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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

リアクション

 廊下。

「邪魔な物ばかりですね」
 舞花はそう言いながら怪力の籠手で増した力を使って進路妨害をする大小様々のがらくたを手早く移動させながら追っていた。自分達の妨害のためにわざと道を選んでいるのではと疑いたくなるほど。
「速いですね」
 フレンディスは先を走る熊のぬいぐるみを見ながら言った。
「何とか逃げ道を塞いで」
 舞花は策を考えながら走る。
「逃げ道を塞いだらルカが上から捕まえるよ」
 何とか三人に追いついたルカルカが話に入る。バードマンアヴァターラ・ウィングで天井付近を飛んでいる。
「それなら先回りをした方がいい」
 そうベルクが言い、『行動予測』でぬいぐるみが辿り着く場所を予測した。
 皆はそれに従って足を進め、辿り着いた。

「もう逃げ道はありません」
 と舞花。
「大人しくして下さい」
「ここで終わりだ」
 フレンディスとベルク。凍らせたいが様々な薬品の影響を受けていると思われ、何が起こるか分からないので使えない。
 後ろは壁で逃げ道を塞がれた熊のぬいぐるみ。

「それー!!」
 逃げ道を塞ぐと同時に上から袋を持ったルカルカが突撃。
 躊躇していてはぬいぐるみに隙を与えるので迷い無く。

 そして、見事に

「捕まえた!」

 熊のぬいぐるみはごみ袋の中。中でバタバタ暴れているが頑丈なため破れはしない。

「終わりましたね」
 舞花は安心の顔でごみ袋を見た。
「ルカはこの子を外に連れて行くよ」
 このままの状態はまずいので外に出て洗濯係に任せなければならない。
「では、私は実験室の様子を見に行きます」
 舞花は気になる実験室の様子を見に行く事にした。
「マスター、私達も外に行きましょう」
「……そうだな」
 フレンディスはいまだに目を覚まさないポチの助のため外に行く事にした。ベルクは安全な場所で少し休みたかった。

 実験室。

 ルカルカと入れ違いに掃除組が侵入。
 窓が全て破壊され、換気は行われてはいるもののぬいぐるみが暴れたため危険度は高い。

「危ないな」
 実験室に入るなりダリルは紫の煙を生み出している薬品のふたを閉めた。
「紫の煙は吸い込むな。少しでも吸い込めば心臓が止まる」
 ダリルは室内に広がっている紫の煙に視線を向けながら多少安全な入り口付近にいる二人に言った。
「うへぇー」
 布で鼻を覆っているのに匂いが入り込んでくるため思わず呻くトゥマス。ダリルの話を聞くどころではない。
「……どうするんだ」
 裕樹が訊ねる。
「……」
 ダリルは何か無いだろうかと近くの戸棚を開けた。『博識』と『薬学』で瞬時に役に立ちそうな薬品を見つけ、煙に向かって振りかける。紫の煙はゆっくりと薄くなり消えてしまった。あっという間に危機を退けた。
 それが終わるとダリルは、すぐに危険な薬品から順に全部ふたをして行った。
「これで安全だな。あとは匂いの影響……」
 裕樹は薬品の安全を確認してから匂いの影響を確認している『セルフモニタリング』を持つトゥマスに声をかけようとするも本人は気持ち良さそうな寝息を立てていた。
「トゥマス、起きろ!!」
 裕樹はサタニエルをトゥマスの背中に向かって撃った。飛び出したのはゴム弾だが、威力は十分。
「痛っ! 乱暴だな」
 痛みに声を上げ、勢いよく背後を振り返った。
「気にするな。どうだ」
 裕樹は、さらりとトゥマスの文句を流し、状況を確認。
「んー、大丈夫じゃねぇか」
 とあっさり。
「……よし、始めるか」
 ここでようやく作業開始。

「快眠香は見つかったか」
 作業を開始してすぐ裕樹は快眠香についてダリルに訊ねた。
「あぁ、おそらくこれだとは思うが」
 答えながらダリルは水面に浮かぶ粉を戸棚に入っていた匙ですくい取っていた。おそらく熊のぬいぐるみの仕業だろう。
「使えるか?」
 裕樹はとりあえず訊ねる。
「……確認するまでは何とも言えない」
 水面に浮かんでいただけで完全に混ざってはいなかったので可能性はあるかもしれないが、確認するまでは言い切れない。
 近くにメモらしき物があるが悪筆過ぎて読めない。
「ここは俺達が掃除する。他の場所で作業をしたらいい」
 裕樹はそう言い、実験室の掃除を引き受ける事にした。このやり取りの間、トゥマスはごみ回収をしている。
「……悪いが、そうさせてもらう。薬品については心配無い」
 ダリルは別の場所に移動する前に薬品について裕樹に伝えた。
「あぁ、助かった」
 裕樹はそう言って見送った。薬品の処理さえ終われば後は楽なものだ。壊滅的なほど汚い部屋と格闘するだけなのだから。

「……状況はどうですか?」
 ダリルと入れ違いにぬいぐるみ捕獲を終えた舞花が入って来た。
「匂いも薄まって今ちょうど掃除しているところだ。そっちは終わったのか?」
 床に落ちているごみを拾いながら裕樹が答えた。実験器具を運び出す前に足を取られないようにある程度のごみを回収中。
「はい。何とか。何かお手伝い出来る事はありますか?」
 舞花が訊ねた。
「実験器具を外にいる青夜の所まで運んで行ってくれ」
 と裕樹。細かな掃除は実験器具を全て外に運び出してからだ。
「分かりました」
 舞花は近くの細々とした実験器具を抱え、外に運び始めた。
 舞花は怪力の籠手もあるので重量のある器具も平気なため作業も進む。
「青夜に連絡を入れておくか」
 裕樹は連絡を入れる事を思い出し、作業を中断した。
「今からラウズと舞花が実験器具を運んで来るから頼むぞ」
 裕樹はすぐに洗浄が出来るよう外にいる青夜に連絡を入れた。
「さて」
 了解の返事を受けてから裕樹は本格的に実験器具の運び出しに入った。
 四人で運び出しをしたおかげであっという間に終わり、室内の掃除に入った。
「よくこんな場所で実験できるよな」
 そう言いながら裕樹は汚れた台を布巾で綺麗に拭いてから消毒をする。
「……多少、人間らしい部屋になったんじゃねぇ」
 トゥマスは侵入時よりは多少綺麗になった部屋を見回しながら言葉を洩らした。
「綺麗になりましたね」
 舞花も広々とした様子を眺めながら声を上げた。
「ごみも大量だ」
 ラウズは大量のごみ袋を持って外に運び出した。実験器具にごみ袋と忙しい。

 何とか掃除は終了し、
「……実験室の清掃終わりました」
 代表して舞花が法正に連絡を入れた。

 この後、四人は一度外に移動した。
 ちょうどオルナが目を覚ました頃だった。