イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

リアクション公開中!

【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ
【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

リアクション

 
【ばっく・とぅー・ざ・ふゅーちゃー OR ふぁーざー?】
 
 
少し前の話をする前に……いきなりだが、俗っぽい話をさせてもらう
地球およびパラミタでも様々な小説や物語なんかがあって、いろいろ読み倒されているので
いわゆる【王道】というジャンルは多く存在する

空京……しかも法学部に現在所属し、昔はちょっと言えない特殊な部隊などにいて
普段は強さを求めて【化けも……もとい【達人】の先生の元で修練を積んでいる日常
そんなこの俺シオン・グラード(しおん・ぐらーど)だって本くらいは余暇の楽しみで読む

そんななかで本人の好き好みは別とした設定で
突然自分に妹ができるなんてものが【王道】にはある
まぁ大概は腹違いだったり再婚相手の連れ子とかそんなんだったりとか

突然共に闘う事になった異世界の子の素性を隠すため……なんてものあるけど
まぁそっちは従姉妹が多いのでノーカウントにする

ああ悪いか漫画やライトノベルだって読んでるよ!流行ってんだから!


……………で、話を元に戻して
なんでそんな事をいきなり話し始めたかというと
そのどれにも属さないケースで歳の近い親族ができる流れを知ったからだった

しかもリアルで……今目の前で


 「私……未来のあなたの娘なんです」


いきなり会って間もないう歳の近い少女に
人気のない場所まで連れてこられ開口一番のこの言葉
そこで上みたいに思考が働かないほうがおかしいと思う……いやむしろ普通は止まるだろう
とりあえず突然の言葉に『は?』という言葉すら返せなかった俺だが
このままでは埒があかないので、何か切り返そうと返事をしてみることにした

 「…………えっと、凛さん……だっけ?
  【未来】とか【娘】って言葉の意味、わかってる……よね?」
 「わかってます。そっちこそ確認するほど馴染みのない言葉なんですか?」
 「いや、俺じゃなくて君が知らない位のおばぁぁぁぁ!?」

ちょっと恥ずかしそうに話していた目の前の少女の顔が豹変し、言葉の棘が強くなり
正直に誠実に話そうとした俺に鉄拳を繰り出してから
その後、言葉と体両方を駆使しすぎて、ちょっとじゃ思いだせないような喧嘩があった

それが彼女凛・グラード(りん・ぐらーど)との出会………だった気がする(やや弱気)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


その後、服装の一部や師匠譲りの技と強さや
俺しか知らない記憶を少し知ってたりで俺自身がようやく納得し
仲間達に紹介して今に至るのだが(そういや皆は喧嘩一つしなかったな、不思議だ……)

その後もしばらく【未来の子供】というインパクトに気を取られてしまい
なぜ彼女が【未来から父に会いにやってきた】のかを聞き忘れ、そのままなんとなく流してしまっていた

そんなわけで、今度は俺があらためてそれを聞こうと凛に話しかけたところ
イベントの観戦もそこそこ、人気のない河のほとりの広場に連れてこられたというわけだ
到着するなり、こちらに背中を向けたまま河を眺めていた凛だったが、程なくそのままで話しかけてきた

 「………で、私の何が聞きたいっていう話でしたっけ」
 「だから、未来から俺達に会いに来た理由
  凛の言う事はもう信じる事にしたけどさ……過去の親に会う理由だってあるだろう
  まぁ過去の父親……っていうか、俺を笑いに来ただけかもしれないけど」
 「そんなもんだって話したじゃないですか、父さんにもお母さんにも」

とぽん……と河に小石を投げる凛の顔はまだ見えない
わざわざ場所を移動したくらいだから、不機嫌な時の【ツンギレ】モード位覚悟していたのだが
何度も小石飛ばしをしている姿は、無邪気以外の何物にも見えない

