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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 2

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 2

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第11章 アイデア術を考えてみようStory8

「あ、あれ?もしかして…!」
 前回受けた授業が2時間目だったことを思い出し、手にしているペンダントをディンスが見つめる。
「ディンス、どなたに聞いてみては?」
「ま、まずは、見取り稽古からダヨネ!」
「あ…そこの方、ディンスにエリメンタルケイジの扱い方を教えてくれませんか」
 トゥーラ・イチバ(とぅーら・いちば)がセレアナを呼ぶ。
「いいわよ。銀色の蓋のようなものを開けて、宝石を入れるの。で、効力を使う場合、祈るように唱えるのよ」
「うん、分かった。ありがとうネ」
 教えてくれたセレアナに、ぺこっと頭を下げる。
「後は術者集めダネ。ねぇ、ディンスと組んでほしいヨ」
 座学の講義で学んだことを、実際に試してみようと魔性を探してる清泉 北都(いずみ・ほくと)たちに声をかけた。
「他に相手がいないんだね?」
「そうなんダヨ…」
「リオン、どうする?」
「困っているみたいですし、組んであげましょうか…」
 今にも泣き出しそうな彼女を放っておくのも、可哀想だと思ったリオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)がパートナーに言う。
「僕が裁きの章で、リオンが哀切の章を使えるけど。それでいい?」
「十分ダヨ」
「その前に…、トゥーラさんに聞いておきたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「意味が通じれば、ある程度スペルが異なっても大丈夫だと、先生が仰っていましたが。途中で噛んだりしたら効力はどうなるのでしょうか?」
「焦ったり、言葉の言い間違えが酷いと、やり直ししなければいないと思いますよ。ただ、チームを組んで行う場合、全ての手順を終えてから不発するよりも、やり直したほうが無難かと…」
「やっぱりそうですよね…」
 早口になりすぎたり、緊張などしなければ、ある程度はセリフを噛む心配はないだろう。
「清明も参加したいです!」
「大歓迎ダヨッ」
「よかったですね、清明」
 正直、清明と組んでくれる相手が見つからないんじゃないかと、焦っていたがディンスが快く向かい入れてくれた。
 自分もチームで行う術がどのような興味があるため、葛葉は離れた場所で見学する。
「祓魔系の術を考えてみたヨ。術名は、光は遮られぬモノ、ダネ。裁きの章で魔法防御力を下げてもらった後、哀切の章で祓う力を使ってもらうんダヨ。回復とか、抵抗力は宝石でサポートするヨ。じゃあ、皆。よろしくネ」
「汝、罪科を重ねし者。清き魂を妬み、邪なる刃を向けし罪。汝がその罪を認めるならば、我は汝の業の魂を洗い流し、清めてさしあげよう」
「闇を洗うは朱(あけ)の雨。我過ぎし後(のち)雲間より導きの光射し込まん。道開かれたるを知る時ぞ、今!」
 北都とトゥーラは裁きの章に触れ、詠唱ワードを唱える。
 トースター3号に憑いた魔性が、熱々の土の板をボェッと吐き出し、彼に向かって放ったが…。
 その土の板は彼の蹴りによって即、壊されてしまう。
 精神を乱されることなく、紫色の雨が魔性に降り注ぐ。
「暗き闇に潜む者よ、我は赦す者、汝らに癒しを与える者なり。右手に剣を左手に聖杯を、魂に光を。我の声に耳を傾けよ。我は汝を導く光とならん」
 リオンのイメージとは異なり、哀切の章は通常モードの光の嵐を発生させ、トースターの口に侵入する。
「(あれ…ちゃんとイメージしたはずなんですが?)」
 なぜだろうと不思議そうに首を傾げる。
 剣を光に換えるように考えたが、“剣の状態”に魔性が怯えて逃げてしまうため無意識にうちに、ブレーキがかかってしまったのだろう。
「(本だけでは、ほとんど効き目がないみたいですね…)」
 魔法防御力を下げられた魔性は、リオンの時は苦しそうに呻いていたはずだったが、章のない本のみの力を清明が試してみると…。
 ほとんど効き目がなかったらしく、びょんびょんと元気に跳ねている。
「次は私が、ペンダントの効果を…。あれ…?からっぽダヨ…。はっ!もしかしたら、宝石を持っていなかったかもしれないヨ…」
「試すのはこれでおわりかな?」
「うん、ごめん」
「北都、魔性がいなくなっていますよ」
「どこかに逃げちゃったのかな…」
 さっきまで跳ねていた者の姿がなく、どこかへいってしまったようだ。
「あの…。章がない本だけのスペルブックの効力は、あまりないのですか?」
「うーん、それだけだと厳しいかも。クラスは何?」
「プリーストですよ」
「バニッシュのスキルを習得していれば、リオンが使ってたような哀切の章が使えるよ」
「それってどこで得るのでしょうか…」
「んー…確か、深夜の特別訓練かな」
「あぁ、それでしたか。ありがとうございます!」
 適正がないわけじゃないと知った清明はぺこりとお辞儀をし、葛葉と共に立ち去る。
「この前のお返しダヨ」
 北都とリオンも傍から去った後、もらいっぱなしでいるよりも、疲れを癒すようなものをあげようとトゥーラに渡す。
「ありがとうございます。…ところでディンス」
 トゥーラは苺ドロップを受け取りつつ、真剣な眼差しで彼女を見据える。
「魔道具を確認せずにいたこと、言い訳はしませんね?」
 章を得ないであえてそのまま試そうとした者もいたが、それとパートナーの失敗は別だ。
「うん、私が悪い。なんかもう、ホントに」
 パートナーと一緒に実技を行おうと、楽しみにしていた者もいるのに、巻き込んでしまった。
「二度目があってはなりません。もし、君が―」
「でも、あきらめないからネ!次こそは成功させるカラ!」
「そ、その意気です。とにかく、気を引き締めていきましょう」
 今回は叱りつけただけで済ませたが…。
 同じようなことがあれば、いつも優しいトゥーラの笑顔が、鬼のように変るだろう。
 それはもうきっと、アメリカのイエローストーンが噴火するくらいの勢いかもしれない…。
 待ちくたびれて退屈し始めたハツネは、廊下の隅っこで寝ている静麻に忍び寄る。
「クスクス…眠って待ってないで、ハツネと「お人形遊び」しましょう♪」
「ん?お人形か…。人形はないが、影絵で遊ぶか?」
 ちょうどよい薄暗い空間だし、構ってやるならそれが無難かと、壁にペンライトを向ける。
 口にライトをくわえ、手でキツネや蝶の影絵を見せる。
「ハツネもやるの。ちょうちょうを狼がバクッて食べちゃうの」
「(ぇー、いきなり捕食されたよ…)」
「今度は猫?ハツネも猫やりたい。にゃーにゃー、兄妹猫なの」
 特に暴れる様子は見せず、静麻に遊んでもらう。
 ハツネのパートナーは、訓練場の中で学んだことをノートに纏めている。
 少女が暴れていないか結局、彼女の様子を見にくることはなかった。



