イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

リアクション公開中!

【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ
【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ 【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

リアクション


・生徒会執行部の日常 デート編?


「とりあえず午前の分は終了、と。会長、他になんかやっとくことある?」
 生徒会室では、会長の山葉 聡(やまは・さとし)と副会長の平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)が、先日終えたばかりの生徒総会で可決した議案をまとめていた。
「あとはメールボックスの『目安箱』のチェックだけ頼むぜ。連休入る前に、面倒事がないかどうか確認しときたいからな」
 レオはメールボックスを開き、その中にある「目安箱」のフォルダをクリックした。学院の生徒からの意見・要望は生徒一人一人が所有している学内情報端末から手軽に送れるようになっている。しかし送信の際には端末を通して生徒の学籍番号が通知されるため、今のところ生徒会に嫌がらせをする者は現れていない。
「いつもながら、新入生からの学院についての質問がほとんどだね。ヴェロニカが用意してくれたFAQは……っと。これに載ってないのがあったら追加しとく?」
「ああ、宜しく。あと、更新したらヴェロニカへの連絡も忘れないようにな」
「あれ、今日は来ないんだっけ?」
「今日は授業の後、そのままバイト先へ直行よ」
 レオの疑問に応じたのは、セラ・ナイチンゲール(せら・ないちんげーる)だ。
「わたしも予算申請書の確認したら出るけどね。金額変更希望が少ないことを祈りたいわ」
「まあ大丈夫だろ。新しく公認になったところ以外は、前年度の活動を元に見積もりを立ててるし、その額を変更してもらいたい場合はしかるべき理由を添えることになってるからな」
 その理由が正当かどうかは監査委員と生徒会で審査することになるため、申請が少ない方が助かる。というのが、生徒会としての本音だ。
「予算についての質問は、今日はないね」
 レオはひと通り確認を終え、FAQを更新した。その内容をヴェロニカにメールで送れば終了だ。
「これでよし、と。じゃ、お疲れ!」
 生徒会室を出たレオは設楽 カノン(したら・かのん)にメールを送り、待ち合わせをした。
(エントランスホールで待ち合わせ……ってのはこの時期やめた方がいいな。学食に入れなかった新入生がごった返してるだろうし)
 とりあえず正門前を指定した。この日は二人とも三限が空きであるため、時間には余裕がある。学院のキャンパスから出てもなんら問題はない。
「あ、レオー!」
 紫のショートヘアーの少女が手を振っているのが見えた。ドミニクだ。妹のマルグリットもいる。
「やあ二人とも。今日は来てたんだ」
「そりゃあヒュムーン調査隊の隊長にはなったけど、本分は留学生としての生活なんだよ。来れる時はこの通り、ちゃんと来てるからね」
 天学の女子制服を翻し、ドミニクがアピールする。
 レオがこの二人に初めて会ったのは、アカデミーに潜入していたときのことだ。顔見知りということもあって、留学直後は海京案内をさせられた。
「あ、そうそう。この前電話でレオに会ったって話をカー兄にしたら、レオによろしく伝えてくれって」
「カールも元気みたいだね」
 もちろん、と彼女が答えた。
「そりゃあね。なんだかんだで、カー兄はF.R.A.G.四部隊長の一角を担うほどの実力者だし。まあ、うちの第一位に負けた時は悔しそうにしてたけどさ」
「変(F.R.A.G.もアカデミーも、レオがいた頃とは大分変わった)」
「といっても、僕がいたのはほんの数ヶ月だし、あれから一年近く経ってるからね」
 小声ではあるものの、マルグリットの声はなんとか聞き取れた。
「そういえば、2月に来てなかった第一位ってやっぱりアイツだよね?」
「他に誰がいるっての。むかつくヤツだけど、今や実力は『ライセンス持ちと同等』って言われてるくらいだし。むかつくヤツだけどっ!」
「二回(大事なことなので二回)」
 確かに、あの『アカデミー最強』の性格を考えれば、ドミニクの気持ちも分からないでもない。
「特殊(第三位は少し特殊だとして、今はもう第二位と第四位も彼と大差ない。悔しいけど、私たちとは別次元。お姉ちゃんと私セットで、ようやく互角)」
「しかも、ジャンヌに限ってはイコンに乗らない方が強いってのが……ね。まあ、あの子は元々の所属が所属だから、化け物染みてても不思議じゃないよね」
「戻(あ、機嫌直ってる)」
 このままだとルルー姉妹のペースに巻き込まれてしまいそうなため、レオは足早にカノンの元へ向かうことにした。

