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続々・悪意の仮面

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続々・悪意の仮面
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第九幕 マスカレード・パニック!!〜後編〜


さて場所が変わって、校舎でわかる人にしかわからない戦いが行われ。
さまざまな因縁が想像の斜め上で行われている頃

遠く離れた空京大学の専用の多々良場にてレモリーグ・ヘルメース(れもりーぐ・へるめーす)はパートナーにお茶を入れていた。

 「緋雨ちゃん、あまり根を詰めないように、たまには休憩も必要ですわよ」

水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)はそれを礼を言って受け取り、額の汗を拭う。

 「ありがとレモ。あと少しでイメージ通りのものが出来そうなのよ。
  麻羅にいちいち聞くと色々面倒だから、出来るところは自分で頑張らないとね。
  ところで……麻羅はどこに行ったのかしら?」
 「さぁ…確かヴァイシャリーに用事があるとかいっていたような?」
 
緋雨の言葉に答えながら、レモリーグはTVのスイッチを入れる。

 「ヴァイシャリー?元気ねぇ。もうあの子ったら見かけ通りの子供なのか
  見かけとは裏腹に年を食ったババァなのかホントわからないわ。
  まぁそんな事はどうでもいいか、頑張って早く麻羅に追いつき追い越さないとね♪」

再び作業に取り掛かろうと立ちあがった緋雨は、ふとヴァイシャリーにいる友人を思い出す。

 「…そういえば最近美緒と会っていないわね、どうしてるかしら〜?」
 「あら?このニュースはヴァイシャリー話をすれば何とやらですわ?
  ずいぶん街中が賑やかになってるようで……あら?」

傍らでお茶を飲んでいたレモリーグが驚いた声を上げる。
その声にTVを見たら、自分達のよく知る相手が金ぴかマッチョに囲まれて写っていた。

 「ナニコレ?麻羅?どういうことレモ」
 「さぁ〜?麻羅ちゃんは何やら怪しい宗教団体でも始めたのでしょうかね?」




 「え〜と……なんだこれ?」

そんなTV越しに写っていた光景の場所、ヴァイシャリーの街の一角にて……。

ずっと逃がした通り魔
〜魔鎧になったラナ・リゼット(らな・りぜっと)を纏った泉 美緒(いずみ・みお)
…を追っていた蔵部 食人(くらべ・はみと)も目の前の戦いに佇むしかなかった。

すぐさま上空からヴィーヴル・フランシア(う゛ぃーう゛る・ふらんしあ)の通信が入る

 『見ての通りの激戦であろう?件の通り魔を探していた者が思った以上に存在していた、それだけだ』
 「あ…まぁ、そうなんだけどさ」

問題は戦いの凄まじさではある。
大勢を相手に引けをとらない美緒の技量は賞賛すべきだといえる。

要は問題はその相手なのだが……

 「何で水着コートとスク水仮面、負けず劣らずのビキニアーマー、そしてマッチョとヒーローまでいるんだよ?」

食人の呟きに答えるように
その中の一人崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が闘いながら美緒に口を開いた。

 「ホント、こんなかわいらしい姿になっちゃって…たまにはちゃんとお仕置きしてあげないとダメかしらね?
  私も似たような格好をしてみたの、似合うかしら?」

そんな風に優雅に語る彼女の身に纏う【シェルタンアーマー】は美緒の魔鎧に負けない露出度である。
そんな彼女の胸元見て何故かビキニ&コート姿のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が舌打ちをする。

 「大きけりゃいいってもんじゃないわよ。でもその心意気は賞賛するわ!時に美緒はね!
  仮面の影響とはいえそのナイスバディを衆目にさらす快感に目覚めるのはいいことよ!」
 「……季節は選ぶべきだと思うけど?」

彼女の宣言にパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は溜息と共に冷静に突っ込みを入れる。
そんな中、高らかに高い屋根の上で改めて名乗りを上げる水着姿が二人、しかもマント付きである。

