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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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「ルミーナさんどこなんだぜ?」
「うーん、そう離れてはないと思う」
 風祭 隼人(かざまつり・はやと)アイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)は環菜達と行動していたがはぐれてしまっていた。
「女の子がいないな……」 
 隼人達の後ろでぼそりと、風祭 天斗(かざまつり・てんと)がつぶやく。
 天斗は周りを隼人達よりもじっくりと周りを観察していた。
 他の女の子と合流できないかともくろんでいたのだが、なかなか人を見つけることは出来ないでいた。
「おい、天斗。前を見て歩かないと……」
 天斗はいつの間にか隼人達より前に歩いていた。
 しかし、天斗はそれよりも足での違和感を感じていた。
「なんだ? ここだけ感触が違うような」
 違和感のある床を何度も踏む。
 その床が何なのか気がついたのは、アイナだった。
「それ、トラップじゃない!?」
「マジかよ!? ってうお!?」
 慌てて天斗は後ろに下がる。その瞬間後ろから、大きな地鳴り音が聞こえてくる。
「やったな……お前」
 隼人が頭に手を当てながらため息をつく。
 後ろから大きな者がこちらに向かってくるのが見えた。
 隼人達ははっきりと見えるまでじっくりと観察していると、それが廊下の天井まである丸い玉がゆっくり転がってきているのが見えた。
「逃げるぞ!」
 隼人のかけ声と共に、3人は走り出す。
 その間も、球がゆっくりも地鳴り響きを上げながら追ってくる。
 隼人達はその音が近くなれば鳴るほど焦る。
「あっ、環菜さんと陽太さっ! にげっ!」
 先を歩いていた、人影にアイナは慌てて声をかけた。
 環菜、ルミーナ。それに、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が後ろを振り返る。
「こっちだ!」
 陽太が隼人達と共に球の転がるコースから外れようと、別の通路に曲がり込んだ。
 普通ならまっすぐ球は転がるはずだった。
 だが、この球は陽太達の入った通路さしかかると急ブレーキ、九十度のカーブを描いて陽太達をしっかりと追ってきた。
「これ、もしかして私達を追尾するトラップじゃないでしょうか!」
 まさに法則を無視して曲がってきた球を見てしまった以上、ルミーナの解説に誰しもが疑いようが無かった。
 大きな球は刻々と隼人達を追ってくる。
 その間、エリシアはずっと球を食い止める方法を考えていた。
 このままでは、全員下敷きになるのも時間のもんだいだったためだった。
「あ!!」
 ノーンが不意に声をあげる。
「の、ノラコウモリの大群がいるよ!!」
 環菜と陽太は前方に見える無数のノラコウモリを確認すると足を止めた。
「さすがに、このコウモリを目の前に突っ切るのは無理ね」
 環菜は軽くため息をつきながら陽太を見た。
「いえ! 環菜を俺が守りながら進みます!!」
 少し暴走気味の陽太の横腹を環菜はつついた。
「あなた、他の人はどうするつもりなの」
「うっ……そのとおりですね。とはいってもあのでっかい球を早くどうにかしないとまずいですね」
 球は陽太達の元まであと三メートルという位置まで来ていた。
「しかたないですわ」
 エリシアが球の前に歩み出る。
「ど、どうするの? おねーちゃん」
 心配そうにノーンが声をあげる。
 エリシアはただ、無言で召還獣の召還に集中した。
 結果、成功。現れたのは全身が鋼鉄の人型だった。
「さっ、わたくしがトラップを押さえてますから、早くノラコウモリ達を!」
 全員がエリシアの言葉に頷きノラコウモリに対峙する。
「邪魔する輩はぶっ潰す!」
 隼人は、銃を構えると、ノラコウモリ達を狙って打ち落としていく。
 打ち落とし損ねたノラコウモリを、アイナがヘキサハンマーでとどめを刺す。
「わたしも、いっくよー!」
 ノーンはエレメンタルブラストで遠距離からノラコウモリ達にダメージを与えていく。
 陽太はアイスフィールドで環菜を援護しつつも二人で協力して、倒していった。
「隼人さん、こっちは大丈夫なので! ルミーナさんとをお願いします!」
 ノラコウモリの数が大きく減り、陽太達に余裕が出た頃。
 陽太は突然大きな声を上げて隼人に指示をだした。
 ルミーナは一人、端っこの方でノラコウモリと闘っているところだった。
「るっ、ルミーナさん、援護します!」
「はい! また、お願いしますね」
 ルミーナはサイドワイダーを放ちながらも、慌てている隼人を見ると満点の笑顔で答えた。
 一瞬、心臓が高鳴るのを感じながらも隼人は、出来る限り冷静に援護する。
 ルミーナは幾度となく会う中で隼人に対して信頼できると感じるようになっていた。
「ルミーナさん、そこ右のやつらをお願いします!」
 隼人はうまくルミーナと協力し、ノラコウモリを倒していった。
「これで、最後!」
 ノーンは元気よく、最後と思われるノラコウモリを倒した。
 そのノーンの声に、一同は安堵の空気に包まれた。
「お疲れ様です、ルミーナさん」
「いえいえ、隼人さんのほうこそ、ありがとうございました」
 隼人とルミーナは互いに褒め合っているところだった。
 それを陽太と環菜達は遠くから見守っていた。
「ルミーナ、置いていこうかしら」
「そうですね。むしろこのままお薬が見つかるまで放っておきましょうか」
 環菜と陽太は軽く笑みをうかべながら二人を見守っていた。
 ただ、一人だけ頑張ってる人がいた。エリシアだった。
「うぐぐ……この球おもったより重いですの……」
「おねーちゃん、ど、どうするのそれ?」
 始終ずっと心配そうにノーンはエリシアを見ていた。
 エリシアの召還獣は、球を支えることに悲鳴を上げていた。
 おそらく、持って数分。数分たてば、この球は再び転がり始めるだろうと感じていた。
「はっくしょん!」
「きゃ!」
 どうしたものかと悩んでたとき、ルミーナの悲鳴が響く。
 くしゃみと共に、天斗がルミーナを抱いていた。
「つい病気のせいで。アイナ、そんな鋭い目でみないでくださいよ。いや、本当に病気のセイデスヨ?」
「ふ〜ん、病気のせい? そうねえ、ちょっとあなたには病院に連れて行く必要がありそうね」
 アイナは横目でエリシアを見た。
「エリシアさん、大丈夫ですか? すぐ助けを出しますね!」
「え」
 笑顔ではあるが、表情はひきつっているアイナに、エリシアは驚いた。
「ささ、来てください。天斗」
 エイナは無理矢理、天斗を大きな球の前へと連れて行った。
「エリシアさん、お疲れ様でした。召還を解いてくれて大丈夫ですよ」
「おい! そんなことしたら俺が――」
 エリシアは何かよく分からないままに召還を解いた。
 その瞬間球はふたたび転がり始める。
 天斗を追尾して。
「うおおおおおおおおおおおお!?」
 通路の奥へと球と天斗は消えていった。
「さ、行きましょうルミーナさん」
 隼人はルミーナを引いて、天斗が消えていった通路とは別の方へと進んでいった。