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リアクション
ひょんなことから……。
リゾート施設であるパラミアンは、悲しき男たちによる“テロ”のための足がかりとされてしまった。
彼らの要求は一つ、それは『バレンタインを撤廃させること』。
ナンパに来ていた山葉 聡(やまは・さとし)と辻永 翔(つじなが・しょう)も、この要求には呆れ返ったが、しかし、それでも二人は「黙っていられない」と、この騒動を鎮静化するために動き出していた。
「ここで事件を華麗に解決して、バレンタインで本命チョコがうはうは、よっしゃ!」
「奴らと動機がほぼ一緒だぞ聡」
そう言いながらプールサイドを駆けていく二人――
その一方で、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)はテロのことなどおかいまいなしに休日のプールを楽しんでいた。
事態を把握しつつも、平気だろう、と優雅に休日を続行している。
「まあ、催し物があるのは素敵だけど、それも演目によるわよね」
一応相手はテロリストなので大人しくしていようとする祥子だが見張られてばかりなのは我慢ならなかったのか近くを歩いていたテロリストにお使いを頼むことにした。
「ねえテロリストさん、貴方たちって私たちには危害を加えないのよね?」
そう聞かれたテロリストは使命感に満ちた声で堂々と答える。
「そうだ。あくまで我々の目的はバレンタインの撤廃だけだ。邪魔をするものが現れれば死神にならざるを得ないが、そうでないのなら何もする気はない」
「そう。でも見張られるのも肩が凝るものなの、悪いのだけれどジュースを買ってきてもらえないかしら?」
「ふむ、それくらいなら構わないぞ。そこのジュースでいいか?」
「いえ、トロピカルジュースを頂けると」
「……少し遠いな、ちょっと待っていろ」
そう言ってテロリストは持ち場を離れトロピカルジュースを買いに行った。
十分後。
「ほれ、トロピカルジュースだ」
「ありがとう。でも待っている間に小腹が空いたのですけど、アイスなど買ってきて頂けませんか?」
「あ、ああ。だが他の奴に頼んでおいてもよかったんじゃ」
「あなたに、お願いしたいんです」
まったく一切合切誰でもいいとは思っていてもテロリストをからかいたいあまり少しだけ上目遣いをする祥子。
異性に耐性がないテロリストは堪らず、しどろもどろしながらアイスを買いに行くの だった。
一方の祥子はトロピカルジュースを飲みながら、サンオイルでも置いてテロリストの反応でも伺おうかと次のイタズラを考えているのだった。勿論、ぬらせなどはしないこと前提で。
プールの中には白波 理沙(しらなみ・りさ)、ピノ・クリス(ぴの・くりす)とその友人であるルカルカ・ルー(るかるか・るー)がテロのことなと知らず存ぜぬで三人で遊んでいた。
三人ともテロのことを何かのイベントだろうと思って気にも留めずに遊び倒していたのだ。
「ひゃっほー! プールたのしいー!」
「ピノも落ちないように気をつけるんだよー?」
「うん、ルカちゃん」
テロにあっているとは思えないほどにプールを満喫している三人。そして三人は更に遊ぶためにスライダープールへと上る。スライダープールの原則として一人ずつ滑ることになっているので理沙、ルカルカ、ピノの順で滑ることにした。
「それでは一番理沙! いっきまーす!」
「よーし行くのだ我が友人よー!」
「ピノもすぐ行くからー!」
理沙は勢いをつけてスライダープールを滑る。思った以上に角度のあるスライダープールはスピードも抜群でかなりくねくね曲がりくねっているので楽しむ分には十分な代物だった。
しかし、それを見たテロリストの一人がルカルカの元へとやってくる。
「おい、さすがにそこまで遊ばれるとは示しがつかんからこっちに」
「ん? お兄さんもやりたいの? 仕方ないなぁ」
「いや、じゃなくて。お、おい! 押すな! お、俺はおよげなっ」
「れっつごー!」
下の理沙が既にプールの脇にいるのを確認したルカルカは嫌がるテロリストを無理やりスライダープールへと押し込み滑らせてしまうのだった。
泳げないテロリストは途中の道で絶叫を撒き散らして下で盛大に水しぶきを上げ、泳げないながらも必死にもがきなんとかプール脇で一命をとりとめたのだった。
「よーしそれじゃ次は私だー! ひゃっほうっ!」
ルカルカも二人に続いて極上の勢いをつけて滑り出す。理沙よりもノリノリで体を揺さぶりながら滑るため道中も盛大な水しぶきを上げながら楽しんで滑るのだった。そしてラストのピノの番。
「わーい、いくよー!」
小さいながらもできるだけ加速をつけ滑りだすピノ。しかしピノは残念ながら泳げないというプールにおいて残念すぎる身体能力をマスターしていたのだ。
案の定滑り終えると水しぶきを上げそのまま浮いてこなかった。それを回収するため既にスタートしていた理沙のライフセイバー並みの救助により事なきを得たのだった。溺れそうになったピノはというと。
「いやー楽しかった! もう一回もう一回!」
と溺れそうになったことなど忘れて無謀にももう一度を要求しているのだった。
「いやいや、一回休憩しようよ」
「そうだね。私もゆっくりピノちゃんをもふりたいしね!」
というわけで一度休憩を取ることにした三人。プールから上がり休憩できそうな売店を探すことに。しかし売店の場所がわからなかったルカルカはそこにいたテロリストに売店の場所を聞くことにしたのだ。
「すいませーん。この辺で座れる売店とかありませんか?」
「ん? あっちの方にあった気がしたが……」
「お、ほんとだ! ありがとうございましたー」
「あ、おいっ。あんまりうろうろす」
「ん?」
「ぐほっ!」
テロリストが宙を舞う。鍛え抜かれた軍人であるルカルカの反射的な攻撃に何もできずどこか遠くへ飛んでいってしまった。
「あれ、さっきの人もういないや。どこ行ったんだろう……まあいいか」
「ルカルカさん、早く行きましょう?」
「うんっ……あっ! 聡だ! おーい、聡ー!」
「おお、ルカルカじゃないか。元気してるか?」
辺りの状況を調べていた聡と翔を見つけたルカルカは聡に声をかける。それに理沙もルカルカに続く。ピノは今もなおルカルカに抱かれもふられ続けている。
「おーおーまた派手にやったなぁ……あんまり痛めつけないでくれよ? 曲がりなりにもあいつらテロリストなんだから」
「テロリストぉ? 誰が?」
「そこで伸びてる奴とあっちで伸びてる奴と、プールなのに迷彩柄の服を着ている奴ら全般だな」
「それ、本当?」
理沙が尋ねると聡が首を縦に振る。それをみたルカルカがこう言う。
「マジで? ……んでも別に遊んでてもいいよね? 私たち逃げようってわけじゃないし」
「まあ、いいんじゃないか? あんまり挑発しなければさ。んじゃもう俺と翔は行くから気をつけてな」
「えー! 一緒に泳ごうよ、翔君もさー」
「そうだよそうだよー」
二人の誘いに折れそうに聡だったが翔の背中ビンタのおかげで我を取り戻し更に状況の把握をするため三人と別れるのだった。
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