「校長。魔道具ほど強力じゃ無くても、相手の邪魔を出来るような道具とかあるかな?」
 盾役になれるようなものがないか、樹月 刀真(きづき・とうま)がエリザベートに質問する。
「んー…剣で物理的な攻撃を受け流したり…とかでしょうかねぇ。でも…相手も魔法を使いますから、毎回それが出来るとは限りません〜。傷だらけになってしまうかもしれませんよぉ」
「―…傷だらけの刀真って……。可哀想っ!」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が想像してみると、パッと両手を顔を覆う。
「確定みたいに言わないでくれ。そして妙なフラグはいらないから、本当になったら怖いから!」
「でも、私たちの盾になってくれないと困るかも…」
 彼女のその言葉に、鬼の剣の花嫁と書いて“鬼嫁”という単語が刀真の脳内に出来上がった。
「我はいなくとも大丈夫そうな気がするのだが…」
 刀真がいるならよいのでは?と、玉藻 前(たまもの・まえ)が自宅に帰りたいオーラーを発する。
 今回も拒否しようとしたが、夜月が悲しそうな顔をするため、付き合っているだけだ。
「もし…、玉ちゃんがいなかったら刀真は、ああゆうことになって、そこでどばーんってなったり…どっかーんとか」
「そこまでなるだろうか?」
「ドッカーンってどういうことだ!俺、最後爆発してるだろ!!」
「コメディならありえそうだな。しかも次のページを捲ると、何事もなかったかのように復活している漫画のようにな」
「俺をどこまで弄ぶ気だ。どこまで落とせば気が済むっ!?」
「さぁ…。退屈しのぎの相手がいないのでな。犠牲者は1人いればよいだろう」
 気乗りせずに来たため、せめて刀真をからかっている。
「適任者は他にいるだろ」
「ふむ、我の目の前にいるようだが?漢という生き物は、昔から乙女の盾と決まってことだからな。―…冗談だ、そう睨むな」
「はぁ〜〜…。それで術のイメージとかは、ちゃんと考えてきたんだろうな?」
 パラミタ内海よりも深いため息を吐き、怒りを沈めて聞く。
「刀真、撮影を願いね」
「映像って俺が編集するの?」
「そうよ」
「いや、確かに『御神楽環菜鉄道記』の時はやったけどさ!」
 当然のように言い放つ彼女に、また睡眠不足にする気かと叫ぶ。
 編集した映像を再生しようと、列車の中で力尽きて眠った記憶が鮮明に甦る。
「だってスペルブックを使っているところを、自分で撮れないわ」
「…はいはい。わかったよ、やるよって…これ前回のも入ってるじゃねえか!?」
 しぶしぶ承諾し、他の映像が入っていないか確認すると、それも編集してほしい…と残してあるようだ。



