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漂うカフェ

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漂うカフェ

リアクション

 夕焼けの色が濃くなって夜の色に変わり始める頃、扉の「OPEN」のプレートがくるりとひっくり返る。
 カフェ・マヨヒガのツァンダ営業初日が終わった。
「お疲れ様でした〜」
 鈴里と萱月は、地下の機械の閉店前点検のために降りていった。店内には、イーリーとラナだけが残っていた。

 イーリー曰く「迫る危機によって一時的に危機回避のための特別モードが発動してしまったのであろう」機晶姫の二人は、元の「にこやかなカフェ店員」に戻った。その、文字通り「切り替え」たような変化に、あの場にいた契約者の何人かは戸惑いを隠せなかったくらいだった。
 完全に普段の彼らとは「モード」が違うのだろうか、まるで二人は、鏖殺寺院の襲撃のことを忘れてしまったかのように、カフェ業務に戻っていき、皆を面食らわせた。同時に、彼らが「そのように作られている」
ということを強く、楽しげに立ち働く二人に感じた者も少なくなかったらしい。
「ダリル君も言っていたが、近いうちに二人をメンテナンスするべきだと思うのだ」
「それは、例の、彼ら自身も気付いていない性能を調べるため、ですか?」
「それもある。少しはそう言ったものが見えてこればいいとは思っている。そう上手くいくかは分からないがな」
 イーリーは、彼のために鈴里が淹れてくれたコーヒーを一口すすった。
「しかし、どのみち二人とも、長い年月まともにメンテナンスを受けていないだろう。研究のことは置いておいても、メンテナンスはするべきだ。だが……」
「……そのためには彼らの信頼を勝ち得なくてはならない、というわけですわね」
 二人が不安を感じれば、店の存在が危うくなり、またどこかへ漂って行ってしまうかもしれない。イーリーの言いたいことを酌み取って、ラナは頷く。
「エース君が言っていた。植物は『何かの不安』に煽られて、過剰に機晶回路からエネルギーを摂取して急成長したのだと。あの回路には……客には笑顔しか見せない二人の『不安』が流れ込んで、暴走を誘発するのだろうか……」
 鏖殺寺院に目を向けられるようになる前、初めてこの店を転移させた、機晶姫たちの不安のもとになったものはいったいなんだったのだろう。そのように彼らとあの回路を設計したのは、一体どんな人物だったのか。機晶姫たち自身には、自覚できる記憶があまり多くはないらしかった。この店の起源にまで遡って、研究者として調べたいことは沢山ある。けれどそのためには、彼らとより強固な信頼関係を築く必要がありそうだ。
 先は長いかもしれない。そう呟いて、店の天井を仰いだイーリーに、
「けど……」
 ラナが、静かな調子で語りかけた。
「二人の不安によって、この店が漂流するのだとすれば……今日の契約者たちのような、善意の協力者の力を頼っていいのだと、二人が信頼することを覚えた時には、店はこの世界に定着することができるかもしれませんね」
「……。そうだな」

 やがて、双子の機晶姫が階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。
「イーリーさん、ラナさん」
「よかったら、アイスクリーム召し上がりませんか?」

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 参加してくださった皆様、ありがとうございます。お疲れ様でした。
 またしても長々と書いてしまいました……
 しかも、場面がとびとびになって読みにくくなってしまっています……
 こちの想定を超えてくる皆様方のアクションに目からうろこを落としつつ、なるべく沢山応えたい、と、自分なりに頑張った結果……
 何故かコミックリリーフ要員が増えてしまったという(汗)
 うちの子こんなじゃない! とお怒りの方々……まことに誠に申し訳ありませんでした(平謝り)。

 何人かの方に、称号を贈らせていただきます。大したものではありませんが、ご笑納ください。
 本当は全員の方にお送りしたかったのですが……なかなかいいものが思いつかなくて……ごめんなさい。

 まだまだ精進する必要があると痛感する今日この頃。
 またどこかでお付き合いいただければ幸いです。