 「そうなんだけどさ、そんな理由なら飽きたくらいで帰るものだろう?
  みっともない親なんか見るものじゃないし」
 「そんなに帰って欲しいんですか?」
 「あ、いや、そんなんじゃなくて……元の世界に戻りたいって思う時はないのかって事
  確かに君の言う【お母さん】と一緒にいるときは楽しそうなのは感じる
  あの【師匠】の前で緊張してる時でもそう見える……俺の印象だけどね」

凛からの返答はないが、不機嫌な様子も感じられない
とりあえずよく言われる俺の【オンナの繊細な心がわかってない】何かが地雷を踏んでない事を確認しつつ
俺は話を続けることにする……凛が【母親】と言っている【恋び……【パートナー】が俺に言った言葉を

 「ただ……時々、辛そうに見える……俺とあいつが話してる時、そんな顔をしてる時があるんだ」
 「よく見てますね。そういうのお母さんの方が得意なのに」

…………わかってるじゃん

 「まぁね。だけどこの次は正真正銘の俺の言葉
  凛……キミ、魔物に時々怯えてないか?」

どぼん……ひときわ大きい音が河に響き渡った
相変わらず後姿の凛の手が……そこで止まっていた

 「怯える……ちょっと違うか、そんな物に恐れを見せるキミじゃないもんな
  何というかさ……魔物というものに触れて、自分の何かを揺さぶられるのを恐れてる
  そんな気がするんだ……違ったらごめん」


 「鈍そうに見えて、よく見てるんですね、特にそういうとこ
  いや、戦いに関わる事だからか……お師匠の弟子だけあります、うん」

人一倍強がりな分、腕力つきな反論を半ば覚悟して言ってみた言葉だった

けれどそのどれでもない言葉と行動とともに、ようやく振り向く凛の顔に……俺は目を奪われた
戦いや悲しみや、いろいろ今まで積み重ねた彼女なりの時間の重さを感じさせる笑顔
だけど、その俺に向ける親しみの眼差しは、時間を越えて俺に繋がっている
それは現在子供のいない俺でもわかる、子が親を見つめる眼差しだった

 「父さんとは色々あったけど、お母さんとか私を受け入れてくれたから
  その嬉しさに言うのが辛くて……ちょっと甘えてました……でも言わないといけませんよね」

そのまま再び河の方を見つめ、凛は座り込む
俺も黙って隣に腰を降ろすことにした

 「確かに……私は魔物が苦手です、怖いんじゃない……襲ってきたら闘う自信はありますから
  むしろ逆……憎くて憎くて……自分が自分で無くなるような感覚があるんです
  師匠に教えてもらってる時でも無い感覚……その果てのない感じを……多分恐れてる」

ぎゅっと膝を抱えて座る彼女の手が強く握られる
その感情がどこから来るか、俺には分かる………そこに今までの彼女との記憶が頭の中で反芻される

俺と凛はよくやりあうが、なぜかそこから【近親嫌悪】の様な情が感じられないのが不思議だった
むしろ、凛自身の記憶と認識がこの時間の【俺】につながらない
あえて俺を【父さん】と言って自分自身に認識させてるような俺とのちぐはぐさ
俺だけじゃなく、母親と慕う【あいつ】に懐きながらも感じられるそれ
そして俺と同じ人を師匠にしながら、あの人のスタイルを色濃く持っている事……

その前からの違和感と今の話が交錯し、直観的に理解した言葉を……俺は凛に伝える事にした

 「お前の時間では……俺達はいないんだな、それも魔物に殺されて」

その言葉に彼女の返答はない……けれど、その沈黙が立派な返答だった
自分でも言いながら心が揺れないのにちょっと可笑しくなりながら言葉を続ける

 「キミが自分の事を証明するときに、俺達しか知らない事を話してくれただろう?
  キミの【お母さん】……あいつの親が魔物に殺されたという話……あれを言う時に少しためらっていた
  最初はあいつを気遣って躊躇したと思ってた……けど違うんだな
  未来の俺達の命を奪うのも……そいつだったんだな」
 「……こんな時だけ勘がいいんですね、凶悪すぎます」

