
「ご馳走様、頑張ってな! 暫く回って疲れたらまた休憩しにくるよ」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています。――このテーブルですね、わかりました」
「お嬢ちゃん、コーヒー貰える?」
「はいぃー、ただいまお持ちするですっ」
 随分と賑わっている店内。時刻はまだ昼前だと言うのに、多くの人が店に足を運んでいる。そんな店の状態をまじまじと見つめるコタローが、気合いを込めて店へと出ていった。一方、調理場の面々は、というと――流石に食事を取るお客が減ったからか、余裕が出てきている。
「あらま、ワタシたちが来たらだいぶ暇になりやがったですねぇ……」
「ですねぇ、でも、だったら新メニュー考えとくのはどうでしょぉ」
「新メニュー? 具体的には何を?」
「今はコーヒーとカレーがメインですよねぇ。で、午後からは祥お姉ちゃんのお紅茶が増える、ですよね」
「何かデザートとか、あった方が良くねぇか?」
「それならばワタシにお任せですわ!」
 ネージュ、樹の話を聞いていたジーナが声をあげた。
「こんなこともあろうかと、ちゃんと用意しといたんですの!」
 そう言うと、ジーナ試験的に作ったヨーグルトを取り出す。
「これでデザートは完璧なのでございますですわ! 後は樹様たちに作り方をお教えすれば――」
 と、そこで、慌ててコタローが走ってきた。そして樹に飛び付き、何かに隠れている様だ。
「ん? どうしたコタロー」
「ねーたん、たくにーにが、きたろ、たくにーに! おじやげあげちゃいの、おじやげ!」
 モジモジしているコタローに、樹はあぁ、と納得する。が――
「おじやげ?」
 暫く考えた樹は、あぁと言って、たった今ジーナが作ったフローズンヨーグルトを手にする。
「ジーナ、これ貰ってもいいか?」
「え? えぇ、よろしいですけど――」
「よし、コタロー。これ持ってってやんな」
「あいっ!」
 元気よくそれを受け取ったコタローが、客席に来た託の元へと向かう。
「にーに、たくにーに! こえ、おじやげ!」
「うわぁ、美味しそうだねぇ。ありがとうね、コタローちゃん」
 ニッコリと笑ってコタローの頭に手をおいた託。するとコタローは更に顔を赤くして調理場へと戻っていった。
「あれ、コタローちゃん、どうしたのかな………」
「託君?」
「あぁ、ごめんね。今の子、コタローちゃんって言うんだけど、何だか顔赤くいて奥の方行っちゃってさ。心配なんだよね」
「ほほう、それは託、おまえの事が気になっているんじゃないのか?」
「んー、どうだろうねぇ」
「何にせよ、それ早く食べてあげなよ。せっかくあんなに急いで持ってきてくれたんだから」
「そうだね」
 ヴァイス、セリカと会話しながら、託は首を傾げている。
「俺何頼むかなぁ、カレーとか良いけどなぁ」
「俺はカレーを食う。兎に角腹が減った。と、言うか凄いな、文化祭は。カレーがあるとは……侮れん」
 メニューを見ているセリカはまじまじと驚いていた。