シャンバラ教導団

リアクション

エピローグ　Return of the Chef

　そして。

　川添シェフは三日三晩生死の境をさまよったが、やがて無事に様態も安定し、ちょうど一週間後に意識を取り戻した。
　しかし不思議なことに、彼の記憶からはこの「天下一料理武闘会」に関する記憶のみが、すっぽりと抜け落ちていたのである。
　当然彼が決めていたはずの優勝者など思い出せるはずもなく、結局優勝者は公式には存在しない、といううやむやな結果に終わってしまったのも、まあこの番組らしいといえばこの番組らしいと言えよう。





　ちなみに、その後地球のテレビに復帰した川添シェフは、全盛期を思わせる川添スマイルで再び視聴者を魅了し、その地位を不動のものとしたのであるが……このスランプからの復活劇に関して、彼は後にインタビューでこう語っている。

「美味しいものばかり食べていると、それが当たり前になってしまい、『特別なもの』という意識がなくなってしまう。そんな時期が僕にもありました」
「でも、そうじゃないんですよね。まずは食べられること、安心して食べられるということ自体が、本当はすでに特別なんです。そのことを思い出したら、また以前のように笑えるようになりました」