 「乙女の心が高ぶる時!」
 「あ、現われたるは美しき女神!」
 「マジカルエミリー!」
 「み、ミラクルコクーン!」
 「今宵は乙女の仮面を盗みにただいま参上!」
 「抵抗する悪い子は…た、たべちゃうぞ?」

名乗るだけ名乗った後、片割れの『ミラクルコクーン』を名乗った稲場 繭(いなば・まゆ)が小声で相棒に口を開く。

(「ねぇ、やっぱりってこの格好で行くのぉ?!」)

恥ずかしげな彼女の言動に反し、『マジカルエミリー』と名乗ったエミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)は堂々とだが小声で答えた。

(「これだけ注目を集める騒ぎなんです、百合園としては騒ぎを大きく出来ないでしょう?
  ワタシ達も注目される訳には行かないなら、こっちの方が逆にばれないの!
  それにあの美緒ちゃんが素敵な格好で…ふふ、これはつまりいろいろといたずらできるチャンスね?!」)

もはや目の色が違う相棒に溜息をつき、繭は美緒に声をかける。

 「あ、暴れるのはやめてください!
  後その格好を見せ付けるのも…そ、その、後々恥ずかしくなるのでやめたほうが…」
 「……自分もその格好でよく言えるわね」
 「じ、自分の格好は言わないでくださいっ!」

セレアナという死角からの突っ込みに赤面する繭、もといミラクルコクーン。
その目の前を今度は見るからに仮面のヒーローが跳躍して美緒に踊りかかる!
 
 「強さの喧伝の為に罪なき者を襲うなぞ言語道断!その狼藉、止めさせてもらう!
  仮面ツァンダーソークー1!タイマンはらして貰うぜ!」
 「やりますわね!しかしその格好で暑くありません?」

美緒の質問に仮面ツァンダーソークー1こと風森 巽(かぜもり・たつみ)が答える。

 「姿を隠し、戦いの涙を仮面で隠してこそのこの姿だ!」
 「貴方とはわかりあえそうもありませんわね。この姿に何も言わない殿方なんて……」
 「確かに、目のやり場には困るけどね……
  それを理由にこっちが実力出せないなんて、貴女に失礼だろう?」
 「ええい、着るとか着ないとか低俗だぞお主ら!」

また一味違ったアイデンティティーのぶつかり合いを見ながら、黄金の裸マッチョに担がれ
天津 麻羅(あまつ・まら)が高らかに叫んだ。

(…ちなみに空京大学で緋雨達が見た光景はこれだと先に言っておく)

 「痴女も痴漢と同じ犯罪者…
  じゃがその痴女が巨乳であったなら国家権力が無力とかすじゃろう…
  なら、神であるこのわししか裁ける者はおらん」
 「…つまり貧乳こそが正義って言いたいの?そこの神さ……」
 「やかましいわそこのビキニコート!」

セレンフィリティの茶々に本気で吼える麻羅。なぜそこまで怒ったかはあえて突っ込まずに置く。

 「とにかく今こそ神の英霊である天津麻羅がこの場を裁く!最近作った神の軍団でな!」

彼女の宣言に有象無象の金ぴかマッチョが雄叫びを上げる中、戦況は刻一刻と変化していく。
そしてなんだか知らないが見れば食人の傍らで男がスケッチブックに筆を走らせている。

 「いける!いけるぜこのシチュエーション!オレの想像力にビンビンくるぜ!
  誰も彼も良い乳だ、特に美緒さんはサイコーだ!
  このままこのオレ、足ェロ気味夢人の漫画の題材になってもらうぜ…」

男の名は弥涼 総司(いすず・そうじ)一応補足だが『足ェロ気味夢人』というのは彼のペンネームである。
叫びながら何やら種モミマンを取り出し説明を始め、それを戦場に放り投げた。

