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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!

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第3章 お披露目会 メイド編

 ―ストラトス・ティンパニを手に入れた途端モテモテな人生になりました―
 お披露目会当日。
 この日も富豪は巨乳や眼鏡、獣耳のメイドに囲まれ上機嫌だった。
「……そこでワシは巨万の富を得てな。更にそれを元手に得意の目利きを生かしてあるモノを仕入れてな……」
「おじさま、本当にお金持ちなんだね。すごーい☆」
 眼鏡に獣耳メイド姿の騎沙良 詩穂は、延々と続く富豪の自慢話に瞳を輝かせて聞き入っていた。
 伝説のメイド服とご奉仕ブーツの隙間から、絶対領域がチラチラと発動しその破壊力無限大。
「ぶふふふ、それほどでもあるなぁ〜」
「うふふ」
 細い腰に回された手に眉一つ潜めず詩穂は微笑む。
 本当は「巨乳で眼鏡で獣耳なメイドさんあんて存在するわけがありません!」と、折を見て富豪を説教したいと思っていた。
 しかし、まがい物とはいえこれだけ巨乳眼鏡獣耳メイドが集まってしまうと、全く説得力がない。
 そんな詩穂の葛藤には気づかず、富豪はどんどん調子に乗って口を滑らせてゆく。
 カレン・クレスティアの「どうしたらオジ様のような素敵なお金持ちになれるの?」という質問にまんまと乗せられ、べらべらと今までの経緯を話し始める富豪。
 脅し、詐欺、不正…… 
 話の中に、隠しきれない悪事が見え隠れしている。
「……心の広いワシは、その家族に金を貸しつけてやったのだ。ほんのはした金だがな。まさかそれが何十倍にも膨れ上がるなんて、奴は思ってもみなかっただろう……」
「えぇ〜、オジ様ってば悪い人〜。でもそれもス・テ・キ。もっとお話し、して?」
(よくやるわ……)
 カレンの甘い声を聞きながら、少し離れた所でジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が呆れた様子でそれを見ている。
 それでも目を離さないのは、カレンのことが心配だというのもあるのだろうか。
「惚れ惚れしますわ。でも、その方にそんなに借金を負わせてメリットがあったのでしょうか?」
 富豪の肩にさりげなく手を置き、リース・バーロットは小首を傾げる。
「ぐふふ。実はな、そいつは金は持っていなかったが別のお宝があるという噂があってな」
「お宝、ですか?」
 リースの手を取ると、舐めんばかりに顔に近づける富豪。
 表情を変えずに繰り返すリース。
「それが、あのストラトス・ティンパニでな……っと、この話はこれで終わりだ」
 さすがにしゃべりすぎたと気づいたのだろうか、話を打ち切る富豪。
「えー、もっと聞きたいな。ねぇ」
「うんうん。もっとオジ様のこと、知りたいな」
「私も、とっても興味がありますわ」
「……ぐふふふふ。仕方ないなぁ〜」
 メイド達の懇願に、押えきれない笑みがこぼれてくる富豪。
 彼女たちの目論み通り、再びたっぷりと情報を吐き出してくれた。

(どうだアニス。奴の真っ黒なこと)
(それより和輝、それ似合ってるね)
(ば、馬鹿っ。今は関係ねぇだろ!)
(んー?)
 富豪たちから少し離れた所にいた二人のメイドが、ひそひそと何事か話し合っていた。
 メイドは佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)
 佐野もまた、金持ちの好みのメイド姿で近づき、色々情報を得ようとしていた。
 眼鏡とエクステをつけ、凛とした立ち姿のメイド。
 しかし押しに弱そうな内面も併せ持つ、マニア好みの逸品だ。
 同様の考えのメイドがたくさんいることに気づいた和輝は、情報を引き出すのは彼女たちに任せ、彼らはすぐ側で情報収集に勤しんでいた。
(いい情報が手に入ったぜ。これを、各組織に渡したらそこそこの報酬をゲットできる)
(んぅ? あの人たちには教えてあげないの?)
(……あー。多分、必要としてるだろうからな。なんとか知らせてやるか)
(そうだねー。和輝のその恰好も見せてあげたいしね!)
(……いや、それはいいんだ別に)

「はい。それではこちらのストラトス・ティンパニはとても貴重なものなのですね」
「ぐふふふふ。そうそう。このワシでさえ手を尽くさなければ入手できなかったんだからな」
「それほどまでして手に入れるということは、余程音楽がお好きだったのでしょうか?」
「いやいや、とりあえず手元に置いてみたが、どうしてもこれが欲しいという人がいたら譲ってやっても構わんよ。勿論、相応の対価はいただくがな……こんな具合にな」
「きゃっ!」
「おやおや、どうしたね?」
「……な、なんでもありません」
 メイド服に獣耳をつけて富豪を取材していた六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、不意に富豪から伸ばされた手が自分のお尻に触れたことに一瞬動揺するが、すぐ平静を装う。
(こ、これもお仕事のためですから……うぅ、アレク……)
 少し離れた所で優希を見守っているアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)をちらりと見る。
(ユーキ! あ、あいつ……殺す!)
 アレクセイの方も、外面はなんとか保っているものの、腸の中は煮えくり返っていた。
 メイド姿の優希を堪能していたものの、彼女を毒牙に……いや、妙な目で見ることすら許しがたい。
 しかし、仕事のためとがんばっている優希を立て、彼もなんとか堪えていた。