 チームに参加する前に、使い魔と少し話しをしようと、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)がクローリスを召喚する。
「私に話したいことがあるよね」
 呼び出したクローリスは、授業で召喚に応じてくれた薄いピン色のサザンカを思わせる、若く美しい女性の容姿だ。
「あなたとのは主従関係でなく…。私と共に行動して、世間に迷惑をかける魔性を取り押さえる。そういったことをする仲間とかパートナーとかといった感じでもよろしいでしょうか」
「フフッ、それでいいのね」
 これからずっと共に戦う仲間でいてほしいという望みに、クローリスが頷く。
「ローリスという総称で無く、あなた自身の名前はありますか?」
「いいえないわ。好きに呼んでくれていいわよ」
「じゃあ、考えておくわね」
「あっ、ロザじゃないの!」
 話し声が聞こえ、駆け寄ってみると見知った顔の者がいる。
「使い魔か…素敵ね」
「あちこち手だすと、大変だぞ月夜」
「分かってるわよ、玉ちゃん。あ、待って!」
 立ち去ろうとするロザリンドを月夜が呼び止める。
「一緒に何か術を考えて、試してみない?」
「特にすることもないですから、いいですよ」
「わーい、ありがとう!」
 3人目の術者が揃ったが、最低でも後2人は必要だ。



「誰かと組まないのか?他の生徒は、結構ノリノリみたいだけどな」
「タイミングを合わせたりするんじゃないのよね」
 他人と連携してどうのこうのというものは、神威 由乃羽(かむい・ゆのは)は得意なほうはでない。
「知っているやつとかどうだろ?例えば月夜とか…」
「ぅーん…いればね。合わせ方とか考えてくれそうだし」
「由乃羽も来てたのね、私たちとチーム組もうよ」
 噂をすれば影…という感じで、話題になっている月夜本人が如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)たちの前に現れた。
「構わないわよ」
「ありがとう!これで必要な術者は後1人ね」
「俺は術者を守る役割だな…」
「刀真、盾仲間が増えたようだぞ」
 彼の背をポンッと叩き、玉藻が微笑みかける。
「それなんてもう、シールドチームかよ」
「む?ガーディアンブラザーではないのか。略してガブだ」
 玉藻の冗談に“なんかもう噛まれたような音じゃないか?”と刀真が顔を顰めた。
 今日は見学者としてきた魅音は、リオが裁きの章の扱い方を教える。
「ボクは慈悲の心を込めて、使うといいかなーって思っているよ」
 優しくしてあげたほうがいいよ、というふうに言う彼女に、リオは肩をすくめた。
 清らかな精神力に優しさだけが当てはまる…というわけでもないのでは?とリオなりに考えている。
 かといって危機感を感じさせ、憑いた器を破壊するようなことは、さけなければいけない。
「慈悲深き御霊の涙をもって罪を洗い流さん」
 裁きの章の力を試してみるが、発動せず不発してしまう。
 やっぱり水系統の術だと相性悪いのかしら?と首をかしげながらも、もう1度チャレンジする。
「天上より罪を見る慈悲深き御霊の涙をもって汝に罰を下さん。罪を悔い、行いを改めるものには罪を洗い流す慈悲の雨とならん。されど罪を悔いず、罪を重ねるものにはその身を穿つ無情の雨に転ずる。浄化の雨に身を焦がし、汝、自らの結末を選べ!」
 レジに憑いている酸の雨を浴びた魔性が金切り声を上げる。
「リオお姉ちゃん!?」
 参考にしようとシャーペンでノートに書き込んでいた魅音が、驚きのあまり目をぱちくりさせる。
 変形させれていたレジが普通の形状に戻っている。
「全力で術を使ったの?」
「滅してはいけないって聞いてるから、そんなはずないわよ」
「でも声も聞こえないし…」
「ジブンは傷ついタ、あァ、存分に傷ついたとモ。起こすなヨ、絶対起こすなヨ。仮眠ぐぅううすぅうゥ」
 突然、大声が聞こえたかと思うと、ぐーぐーと眠ってしまった。
「ラスト5人目!」
「何が5人目なの?」
 うきうきと嬉しそうに微笑む月夜から離れようとするが…。
「人数が足りないの。お願い、組んで!」
「(ふぅ、まったく強引ね)」
 即、腕を捕まれ拒否権がないように、リオもチームに参加することになった。