 「こいつは特別製でな…【乳モミマン】と呼んでるんだ!ゆけい乳モミマン!チチを揉めっ!」



 「……すみません、私が駆けつけた時には、もうこんな事になってまして……」
 「もう、なんだ……流れが変わるまで見てるしかないんじゃね……?」

食人の隣で冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が困ったように謝った。
生徒会執行部『白百合団』特殊班所属である彼女すら、この戦場にどう手を出したらいいか困っているようだ。
もちろん、ニット帽ごしとはいえ【邪気眼レフ】をつけてる食人も怖くてとてもじゃないが手を出せない。
そんな彼に魔装戦記 シャインヴェイダー(まそうせんき・しゃいんう゛ぇいだー)から通信が入った。

 『大丈夫だ食人!いつもの魔鎧変身でシャインヴェイダーになれば連中と変わらん!さぁ!』
 「ぜっっったいに い や だ!!」

 「うわ…これを拾ったから何かの騒ぎと思って来てみたんだけど……」

そんな中、彼らの背後で新たな声がして小夜子と食人は振り返った。
そこには砕けた仮面のかけらを手にした如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が立っていた。

 「どうなってんだこれ…あからさまに美緒らしくないというか。
  見られたいとか、暴れたいといった欲望があったのか?」



さてそんな泉美緒を取り巻く戦場だが。
このような多対一の均衡のまま、戦況が長引いているのには理由がある。
もちろん仮面に開放されて本来の美緒の実力が顕現されたというのもあるが……。

まぁ何だ、欲望というか行動動機がはっきりしすぎて皆の足並みが揃ってないのである。
それぞれが主張が激しい攻撃パターンゆえ、誰かが出れば誰かの攻撃が無効になる。

麻羅の仕掛けた捕獲用の見えない兵士が繭を取り押さえるわ。
セレアナの【ライトニングランス】の煽りで吹っ飛んだマッチョが音波銃で狙いを定めたセレンフィリティに突っ込み
足がもつれた振りをして美緒胸元に何故かかけようとした総司の【シャンバラ山羊のミルクアイス】が
逆に亜璃珠の胸に逆にかかり、天使の笑みと共に半殺しにあい。
その隙に巽の放ったワイヤークローが無理矢理仮面をはがそうと近づいたエミリアを捕獲する…といった具合。

あまりのグダグダに連中を無理矢理黙らせて自分達が動こう…と食人が足を進めかけた。
しかし……

 「つまらないですわ。みなさん雁首並べてその程度?」

……という美緒の一言で全員のこめかみからビキリと同じタイミングで音がした刹那。
どうやら全員の何かの歯車が噛み合ったようだった。


 「ねえ美緒、貴女が強くなってしたかったのはこんな事だったのかしら?」

刹那、【フォーティテュード】と【歴戦の防御術】を駆使してガードした亜璃珠が跳躍!
美緒の眼前に【龍飛翔突】を放つ!
飛びのく美緒に【ゴッドスピード】で接近した巽が【女王の短剣】を振るい、バランスを崩す!

 「く…この!」

続けて巽の背後から目の前に総司が飛び出してくる。
予想外の人間の参戦に美緒がひるむ中【メンタルアサルト】で奇妙な構えを取りながら
服を脱ぎはじめる総司!

 「その手は先ほど見ました!…何!?」

総司の攻撃ばかり気を取られていたが
気が付けば……周囲を麻羅の金ピカマッチョ軍団に囲まれている!

さらにその人影から両翼よりセレンフィリティとセレアナの姿が飛び出し
中央から繭の【ファイアストーム】が展開……!
上空に逃げるしかない美緒が高く跳躍する……だが!

 「美緒ちゃん、その仮面は私がいただくわ!元のあなたに戻りなさい!」

再び接近を試みたエミリアがいた!

 「冷静になれば一気に終わって当然なのよねっ!」

エミリアの手が美緒の仮面に伸び、誰もが終了を想像した瞬間。
どこからともなく放たれた【爆炎波】でセレンフィリティ達もろともエミリアが吹っ飛んだ。

 「へ?きゃああああああああ!?」