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リアクション

「さーって、オレもそろそろ逃げるかな」
 既に3名の選手が脱出を果たし、頃合いと見た国頭が呟く。
 先程まで戦っていた椎名は執拗な足攻めと角南名を削った結果、暫くは邪魔できそうにない。
 他の選手に関しても、各々が戦っている為こちらに注目はされていない。逃げている最中に阻止してくる者はいないようであった。
 コーナーから金網を上ろう、と考えた時であった。
「……痛ってぇー」
 雪崩式喉輪落としのダメージから回復した梓紗が起き上がる。
「ん? なんだ? やるのか?」
 そして国頭を目にすると、構えて戦闘態勢に入る。
(こりゃ見逃してくれそうにもないか……さて、どうしたものか――ん?)
 目の前の梓紗を見て、国頭の頭にある考えが浮かび、構える。
 手刀を作ると、梓紗に向かって直接当てるのではなく、空を切るように振るう。
「秘儀! キマクの赤い雨!」
 手刀から放たれた【真空波】が、梓紗のさらしを切り刻む。
 身に纏う物が無くなり、梓紗の体が曝け出された。

『おぉっと!? パンツマシン選手の技で梓紗選手がポロリと来た! これ大丈夫!?』
『……大丈夫じゃないか? 何ていうか……女に見えないぜ?』
 ヴィゼントの言う通り、曝け出された梓紗の身体は筋肉質で、まるでボディビルダーのようなガチムチな肉体であった。そこに女らしさは皆無である。
『そっかー、誰得状況だから大丈夫かな?』
『いやルカ、あそこ見て見ろ』
 そう言ってダリルが指すのは、
「畜生、いい筋肉してるじゃねぇか……女にしておくのは勿体ねぇ……」
鼻息荒く梓紗の身体を見ているラルクであった。
『……あの程度なら問題ないんじゃない? とにかく、試合は続くわよ!』

「ふっ、またつまらぬ物を斬ってしまった……」
 国頭が勝ち誇ったように呟く。
 国頭の作戦は、衣服を破き羞恥による行動不能を狙った物であった。
 いくら【鬼神力】で変化しているとはいえ、女性である。衣服を破かれれば羞恥心という物が邪魔をし、行動が取れなくなる。そう思っていた。だが、
「こんだけかよ? んじゃ次はこっちの番な」
梓紗は少々の肌の露出どころか、全裸でも羞恥なんぞ感じないタイプの人間であった。
「え?」
 ぽかんとしている国頭の頭を掴むと、
「ふん!」
「んぐぉあッ!?」
梓紗がヘッドバッドを叩きこむ。
「いってぇー! 超いってぇー!」
 頭を押さえて国頭が転がりまわる。角が刺さり、マスクが血で滲んでいた。ヘッドバッドというより、角が痛かった。
「さーて、あたしも逃げるとするか」
「ちょ、ちょい待ち! せめてこれで隠しなさい!」
「えー? 面倒くせー……」
 リリィが慌ててタオルで胸を隠させ、漸く梓紗は金網を上りだせた。

「くぅ……いい筋肉してやがったぜ……たまらねぇ……」
 金網を上り切った梓紗の身体(というか筋肉)を涎を垂らさんばかりにラルクは見入っていた。
「よそ見しているとは随分と余裕ですね……!」
 そんなラルクに、真一郎が水面蹴りを仕掛ける。
「うぉっと!?」
 足を払われ、仰向けに転がるラルク。そこを逃がさず真一郎がドラゴンスリーパーで捕らえる。
 腰、首等を絞り上げられ、ラルクが呻き声を上げる。
「ラルク! 手を伸ばしなせぇ!」
 場外からガイが、何かを放り投げる。言われた通り、自由な方の手をラルクが伸ばすと、それが手に収まった。
「ふんっ!」
 そしてそれ――ゴングを、真一郎の頭に叩きつける。カン、という金属音が響いた。
「ぐっ……!」
 思わず技を解く真一郎。頭を押さえつつ、目に入ったのは、
「よっしゃ! こいつを食らえ!」
再度、自分に向かって手に持ったゴングを叩きつけてくる。
「ぐうッ!」
 何とか真一郎が両手でガードするが、金属製のゴングは十分な凶器としてダメージを与えていく。
「ほれ、追加のチョコレートですぜ」
 ガイが場外から少々小さい茶色いテーブルを放り込む。
「そいやぁッ!」
 それをキャッチして、ラルクが真一郎に叩きつけた。ガードは辛うじて間に合うが、衝撃でよろけた真一郎が膝を着く。
「いくぜぇ! でぇやぁッ!」
 好機と見て、ラルクが駆けると、真一郎の膝を踏み台にしてシャイニングウィザードを仕掛けた。ただし、当てるのは膝ではなく股間。シャイニングウィザードというよりシャイニングあてがい。
「ぐあッ!」
 ラルクの巨根……じゃなく巨体の勢いに、真一郎は仰向けにダウンする。
「ラルクー、そろそろ脱出しなせぇー」
「おう、そうだな!」
 ガイに頷くと、ラルクが金網に手をかける。が、上ろうとすると何かに引かれた。
「……やられっぱなしでは行かせませんよ!」
 まだダメージが残る真一郎が、ラルクのパンツを掴み邪魔をしていた。
「中々根性があるじゃねぇか! だが、俺はこのまま逃げるぜ……ふんっ!」
 ラルクが振り切る様に勢いをつけ、金網をよじ登った。
――ずるり。
「あ」
 結果、履いていたパンツが脱げた。

こっちはアウトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ラルク選手のポロリがキター! 何だありゃ! 足だ! 足が3本生えてるぜ!』
『落ちつけヴィゼント……しかし先程に続きまたか……放送事故ばかりだな』

 混乱する状況に気付かず、ラルクは最上段まで上がり切る。
「いよっしゃあ!」
 最上段で高々と手を掲げラルクが吼える。全く隠していない下半身に、観客から悲鳴にも近い声が上がる。
「ラルクー、浮かれるのもわかりやすが、とっとと降りてパンツを履いてくだせぇ」
「ん? ありゃ? 何で俺パンツ履いてないんだ? まぁいいか!」
 そこで漸く、自分が裸である事に気付いたラルクは恥ずかしがることも無く金網を降りていった。

『えー……ポロリ2連続という事故があったが、ここで梓紗選手とラルク選手がエスケープ成功だ! ……ところでダリルさん、ルカルカさんは何処へ行ったんだ?』
『ルカなら『真一郎さんにあんな物押し付けて許せん!』とか言って走っていったぞ、パイプ椅子を持ってな』
『……暫く戻ってこないでしょうね』
『だな』

「ぬぐぉぉぉぉ……」
 痛む頭を押さえる国頭の背後を、椎名が立った。
「さっきのお返しをさせてもらおうか!」
「おうっ!?」
 椎名が国頭にミドルキックを連続で入れていく。散々攻められた足が痛むが、顔を歪めつつも蹴りを放っていった。
「せぇッ!」
 顔面に、スピンキックがヒット。国頭の身体がぐらりと揺れた。
「食らえぇッ!」
 勝機と見た椎名は回転し、遠心力を使った裏拳を国頭に放った。
 裏拳が顔面に当たる――寸前、
「――へっ」
マスクの奥で国頭が笑い、しゃがんで避けた。
「頂きぃッ!」
 そして腕に飛びつき、体重で椎名を転がすと腕十字固めが完成していた。
 一瞬の出来事に抵抗も出来ず、椎名の腕が伸びる。
「ぐぅッ!」
 椎名の口から苦痛が漏れる。
「へっ、面白い事してくれるじゃねぇか」
 その光景を見て、場外の又吉が笑う。その横にはフラワシの姿があった。
 ヘッドバッドで苦しんでいたように見えた国頭は、その実又吉の【慈悲のフラワシ】により回復が済んでいた状態であった。
 苦しんだふりは、油断を誘うための罠。
「行け、パンツマシーン! そいつを倒すのにお前なら3分もいらねぇ! 5分で片付けろ!」
「増えてるじゃねぇかよ……っと!」
 国頭が可動域反対に肘を伸ばす。関節が軋み、靭帯、筋が悲鳴を上げる。
「さーてそろそろ決めるぞぉッ!」
 国頭が技を解き叫ぶと、痛めた腕を押さえる椎名を無理矢理引き起こし、頭を脇に差し入れてロック。
 そして痛めていない方の腕をハンマーロックで捕らえる。
「魔神風車!」
 気合と共に、国頭が椎名を真後ろに反り投げる。
 痛めた腕で満足に受け身も取れず、椎名は背中からリングに叩きつけられた。
「悪いな、結構楽しませてもらったぜ」
 起き上がれない椎名にそう言うと、国頭は悠々と金網を上り出した。

『あっという間の急展開だ! もう参加者の半分が脱出に成功しちまったぜ!』
『試合は突然動くからな……っと、ルカが戻ってきたようだ』
『ただいまー……ちっ、逃げ足の速い奴らだったわ……』
『どうやら失敗したようだな』
『えー、実況も人数が戻ってきた所で、試合も佳境に突入! 最後まで見逃すなボンバー!』

(残り選手数:6名)