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リアクション
エピローグ5
「教導団が……ううん、教導団だけじゃなく、九校連に属する者すべてがあなたたちのような、そしてテロリストの片棒を担いだ私のような人間すら助けてくれた羅儀さんみたいな人だったら良かったのに――」
教導団の医療施設の一室。
先日、パワードスーツ工場で起きた事件の際にテロリストに関与した容疑で捕縛され、それど同時に重症者としてこの医療施設に搬送されたイリーナ・阿部中尉は、疲れたような笑みを浮かべながらそう告げた。
今、彼女の傍にいるのは羅儀の依頼で彼女を訪ねた裏椿 理王(うらつばき・りおう)と桜塚 屍鬼乃(さくらづか・しきの)の二人だけだ。
二人はベッドサイドに座り、イリーナと面会していた。
羅儀に頼まれたこともあり、今回の襲撃がイリーナの心の傷にならないよう配慮するという二人の心遣いで、今回は尋問や事情聴取ではなく、あくまで『話せるだけの話を聞かせてもらう』という範囲に留められていた。
理王と屍鬼乃、そして羅儀の思いやりが通じたのか、少しずつではあるがイリーナは二人に対して心を開いてくれたようだった。そしてしばらくの間説得を続けた後、遂にイリーナは何かを決意したようだった。
「そろそろあなたたちが聞きたがっていることを話しましょう。あなたたちなら信用できる……だから、あなたたちには話してもいいわ。でも、これを聞くには覚悟が必要――他ならぬ、あなたたち自身に」
そう前置きしたイリーナに、理王は困惑した表情を浮かべる。
「覚悟? オレや屍鬼乃自身が?」
鸚鵡返しに問われた言葉に対し、イリーナはベッドに横たわったまま頷く。
「ええ。他ならぬあなたたち自身の覚悟。今まで信じていたものが砕け散り、まるで足元が崩れるような絶望を味わうことになろうと、それでも真実を知ろうとする覚悟――」
再び前置きされた理王は、少しの間熟考した後、隣に座る屍鬼乃と顔を見合わせて再び熟考すると、ややあって二人一緒に頷く。
「聞かせてくれ。オレも屍鬼乃も覚悟はできてる」
真剣にして真摯な理王と屍鬼乃の瞳にまっすぐ見据えられ、イリーナも二人の覚悟が本物であると悟ったのだろう。
ゆっくりと重い口を開き、遂に最初の一言を告げた。
「なら話すわ。教導団が……いえ、教導団だけでなくそれを含む九校連すべてが共謀して起こしながら、当事者たる九校連自身によって表に出ることなく葬られた事件――『偽りの大敵事件』について」