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七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

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七不思議 戦慄、ゆる族の墓場

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「絶対、政敏もここに来ているはずだ。見つけだして、一緒にラブラブで調査するのだよ。彩音、はぐれないでちゃあんと……、ああっ、もういない!?」
 背中に北斗七星の印を持つ黒狐の着ぐるみを着た綺雲 菜織(あやくも・なおり)が、あわてて周囲を見回した。
『――彩音、どこに行ったの?』
『――うーん、いろいろ見てるー』
 テレパシーでコンタクトを取ってみると、あっけなく彩音・サテライト(あやね・さてらいと)の思考が帰ってきた。
『――大丈夫』
『――大丈夫だよ』
『――何かあったら、心の中で叫びなさい。すぐに行くからね。捜し物を見つけたら、合流しましょう』
『――はーい』
「どうかしたのかい?」
「ううん、なんでもなーい」
 スカーフェイスの虎猫の着ぐるみに訊ねられて、子供ライオンの着ぐるみを着た彩音・サテライトが元気に答えた。その動きにパクパクと口が動く度に、キラーンと目が光る。無駄に凝ったギミックだ。
「じゃあ、もっといろいろ見て回ろうか」
「うん。がおー」
 ぱくんと虎猫の腕に甘噛みして、彩音・サテライトはくっついていった。
 
    ★    ★    ★
 
「さあさあ、いらはい、いらはい。霊験あらたかな『ろくりんピック』グッズはイカガ? これを身につければアナタのゆるキャラ寿命も四年のびるワヨ!」
 なぜか、隅っこの方にある屋台でキャンディス・ブルーバーグが盛んにグッズ販売をしていた。
 豪華なろくりんくんの着ぐるみで、ろくりんピックのグッズを販売しているわけだが、実質売れ残りであることは一目瞭然である。
「このグッズを身につければあら不思議、推定一年と呼ばれるゆるキャラの寿命が、あっという間二十倍にのびるという寸法ネ。かくゆうミーも、このグッズを身につけていたおかげで、夏期ろくりんピック、冬期ろくりんピックという大波をみごとに乗りきったヨ。霊験あらたか、買って損なしネ。在庫稀少、早い者勝ちヨー」
「わあ、レアグッズだって。買おうよ、買おうよ」
 あっけなく欺されたピンクのウサギが、屋台にむかって走りだそうとした。
「こ、これ、見るからに偽物アル。だいたい、なんで、ゆる族の墓場でグッズなんか販売しているアルか」
 チムチム・リーが、あわててレキ・フォートアウフを羽交い締めにして止めた。
「やだー、買うー」
 キャンディス・ブルーバーグに怪しくおいでおいでされて、レキ・フォートアウフがジタバタと暴れた。
「しーっ、静かにするアル。ここはお墓アルヨ」
 チムチム・リーにたしなめられて、やっとレキ・フォートアウフが落ち着いた。
「ごめん。ちゃんと供養するんだったよね」
「供養には、このろくりんの繋がった数珠が必要ネー」
 すかさず、キャンディス・ブルーバーグがおいでおいでをする。
「ほんとー?」
「嘘アル。あんなのつけたら不謹慎アル」
 素直に信じ込むレキ・フォートアウフを再び三度チムチム・リーがとめた。これ以上ここにいるとろくなことがないと、あわててピンクウサギを引きずっていく。
「チッ。さあ、新たな、カモ、カモーン!」
 再びお人好しを求めて、キャンディス・ブルーバーグが声を張りあげた。
 
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「絶対、この中にあの巫女もいるはずだ。今度こそ捕まえて、全てを説明してもらう」
 山犬の着ぐるみを着た源 鉄心(みなもと・てっしん)が、見知った巫女のゆる族はいないかと周囲を探索していた。
「でも、あの巫女さん、最後に爆発しておりませんでした? 今ごろバラバラですわよ」
 まるまるとしたひよこの着ぐるみを着たイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が、源鉄心に聞き返した。
 それを聞いたチュチュ姿の白ウサギの着ぐるみを着たティー・ティー(てぃー・てぃー)が、バラバラという言葉で想像してしまい、ひーっと小さな悲鳴をあげる。
「いや、あれこそ微塵隠れに違いない。俺たちの目をくらますために、自爆したように見せかけたんだろう。その証拠に、あの後に着ぐるみ大行進が発生しているだろ。きっと、あの巫女が先導していったんじゃないかな」
 クンクンと山犬の鼻先を左右に振って、源鉄心が答えた。
「そのくらい分かっていましたわ。ティーが怖がると思って、面白いから言ってみただけですの。それにしても、どうでもいいけれど、本当に着ぐるみって言うのは、この……」
 思わず、コロコロと地面の上を転がってしまいながら、イコナ・ユア・クックブックが悪態をついた。
「もう、嫌ですわ。暑苦しいし、動きにくいし、脱ぎます!」
「こ、こら、そんなことしたら……」
 ゆる族じゃないとばれてしまうと、源鉄心がティー・ティーと一緒にイコナ・ユア・クックブックを止めようとした。ここで正体がばれてしまったらどうなるのか分からない。
 だが、ひよこ型の着ぐるみは、手が背中のチャックまで届かなかった。そのため、自分からは脱ぐことができない。
 これなら大丈夫と、源鉄心が、ほっと安堵の息を吐いた。
「でも、イコナちゃんじゃないけれど、確かに、この着ぐるみというのは暑くて、そのう、身動きがしにくいですね」
 何やらもぞもぞしながら、ティー・ティーが言った。
「まあ、考えてみれば、ゆる族って言うのはいろいろと凄いよな。食事のときとか風呂とかトイレのときはどうしているんだか」
 イコナ・ユア・クックブックを玉転がしのようにして運びながら、源鉄心が言った。
「トイレ……」
 その言葉に反応して、チュチュ姿のティー・ティーがまたもぞもぞする。
「嫌なことを……」
 百物語会のときのことを思い出して、イコナ・ユア・クックブックもコロコロした。
「ん? どうかしたのか、二人とも。もっとよく調べるために、人の多い中央へ行くぞ」
「いえ、その……、あの……。ええ、もう大丈夫です」
 源鉄心にうながされて、もじもじしていたティー・ティーが、急にシュンとなっておとなしくついていった。