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闇鍋しよーぜ!

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闇鍋しよーぜ!

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●異変?

「エース、この木でいいのかー?」
 快活な声を上げ、クマラカールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)を呼んだ。
「ああ、その木だな」
 木を見上げ、実っている果実を確認すると、エースは頷いた。
 クマラはするするっと木をよじ登り、
「これと、これと、これもだなー、森の恵みたちがオイラの【トレジャーセンス】にピキューンと囁いてるのは!」
 果実を数個もぐと、一個だけを残してリュックの中へすべてしまった。
「うーん……おいちー!」
 目を細めて、果汁の甘さを堪能するクマラ。
 その様子をエースは呆れながら見ている。
 クマラにせがまれ、エースはこのイベントに参加した。食べ物のイベント、ということでクマラが連れてけ、連れてけーと駄々っ子のように騒いだのだ。
「それで、今回も果物、と。全くクマラの味覚は本当にお子様だなあ」
 苦笑しながらも、木の上でもぎたてのパラミタナシを頬張るクマラに注意をする。
「クマラ、危ないから降りて来ーい」
「ほいっと」
 登った時同じように、まるで羽でも生えているかのように軽々と地上に降り立ったクマラは、
「なあ、エース。オイラ少し気になるものを見つけたんだけどー」
「また、美味しそうなものか? クマラはホントに美味しそうなものが好きだな」
「いや、そうじゃないよ!」
 エースの悪ふざけにクマラは力強く否定した。
「うん、何を見た?」
「森が壊されてる」
「どっちだ?」
 いつになく真剣な面持ちで言うクマラに、エースも気を引き締めた。
「あっちだかな」
「よし、いこう」
 何が合ったのか確かめる為に、エースとクマラは壊されている森へと向かう。

     †――†

「いい食材が……たくさん見つかると良いのですが」
 神楽坂紫翠(かぐらざか・しすい)は辺りを見回している。
 そして、地面をスコップで掘り出した。
 少し掘ったところで根っこにぶつかる感触が紫翠の手に当たる。
 山芋。それも相当大き目の山芋が出てきた。
 丁寧に傷をつけないように、山芋を掘り出す紫翠。
 そんな様子を見ていたバル・ボ・ルダラ(ばるぼ・るだら)が、
「手伝おうか?」
 そう声をかけた。
「お願いしても?」
「お互い、一人のようだし、これも何かの縁だ」
 バルは自分に任せておけと言った様子で答えた。
「では、あちらのほうを」
 紫翠はバルに簡潔に答えた。
 そんなこんながあって、紫翠とバルは行動を共にしている。
「自分の手で持てる量しか持ち帰るつもりはありませんでしたので、助かります」
 荷物を持ってくれているバルに、紫翠は丁寧にお礼を言った。
「何、闇鍋自体には参加できそうにないから、こうやって誰かと話しながら食材集めをするのもいいものだ」
 笑いながらバルは言う。
「お、早速。パラミタシメジだな」
 木の根元付近に生えるキノコを見つけ、バルはそれを摘むと手に持っていた籠の中に放る。
「おや……」
 ブナの切り株に目をつけた紫翠はそちらへと向かう。
「ん、どうした?」
「いえ、なめこと、その近くにパラミタマツタケがあったもので」
「すごいじゃないか! 群生はしているようだが、見つける人間はとても少ないと聞くぞ」
 バルは本当に感動したように、紫翠に言った。
「そうなんですか?」
 価値がわからないと言った様子で、紫翠は聞き返した。
「いや、それよりも――」
 バルの返事を聞く前に、紫翠は気付いた。
 少し先の地面が禿げ上がり、木々がなぎ倒されていることに。
「どうし――」
 バルも気付いたようで、2人して顔を見合わせる。
 なぎ倒された木々は昨日今日でできた代物であることが伺える。
 そして禿げ上がった地面は、何か大きな力が働いた後のように見えた。
 2人は警戒して先へ進む。

     †――†

「フゥ……フゥ……」
 獣のような荒い息を吐き、獅子神玲(ししがみ・あきら)はどうと、地に倒れ伏した。
 暴走していた【鬼神力】はなりを潜め、そこにあるのは少女の姿だ。
「お……なか…………すい……た」
 それだけ言うと玲は意識を失った。
 辺りは凄惨なものであった。
 玲の歩いてきた軌跡が分かる。木々はなぎ倒され、暴れつくしたであろう辺りの地面は禿げ上がっている。
 救いだったのは、目の前にあるパラミタリンゴの木が無事だったこと。
 そして、人を避けてここまで進んでいたお陰で誰一人として被害を被っていない。
「これは……」
 クマラに案内され、エースがそこにたどり着いた。
「大丈夫か!?」
 行き倒れになっている玲にエースは焦ったように声をかけた。
「腹すかして、倒れたんじゃないの?」
 クマラが茶化して言う。
「……何事ですか?」
「こりゃまた、派手にやったもんだ」
 紫翠とバルもそこに表れた。
「パラミタリンゴの木、そしてその目の前で倒れ伏す名も知らぬ少女……最後に彼女の後ろに広がる荒れた森。ここから導き出されることは――!」
「お腹を空かせてしまいましたか」
 バルの口上を絶妙なタイミングで引継ぐ紫翠であった。
「闇鍋やるんだから、つれていこーよー」
 クマラがエースの服の裾を引っ張りながらそう言った。
「ま、食い物の匂いにつられて目が覚めるかも知れんな。中身の保障はできないが……」
 バルは何か含みのある言い方をした。
「自分は構いません」
「じゃあ、そうしようか。俺も女性を置いていくのは気が引けるよ」
 全会一致で決まりだった。
 4人は玲を介抱し、村まで運ぶのだった。