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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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第3章
「くしゅん!」
 神崎 零(かんざき・れい)は勢いよく神崎 優(かんざき・ゆう)に抱きついた。
「あ……ごめんなさいですわ」
 優を話したところで、零はある異変に気がついた。
「あれ、聖夜と刹那はどこですの?」
 零の言葉に、優は周りを見渡す。
 何処にも、陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)神代 聖夜(かみしろ・せいや)の姿は見あたらない。
 もしかすればトラップに引っかかりはぐれてしまったのかもしれないと優は思った。
「少し戻るか……一つ前の大きな広間まで」
 優と零は今来た通路を、なるべく急ぎ足で戻る。
 ただ、零は念のためを重い、禁漁区を張りながら戻ることにした。
「ん……? この部屋、ドアが閉まってたか?」
 大きな広間までたどり着くと、そこはしっかりと化粧石で作られたドアに固く閉ざされていた。
「たしか、あいてなかったと思う……けど、ここは入ったらまずいかも」
 零は神妙な表情を浮かべながらドアに手のひらを当てる。
 そこから禁漁区による警告を零は感じ取っていた。
「だれか――か?」
 しかし、静かに耳を澄ませてみるとドアの向こう側から声が聞こえてきていた。
「もしかして今の声、聖夜?」
 零は優の顔を見ながら問いかけた。
「かもしれないぜ……」
 優は深く頷き、ドアの取っ手に手をかけた。
 危険はもちろん承知の上だったが、ドアは開かなかった。
「取っ手がまったく動かない?」
「トラップですね……」
 後ろから突然声が聞こえてきた。
 優達は一斉に振り返ると、そこには手を首に当てながら見ていた風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)が居た。
「うーん、中に仲間がいらっしゃるなら助けてあげたいんですが……僕にはドアがあけられそうにないですし……」
「あら、ここを通らないと先に進めそうに無いし……あたしの出番ね?」
 今度は優達の横から声が聞こえてくる。
 現れてきたのは、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だった。
 セレンフィリティは優達の横に立ち、ナゾ究明でドアを解析し始める
「よっと、こうすればいけそうね!」
 開かないだろうと予想していたセレアナをよそに、ドアはゆっくり音をあけて開いた。
「さあて、トラップも解除したしもう大丈夫よ」
 セレンフィリティを先頭に全員が中に入っていく。
 入ってすぐ、セレアナは異変に気がついた。
「セレンフィリティ、まだトラップがあったんじゃないの?」
「え?」
 全員の顔色が悪化していた。
「大丈夫か、聖夜と刹那……」
 優は気分が悪い中で聖夜と刹那を探した。
 暗い部屋の中、目が慣れてくると、そこに聖夜と刹那は居た。
「くしゅん!」
 刹那は、何度も聖夜に抱きついていた。
「ご、ごめんなさい」
「い、いや……」
 謝る刹那に冷静に答えながらも、聖夜は抱きつかれることで内心は踊る。
 だが、今はそれどころではない目の前には黒い大群が迫っていた。
 その黒い大群はノラコウモリで、100匹は超える数だった。
「な、なんだよあの数」
 遠くからその大群を見て優は思わず声を上げた。
「零さんと刹那さんはこちらの方へ! お二人は後ろから援護してください! その方がおそらく抱きつきたくなる病を気にせず戦えるはずです!」
 優斗が大きな声をあげて、部屋の入り口へと二人を連れて行く。
「なるほどな、確かにそれなら俺たちは気にせずに戦えるって寸法か」
 聖夜はどこか、複雑そうな表情を浮かべながらも納得したように言った。
 その隣に優が駆け寄ってくる。
「さて、一気に片付けるか」
「私達も行くわよ!」
 優に続いて、セレンフィリティが戦いに加勢しようとする。
 だが、セレアナはセレンフィリティの腕を掴んで静止した。
「待ちなさい、状態以上のトラップを解かずに闘うつもり?」
 セレアナが指を差す、そこには、青い光りを放つ石があった。
 良く見渡すと部屋の4隅に石が置かれていた。
「あ、つまりあれを破壊すればおっけーってことね!」
「はあ……まあ、あなたの好きになさい」
 セレアナとセレンフィリティは左右に分かれ、石を破壊する。
「お、なんか気分が良くなったか」
「これなら、一気に片付けられそうだ!」
 聖夜と優の体はさっきと変わって素早く動けるようになっていた。
 さっきまで苦戦していたのが嘘化のように、二人は、目の前に広がる100近くのノラコウモリを一斉に片付けていく。
「さてさて、あと何匹でしょうか」
 優斗は遠くから援護している零、刹那を守れるように聖夜達の取り逃したノラコウモリを倒していった。
 100匹は10分もしないうちに殲滅し終える。
「病気してる組と探索する組を分けた方が効率が良いと思ったのですが……やめておきましょうか」
 全員、倒し終え一息をついたときに優斗が提案をしようとした。
 その提案は、まさにけが人を出さないための提案だったが、一つだけ問題があった。
「病気にかかってるの、ほとんど女の子だけだからな……」
「そうね、警護をつけるとしても状況は変わらないでしょうし」
 優とセレンフィリティも真剣な表情を浮かべて悩んだ。
 この状況をまさに打破するための重要な作戦になりえるためだった。
「仕方ないですね、今のまま行きましょうか」
 全員、静かに頷いた。
 再び先を目指す。