「お待たせ、レオ君」
 正門前についた直後、背後からカノンの声が聞こえてきた。
「いや、僕もちょうど今来たところだよ」
 女の子を待たせることにならなくてよかったと思い、レオは昼食をとる店を探すことにした。散歩がてら、二人で話をしながら。
「この前いい店見つけたんだけど、行ってみる? ちょうど限定ランチもやってるはずだしね」
 海京で唯一フランス全土の料理を堪能でき、値段も手頃な店だ。
「それって確か……あ、これですね」
 カノンが手にしていたのは、昨日発行されたばかりの天御柱学院通信(天通)のゴールデンウィーク特集号だ。レオが行こうとしている店がその記事で紹介されていた。新聞部の笹塚部長が直々に取材したらしく、懇切丁寧かつ大げさなレポートが載っている。フランス出身であるルルー姉妹のコメントも寄せられていた。
(混んでなきゃいいなぁ……)
 幸い、待つのは10分だけで済んだ。今日のランチは海京近海で獲れた新鮮な魚介類を使った「特製ブイヤベース」だ。それを二人分注文し、席に座った。
 ほどなくして料理が来た。それを味わっていると、カノンの方から切り出してきた。
「生徒会の仕事、大変?」
「ちょっとはね。まあ、最近はもう慣れてきたかな。カノンはどう? あやめ科長体制の超能力科は」
 今のカノンはかつてのような特別扱いを受けていない。ゆえに、去年までとは大きく生活が変わったことだろう。
「なかなか大変ですね。強化人間向けの訓練プログラムが見直されましたが、代わりに超能力科の授業全体が厳しくなりましたから。アルバイトしながらだと、なおさらです」
 4月からは実家からの仕送りで学費と学生寮の家賃をもらっているとのことだったが、自由に使うお金は自分で稼がなくてはならないらしい。以前レオは、実力で第二級特待生を志願してはどうかと提案しようとしたことがあったが、一度特待生の資格を剥奪されたら再申請は不可であることを思い出して口にはしなかった。
「アルバイト? い、いかがわしいところじゃないよね?」
「何を言ってるんですか? あたしがそんなことしそうな人に見えます?」
 少なくとも、今のカノンは見えない。もっとも、海京にはそういう系の場所はほとんどないが。
「あやめ科長のお手伝いですよ。ほとんど雑用みたいなものですけどね」
 カノンの意思次第では、卒業後は超能力科の事務職員として採用してもらえるらしい。それもあって、今のうちから色々学んでいるとのことだ。
「お待たせしました」
「おかげでこの学院のまだ知らなった部分を見れるようになりました」
「僕も生徒会役員になってから知ったことの方が多いくらいだよ」
 それこそ学食の裏メニューから生徒や教職員のための各種支援制度まで。
「『許可がない限り絶対に入ってはいけない場所』とかね」
「図書館の第二書庫、ですね。無断で足を踏み入れたら図書委員長にしばかれる。停学や退学になるわけじゃありませんが……大体の場合病院送りになるから、結局停学と同じですか」
「第二書庫は彼女の私室らしいからね。海京移転前に、学院と日本政府が頭を下げてまで入学してもらったって話だけど、その時に入学の条件として『快適な読書環境』を要求したとか」
 図書委員長。彼女の姿を見たことがある者は、レオが知る限りではゼロだ。名前こそ名簿にあるものの、代表者会議にもパートナーを代理として送り込んでくるほどである。図書委員長の正体は、旧体制時代から存在する天学最後の謎である。以前はそれを追う者が多かったらしい。しかし、新聞部の笹塚部長は正体を探ろうとして書庫に侵入しトラウマを抱えるような目に遭って以降、そういった行動は学院最大のタブーとされた。
「……と、そうだ。カノンはゴールデンウィーク、何か予定ある?」
「バイト以外は特にないですよ」
「じゃあ、どこか行ってみない?」
 連休中は、生徒会の仕事が休みだ。あとはカノンの都合に合わせればいい。
「いいですねー。多少の遠出もできそうですし」
「行くなら地球側かパラミタ側か、どっちにするかも考えないとね」
 いくつか案を出そうとしたところで、時間は午後2時を回っていた。そろそろ出ないと四限は厳しい。それはカノンも同じである。残念ながら、旅行の話を詰めるのは授業が終わってからだ。
「じゃ、今日候補を絞ってメールするよ。カノンも、どっか行きたいとこあったら遠慮なく言ってね」
「分かりました。じゃあ、また後で」
 カノンと途中で別れ、レオは実機訓練のため天沼矛へ向かった。