シャンバラ教導団

リアクション

★１章



　――迷宮前・入口――



「レオンが大変だって！？　待ってろ、オレがすぐに助けに行く！」
「ちょっと、待ってよっ！」
　天海　護（あまみ・まもる）は迷宮に着くや否や、今にも駆けだしそうな天海　北斗（あまみ・ほくと）を制して言った。
「北斗兄さん、少し落ち着いて……」
　天海　聖（あまみ・あきら）も北斗を宥める様に迷宮の入口に立ち塞いだ。
「落ち着け！？　これが落ち着いていられるってか！？　レオンはオレの……オレの……」
　今の北斗のあまりの人間らしさに、護も覚悟を決めた。
　否、元々救出のために来たし、そうするつもりでもいたが、改めて決意を固めた。
「わかった……。でも、僕には従ってよね。レオン達の二の舞は御免だし、何よりそうなってしまえば、余計に迷惑がかかる。いい？」
　北斗が頷くと、決まった以上聖は従うのみで、道を開けた。
「さあ、行こう……ッ」
　３人は誰よりも先に、迷宮に足を踏み入れた。



「……と、言うわけでして」
　フィリップ・ベレッタ（ふぃりっぷ・べれった）は契約者の面々に、頭を下げながら言った。
　この後に続く言葉は容易に想像できる。
　――レオンさん達が手間を増やしてしまって――。
　――申し訳ないです。申し訳ないです――。
　こんな感じになるのは間違いない。
　まるで子がやらかしてしまった親か、生粋の保護者気質か、何はともあれ、一呼吸置くには十分だった。

「まずはレオン達先発隊の救助が第一か」
　クレーメック・ジーベック（くれーめっく・じーべっく）は銃型ＨＣの動作を確認しながら、テレパシーを用いてレオン・ダンドリオン（れおん・たんどりおん）に応答を試みた。
「レオン、聞こえるか。これからチームであなたを救助しに行く。手始めに現在位置と状況、迷宮の入り口からどのようなルートを取ってその場所に至ったのか、教えてくれると、私達の救助もスムーズに進む」
『そいつは助かる。現在位置は……どこだ、ここぁ……。とりあえず落とし穴にハマって真っ暗で分かりはしない。とりあえず入口からとにかく左に折れながら降りてきてくれ。多分３度ほど階段を下ればわかるだろう。ジャングルでアナコンダにパックリ食われた野郎の後みたいに、無様に地上に俺のリュックが転がっているはずだからな。あと、かわい子ちゃんを間違っても追うなよ。手練れだ。野盗とモンスター、トラップも健在だ』
「……了解した」
　クレーメックが天津　麻衣（あまつ・まい）に目配せすると、麻衣は自身の銃型ＨＣを地面に置いて、手を組んだ。
「麻衣、お前の式神の出番だ。しっかり頼むぜ」
　ケーニッヒ・ファウスト（けーにっひ・ふぁうすと）が言うやいなや、ポウッと銃型ＨＣを中心に淡い光が集い、散り、閃光の後、淡い膜のようなものに包まれて左右に揺れた。
　式神の術である。
「……いい子ね。探索……お願いできるかしら？」
　――カタカタッ！
　もう一度左右に揺れると、コロコロ転がるようにして、迷宮内に向かっていった。
「私は式神に集中するので……」
「護衛はオレに任せな」
　アンゲロ・ザルーガ（あんげろ・ざるーが）が言った。
「こちとらナイトだ、守り切ってみせるぜ。ただし、危なくなったらそっちも自分の身を守る努力はしてくれよな」
　もちろん、と麻衣は頷き、術に集中した。
「それじゃあ私は式神から送られてくるデータと画像を解析しながら、トラップの類を。解除をお願いしても？」
　三田　麗子（みた・れいこ）が言うと、ハインリヒ・ヴェーゼル（はいんりひ・う゛ぇーぜる）が胸を叩いた。
「トラップの解除なら、オレの出番だな」
「なら、あたしはそのサポートだね！　モンスターとか野盗とかのさ」
　天津　亜衣（あまつ・あい）も続いた。
「ならわたくしはチームを、そして全ての契約者様へ向けての連絡を請け負いますわ」
　島津　ヴァルナ（しまづ・う゛ぁるな）はそう言い、連絡役を買って出た。
　これで準備は整った。
「アテンションッ！」
　クレーメックが号令をかけた。
「状況が更新された。パッケージをリフトするためには、トラップ、モンスター、それに野盗との交戦が予想される」
「ええッ、モンスターだけじゃなく、盗賊までいるの！？　そんなの聞いてないよー！！」
　ゴットリープ・フリンガー（ごっとりーぷ・ふりんがー）が新たな懸念事項に声を上げるが、続きがあると、手で遮られた。
「加えて状況はシビアだ。少女――アンノウンの存在も確認された。敵か味方か判別できない。後手だけは踏まないよう注意しろ。また私達は迷宮を傷つけるためでも、何かを持ち出しにきたわけでもないことは、忘れるな。それは誇りを傷つけることになる」
　一呼吸置いたのち、
「では、リフトを開始する」
　フィリップと共に、レオン救出が始まった。