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リアクション
「おお、おお。きよるきよる、次から次へと死臭を放って死者がきよるぞ」
崖の上で嬉しそうに、楽しそうにしてゾンビたちを見届けているのは鵜飼 衛(うかい・まもる)だ。ゾンビの群れを誘導してこの隘路へと来ていたのだった。
その真ん中の地点には落とし穴が設置されていた。その中は大量の燃える水と「ルーン」技術で作った【火術】の符がてんこもり。
ゾンビたちがただただ進んでいると先頭のゾンビが落とし穴に引っかかる。それを見た衛はすかさず【火術】で符を起爆させる。
落とし穴内部はあっという間に火炎地獄とかした。後退するゾンビだったが、後ろからバイクに跨って攻撃してくるメイスン・ドットハック(めいすん・どっとはっく)に火炎地獄へと叩き落されるのだった。
「さっさと落ちた落ちた。あんまり生きてもいいことないけー、とっとと塵に還りー」
後続のゾンビたちも全て落とすメイスン。それを上から見て、高らかに笑う衛。
「カァーッカッカッ! やはり死体は火葬に限るわ! まとめて塵にしてそこを墓穴にしてやるわい!」
しかし、見物するのに夢中だった守は崖の上に上ってきたゾンビに気づかずにいた。
「おお? 上にゾンビが来てしまったか。油断したのう!」
それを見たメイスンもすぐにバイクで引き返すがとても間に合いそうではない。万事休す。
「危ない!」
そこに駆けつけた椎名 真(しいな・まこと)が改造した自走式デグでもってゾンビたちを攻撃。怯んだゾンビたちに衛もすかさず【火術】で攻撃。後ろからきたメイスンも合流して、崖の上にいたゾンビたちは一掃される。
「……アホ、調子乗りすぎなんじゃー。衛は弱いんじゃけー、もっと慎重にいかんとー」
「それもそうじゃのう! カカッ、しかし助かったわい。戦争処女でもあるまいし、少々はしゃぎ過ぎたようじゃ! 助かったぞい!」
「いえ、無事で何よりです。あとその自走式デグ使ってください、役に立つと思うので」
「いろいろ迷惑かけてスマンのー。助けてくれて、ありがとなー」
「それよりも、ここが平気そうになったらすぐに像周辺に戻ってきてくれる助かります。あそこが一番きついので」
「そうかそうか、ならここにいるやつらにお礼をしてから行くとしよう!」
衛はまた高らかに笑いながら残ったゾンビを火炎地獄へと招待するのだった。
衛とメイスンを残して、二つの像のほうへと戻る真。その隣にはパートナーの彼方 蒼(かなた・そう)がいた。
「自分のデグは役に立ったのかなー?」
「ああ、ちゃんと人を守ってくれたよ」
「うわーい! まかいぞーしたかいがあったよー!」
「そうだな、それじゃ早く像のところへ戻ろうか」
「……ゾンビこわいなぁ」
「大丈夫、必ず俺が守るから」
「ほんとうー?」
「ああ、約束するよ」
「なら平気だよー! 頑張ろうー!」
元気になった蒼と共に懸命に走る真。その際に、改造した画鋲もゾンビが沸いてきそうなところにまいておく。
「画鋲は時間がなくて誰にも渡せなかったな、でも仕方ない。やれることをしないとな」
「にーちゃんの友達たち、大丈夫かな〜?」
「ああ、あの人たちなら平気だよ。殺しても死ぬような人たちじゃないから、それよりも今はディフェンダーの皆を支援しないと」
しかし、二人の行く手をゾンビが遮る。数は少ないものの今まで主力にしていたデグはない。
「うう、怖いよにいちゃーん」
「大丈夫、さっきも言ったろ? 必ず守るって」
「う、うんっ」
襲い掛かるゾンビたち。それを【お引取りくださいませ】で迎撃する真。
「執事たるもの、守るときは守るものだ。覚えておくといい」
「うああ、にいちゃんかっこいいー!」
見事に伸されたゾンビたちを尻目に再び走り出す。真たち。
そして臭ってくる腐臭。これから始まる最後の戦いに、意を決して真は飛び込む。
「大丈夫ですか!」
ようやく像周辺にたどり着いた真が叫ぶ。
「大丈夫じゃありませーん! きつすぎますよー!」
そう叫ぶのはサオリ・ナガオ(さおり・ながお)だ。せっかく作った簡易的な陣地もゾンビに次々と突破され、先ほどからはわわがとまらないでいたのだ。
「はわわ……もうむりですわー! こんな何もない陣形では持ちこたえることなんてできませんわー!」
発狂寸前のサオリに真が声を掛ける。
「諦めないでください! 夜明けはもうすぐのはずです!」
「……本当ですか? 夜明けはもうすぐですか?」
「はい、それを信じて皆戦っています。だからあなたも、諦めないでください」
「……そう、ですわね。先頭のゾンビには陣地を突破されたものの、後続のほうはまだその名残に苦しんでいるでしょうし、これだけディフェンダーの皆様がいれば後方支援だってできるはずですわね」
「俺も及ばずながらフォローします、だから最後まで戦いましょう」
「はいっ、頑張りますわ! 夜が明けるまで私はここでゾンビを迎え撃ちますわ!」
真の真摯な訴えでようやく我を取り戻したサオリ。ありったけの補助スキルをかけて、攻撃を開始するサオリ。
「私は一人では弱いかもしれない、けれど今は皆さんがいますわ! だからこそ、戦えるのですわ!」
力強く叫んで【クロスファイア】で攻撃するサオリ。その目にはもう諦めの色はなく、夜明けが来ることを信じ戦い続ける、決意の色が表れていた。
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