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我が子と!

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我が子と!

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〜 1st phase 〜


 ……データー照合 
 コアと環境のシンクロ状況……問題なし 
 各サンプルの状態の確認を開始 

 フィールド:公園 
 4名のサンプル及び各組対象のマテリアルを確認…… 


穏やかな日差しを受け、大公園で一組の親子が戯れている

 「参った、まだトシじゃないんだけどなぁ……流石に疲れたよ」

娘とバトミントンを終え、一休みしながら桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は次の遊びに専念する母娘を見つめ呟いた
愛しの娘、春香とその母親……東峰院 香奈(とうほういん・かな)は花畑で冠を作っている

我ながら悪くないな……と思う

今まで自分の夢を探しパラミタで色々な旅をしてきた
それはそれで自由気ままで良かったし、やめようとは思わない
だが、多くの旅で出会う人々
……その中に幾度か親子の姿を見るにつけ、己が未来のそれを想像している自分に苦笑したものだ
まだ若いのに何を落ち着こうとしているんだ、自分は……と
それでも徐々に気づき始めているパートナーへの大切な想いもあり、考えた末の選択だった

その結果は悪くないと今は思う
この穏やかな時間がこんなにも暖かく眩しいものだという事を知ったのだから

 「もう、そんな所で何て顔してるのよ。一回り老け込んだオジサンみたいよ?」

そんな忍の下に香奈と春香が戻ってきた。娘の手には花の冠が握られている

 「お父さん、見て見て〜!花冠作れたよ〜!」
 「ちょっと教えただけなのに、もうこんな風に作れたの。凄いと思わない?」
 「ああ、春香は何でも上手だなぁ」
 「あそこにいる子とね〜さっきまで公園にいた子達にも教えてあげたんだよ!」

香奈に頭を撫でられ、小さな娘はエヘヘと嬉しそうに笑う
そして忍の褒め言葉に気を良くしたのか、もっと大きいのを作るんだと走り出して行った
その姿を眺めながら忍が香奈に語りかける

 「正直、手にするのも照れくさいって思ってたけど……驚いたよ
  自分にこんなに、ありふれた人並みの幸せを望む気持ちがあったなんてさ」
 「……人一倍、ヒトが良いしーちゃんだもの。望まないわけないでしょ?」
 「……香奈の方は、どうなんだ?」
 「一目瞭然♪見てわからない?」

そう言って香奈は娘の作った花冠を楽しげに頭に乗せる。
その顔は普段見る事のできないような、暖かで眩しい笑顔だった。



 「おかえり、遅かったですね」
 「ごめんごめん、街の方まで少し出ないと無かったんだ。
  ちょっとあっちも賑やかだったから、この子が好きそうなのを見つけたんだけど……」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)に抗議の目を向けられ
慌てて清泉 北都(いずみ・ほくと)は買ってきた飲み物を見せる
愛しい子供の為に買ってきたのだが、どうやら肝心の娘の月(ルナ)は
クナイの膝ですやすやと寝息を立てて眠ってしまったようだ
それを見つめている満足そうなクナイの姿に、北都は思わず笑ってしまう

 「満足した?父と子のココロゆくまでの時間を譲ってあげたんだけど」
 「その言い方は意地悪です!」
 「だって、ブランコと滑り台を一緒にやってた時はあんなに嬉しそうだったのに
  シーソーで僕が月と一緒になったらさ、まるでこの世の終わりみたいな顔するんだもの
  これはちゃんと借りた分を返してあげないと…って思うじゃないか」
 「それは……まぁ……そうですけど……」

真っ赤な顔して俯きながらゴニョゴニョと呟くクナイを見て、くくくと笑いを押し殺す北都
そんな中…ふと、娘の頭に花の冠が乗っていることに気がつく

 「あ……さっき、あそこで遊んでる子と仲良くなって、作ってもらったんです」

北都の目線に気がつき、クナイが遠くを指差して説明する
見れば少しはなれた花畑で女の子が花を集めているのが見えた

 「そっか、友達か……子供だもんな、これからもいろんな出会いがあるんだろうな」

何気ない意味で呟いた北都だが
見ればクナイは何やら心配そうな顔で所在が無くなっている様子だ
……まぁ母親なら『悪い友達』あたりだろうが
父の立場としては大方『悪い虫』あたりを想像してるのだろう

(……まったく、今からこんな溺愛ぶりだと将来が心配かな)

ちょっと困りつつ、意地悪をしてみたい気持ちで
北都はクナイの心象を親切にも具体的に言葉にしてあげる事にする

 「ねぇ?月が大きくなって彼氏とか連れてきたら……どうする?」

見る間にクナイの時が止まる。
その顔が白から青に、そして青から赤に見る間に、はっきりと目まぐるしく変わっていく
それはもう…質問した北都自身が、人の顔色ってこんなに変わるものなんだと思う程に

 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 「ちょっ、痛い痛い!言葉にならないからって叩くの無し!
  少しは遠慮してよ!ゴメン!ゴメンってば!!ほらそんなに激しく叩くと!!
  だからって物投げない!バスケットだって危ないから!ああもうゴメンよ!
  まったくお父さんは心配……あたっ!!」

何やら乗っかっている膝の主が、さっきから激しく揺れている事に気がつき
娘の月は、穏やかに目を覚ます
ぼんやりした頭で、目を擦りながら話をなんとなく聞けば、何だか父親が母親に抗議してるようだ
かれし とか しょうらい とか何だか難しい言葉が出てるけど、何となく言いたいことはわかる
……だから、自分の気持ちを伝える為に母親の犬耳をもふもふと触る事にした

 「ひゃあっ!?……ああほら、クナイがあんまり暴れるから起きちゃったじゃないか!」
 「はぅ!ご、ごめんなさい月!起しちゃいましたか?まだ眠くないですか?」

心配そうに覗き込む親二人が面白くて、一番伝えたい言葉を伝える為に月は満面の笑顔で二人に抱きつく

 「わたし大きくなったら、おとーさんとおかーさんのお嫁さんになるー」

子と親、親と子
抱き付いて抱き締められて
その温もりを感じ、クナイは娘の言葉を胸に涙をこらえ、一層その手に力を込める


そう…………この温もりをずっと忘れないように