膝に顔をうずめたまま、凛は静かに言葉を返してきた

 「アタリです。私は父さんとお母さんを殺させないためにこの時間にやってきた
  自分の力で二人を守れるとは思ってません、けど……その戦いに私が加わるのなら
  ……せめて3人なら歴史が変わるかもしれない、父さん達と同じ位闘える力をもった今の自分なら……」

心底勝気な性格なのか、膝の中で強く鼻をすする音を鳴らした後、彼女は俺を見上げる
その眼差しは確かに俺や【あいつ】しか知らない強い光を放ち、俺はようやく納得できた
ああ……本当に凛は俺達の娘なんだな……と

 「ずっとずっと先になるけれど、いずれその日が来るのは避けられないのは確かです
  お願いです……その時にどんな事があっても、私だけでも助けようなんて思わないで!
  みんなで生きて、みんなで戻ってくる……それだけを考えて下さい」
 「わかったよ……この時間まで俺達に逢いに来たキミの想いを無駄にはしない
  今はこんな父親だけど、それだけは約束する……俺の剣にかけて誓おう」

俺なりの約束の言葉に、笑って頷く凛……親らしい事をするってこう言う事なのだろうか
なら俺なりに元気をつけてあげたいと思って、俺は言葉を続けた

 「それに、本気でその意思を貫きたいなら、もっと強くならないとな
  俺の半分以下のレベルの強さで、守るなんてできっこないんだしね♪」


ビキリ……と、凛の頭のあたりで何か音が聞こえた気がした

気のせいかな?……と彼女の頭を俺が覗き込むのと
彼女から鮮やかなアッパーが俺の顎に炸裂するのが同時だった
ギリギリ意識を駆られそうになるのを踏みとどまり、俺のスイッチもオンになる

 「な……何しやがるこの暴力オンナ!」
 「それはこっちのセリフですっ!な〜にを偉そうに!師匠に埋もれて影薄い癖に!」
 「この!人に言ってなならない言葉があるのを……」
 「悔しかったらその半分以下のレヴェルのパンチ位よけてみなさいよこの鈍感親父」
 「上等だ!その羽根っ返りを黙らせる現実を味あわせてやる!」
 「やれるもんならやってみろ!【アンボーンテクニック】の真髄みせてやらぁ!」
 「ならこっちも【歴戦の必殺術】ってのを………!!」



閑話休題……30分後

まったくスポーツマンシップの欠片もないまま、お互いの全力を出し切り
河原にお互い足を向けて大の字になっている俺達がいた

 「…………いいパンチ持ってんじゃん」
 「あんたもね……凶悪すぎだっての、あの蹴り」

完全に言葉使いも同じになって、お互い負け惜しみを言ってやる
けど、なんだかお互いを褒める感じになってしまい、なんだか可笑しくなってしまった
それは凛も同じらしい……それからどちらが先たったかは覚えてない

 「「あは……あはは……あははははははははははははははははははははははははは」」

腹の底から笑い声を二人であげる【お母さん】が見たら呆れるに違いない
何かどうでも良くなったのか、やり方はともかく全力を出し切ったことでスッキリしたのか
妙にすがすがしい気持ちになって、俺は身を起こす……向こうも身を起こしたようだ
そんな暴力娘の前に、俺は俺なりの【親愛】感情を込めて手を差し伸べる

もうちょっと周りの【娘持ち】の親は真逆なくらい親馬鹿で
こんな喧嘩なんかしそうにないが……こっちだって【親】なんて未経験だから知ったこっちゃない
だいたい俺はこいつの言う【お母さん】と……け、けっ………けっこ………やめた

 「改めてよろしくな、可愛げのない【俺の娘】」
 「………うん、お父さん!」

耳まで真っ赤のまま、やけっぱちで出した手を
眩しい埃まみれの笑顔で【未来の俺の娘】は握り返した


この日から、俺達は正真正銘の【家族】になった