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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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 時間は遡り、大鋸と明子が会話をした後の校門前。明子の言い残した言葉に精一杯の反論をし終わった後の彼に焦点を当てる。
「あんにゃろう……先輩コケにしてっといつか痛い目見るからな……」
 実際、この発言の数分後に痛い目を見ているとは知るよしもない彼。それはそれで、また別の話であるが。
と、頬を膨らませている彼は、そこで待ち人たちの姿を発見する。
「お待たせ致しました」
「おや、早いの。大鋸殿」
 待ち人も彼の姿を確認したのか、お辞儀をしながらやって来た。度会 鈴鹿(わたらい・すずか)織部 イル(おりべ・いる)の二人は優雅に大鋸に近付き、一度施設内を見回す。
「入り口の前で何となく校舎の見取り図を見ましたけど、随分と広いんですね」
 やや驚いたように鈴鹿が呟き、隣に並んで立っているイルが大鋸の太股の辺りを肘で小突く。
「今日は頼むぞ。『えすこーと』とやらをしっかりの」
「お、おう。それで、まずは何処に行きてぇんだ?」
 二人の方を向いて尋ねる彼と、真剣に悩む二人。そこで、イルが口を開いた。
「朝餉ならば取ってきてしまった故、何ぞ余興がしたいよのう」
「ん? あさげ? ……って、何だ?」
 大鋸が首を傾げていると、鈴鹿が苦笑しながらに返事を返す。
「朝ごはんの事です。一応出る前に簡単に済ませてきてしまったんですが……大鋸さんは、ご飯、まだですか?」
「んー、まぁな。まだ食ってねぇよ。でも気にすることなんざねぇぜ、飯なんて適当に済ませとけばそれで良いからな」
「大鋸殿。それはちとよろしくないぞえ? 食は大事じゃ、侮ってはならぬのよ」
「そうですよ、無理をなさらず、お腹が空いたらいつでも言ってください」
「じゃあ、そうさせてもうわ。でもまだ良い。てめぇらは何処に行きてぇんだ?」
 持っていたパンフレットを二人に手渡すと、二人はパンフレットとにらめっこを始めた。
「この、何ぞ『あみゅーずめんとぶーす』なるものが気になるの、わらわとしては」
「そうですね。飲食ブースにも近いですし、まずは此処に」
「わかった。んじゃ此方だな。さすがに人も増えてきたし、はぐれんじゃねぇぞ」
「はーい」
「うむっ」
 大鋸の言葉に元気よく返事を返した二人は、先導する彼の後を追って歩き始めた。
「それにしても、本当に色々なものが揃っているんですね、空大は」
「じゃのう。至れり尽くせりやもしれんよの」
「施設がでかくて増設増設、ってな感じだけどな。だからこんなに入り組んじまってる。ごちゃごちゃしてっから、入学してからはよく道に迷ったもんだぜ」
 豪快に笑う大鋸と、成る程、と言って頷く鈴鹿とイル。
「おう、そうだ。目的地に着くまで案内してやるよ」
「本当ですかっ!?」
「うむ。『ばすがいど』と言う奴じゃの」
「イル様……ちょっと違いますよ」
「何、違うとな。おかしいぞえ、確か幾日か前に読んだ書物にはそう記されておったように思うが」
「バスには乗ってねぇしな。しかもバスガイドは殆ど女だろ。まぁ細けぇ事はいいか」
 一度区切りをつけた大鋸は、足を止めると右手に見える建物を指差して後ろをついていた二人へと振り返る。
「まずは此処だ。此処は教育学部の校舎。模擬授業が出来る大講堂なんかもあるし、楽器や規模はちいせぇが運動場なんかもある」
「何故運動場が?」
「楽器も、じゃの。教育学部と言うは寺子屋の先生を目指す学徒らじゃろうに。不思議な話よのう」
「初等部の教職課程は運動と楽器ができなくちゃあ取れねぇんだと。細けぇ話は知らねぇがよ」
 成る程、と相槌を打つ二人は、まじまじとその校舎を見上げながら通りすぎる。
「次にあるのは史学部だな。俺様はそう言うの苦手なんだが、なんでも地球と大陸、両方の歴史を教えてるとこだな」
「何処と無く古い建物みたいですけど……」
「元はどっかの学者の研究施設だったとかなんとか、そんな噂話を聞いた事あんな。ま、眉唾物って言やそうなるがよ」
「ほぉう。それが事実とあらば、恐らくその学者もさぞ喜んでいようなぁ」
「……そうか?」
「うむ。自らの情熱をば引き継がんと勤しむ学徒たちが、自ら情熱を燃やしていた場所で育まれているのじゃ。これは喜ばしい事と、わらわは思うぞえ」
「そっか、俺様には知らん感情だけどよ、それも案外悪くねぇかもな。さ、次行くぜ」
 再び歩みを進める大鋸に続き、鈴鹿とイルも歩き出す。
「さぁて、こっからは更に入り組むぜ。左にある白い校舎は医学部、その向こうには薬学部があって、医学部の向かい、要は俺たちの右手にあるのが学院校舎だ」
 一気にそこまで説明した大鋸が指す方へと視線を向ける鈴鹿とイルは、何処か楽しげに校舎を見ている。
「まさか学部ごとに校舎が違うとはの」
「まだ敷地内に入ったばかりなのに、凄いですねぇ」
「学部、学科が違えば講義で取り扱う物も違ぇしそもそもやってる内容が違うからな、こんな構造なんだろうぜ」
 大鋸たちは医学部と大学院校舎に挟まれる形で先へと進む。この辺りは学部毎に研究課題発表、簡単に言ってしまえば展示をいているブースなので、今の彼らの目的地とは違うのだ。と、鈴鹿がパンフレットを開き、その事に気付く。
「大鋸さん。後でこちらの展示ブースに戻ってきても?」
「構わねぇよ。構わねぇが……そんなに面白そうなもんはねぇぞ? 多分」
「案ずる事はない、大鋸殿。此方の学徒の日々の鍛練を見るに苦痛等はなかろうよ。のう? 鈴鹿」
「えぇ、少し気になることもありますしね」
「ふん、気になること、な」
 いまいち言葉の真意を図り取れないまま、しかし特にこれと言って深く聞こうとせずにまた正面を向いた。
「薬学部と大学院の渡り廊下を抜ければ、お目当てのアミューズメントブースがある経済学部の校舎だぜ」
 『校舎』と言うよりは、それはもうビルディングに近い造りの建物が、三人を見下ろすようにして建っている。