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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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 浴場前。

「……水が漏れてきてる」
 ドアの下から漏れる水を見るなり、表情を引き締めるオデット。実験室も危ないがここも危ないだろうと考え急いでやって来たのだ。

 そんなオデットの後ろから
「ドア開けたらどしゃー、ってなるかな。どしゃーって」
 という青夜の陽気な声が降ってくる。
「久遠さん」
「洗い物のお水確保に来たんだ」
 振り向いたオデットに青夜は元気に答えた。
「洗濯物たくさんあるの?」
 ここに来るまでに脱ぎ捨てられた服は何度も見たが、どれほど溜まったかまでは知らない。
「実験器具も洗うつもりだから絶対に足りなくなる」
 青夜は力強く言った。
「……凍らせようと思ったけど。水利用なら考えなきゃ」
 水を全て凍らせようとしていた最初のプランは変更しなければならず、オデットは首をかしげ始める。
「……とりあえず、換気口を見つけて蛇口を閉めて来るね」
 考え事をしていても水は流れ続けるのでオデットは外に出た。
「いってらっしゃい」
 青夜は見送り、ドア前に待機。

 外。

「……まずは蛇口を閉めて」
 何とか見つけた換気口から浴場の様子を確認したオデットは、水を出し続ける蛇口に向けて両手をかざし、『サイコキネシス』を使う。蛇口を閉めるイメージを思い描きながらゆっくりと少しずつ蛇口を閉めていく。魚達が気付かないように静かに。
 最高の集中力のおかげで何とか蛇口を閉める事に成功。
「ふー、良かった。ここからが本番だよね。どうしようか……そうだ。窓を開ければ水はここから出る。利用できるかも」
 一息入れたオデットはふと閃き、携帯電話を取り出した。
「久遠さん、窓を開けて水を外に出す事にしたんだけど。大丈夫?」
 城中にいる青夜に連絡をした。
「ふぅ」
 連絡を終えたオデットは携帯電話を片付け、腕まくりをして待機。

 浴場。

「……オデットからだ。うん、大丈夫、大丈夫。何か入れる物を用意するからそれまで待機だよ」
 携帯電話が鳴り、相手を確認するなり電話に出ると水の有効利用についてだった。
 話が終わるなり青夜は急いで外に飛び出した。

 外。

「かなり溜まったな。俺も手伝おう」
 城中の汚れ物を回収したところでダンも洗濯に加わった。
 『ランドリー』を持つダンはあっという間に汚れ物を綺麗にしていく。

 しばらくして、青夜が走って来た。
「あ、いたいた。お水確保手伝って」
 オデットから連絡を受けた青夜はアメリとダンを見つけるなり声をかけた。
「あ、うん」
「俺も手伝おう」
 アメリとダンは青夜に協力して巨大なビニールプールを用意した。

「準備完了だよ」
 準備を整えた青夜はアメリとダンを連れてオデットがいる場所へ巨大なビニールプールを設置、合図。
「行くよ」
 オデットは青夜の合図で『サイコキネシス』を使って窓を開けた。
 途端に勢いよく水が溢れ出し、あっという間に巨大なビニールプールをいっぱいにしていく。

「さ、魚」
 出て来たのは水だけではなく、数十匹もの凶暴な肉食の魚達も一緒だった。襲いかかる魚にアメリは『歴戦の防御術』で身を守る。
「無事か、アメリ!」
 アメリを守るため瞬時にハンドガンで魚を撃ち抜いた。アメリはこくりとダンに頷いた。
「魚だ!」
 青夜も『歴戦の防御術』で鋭い歯を持つ魚から身を守った。
「危ない!!」
 オデットは『氷術』で魚を凍らせた。
「……これでもう大丈夫」
 オデットはほっと息を吐いた。
「……そうね」
 アメリも静かに言った。
「こんな魚がお風呂にいたんだね」
 青夜は珍しげに魚を見た。

 その時、ドア越しから放流の音を聞き、外にやって来た吹雪とコルセア。
「水音を辿った先には、窓から流れる滝! 襲う魚! 大自然も仰天であります」
 吹雪は真面目な顔で恐々と目の前で起きた事を言う。
「……大自然は大げさ」
 コルセアは記録をしながらツッコミ。
「……大丈夫?」
 二人の登場に驚くもオデットは無事を確認する。
「大丈夫であります。我々は脅威にも負けない精神、肉体を持っているであります!!」 吹雪は先ほどと同じノリでオデットに答えてどこかに行った。
 コルセアも急いでついて行った。

「……私、洗濯に戻るわ。これだけ水があれば大丈夫」
「そうだな」
 吹雪達を見送った後、アメリとダンは洗濯の続きに戻った。
「僕も手伝うよ!」
 青夜も洗濯に加わった。実験器具が到着するまで時間がありそうなので。

 残されたオデットは凍ったままの魚に視線を戻した。
「……ごめんね。恨みがあるわけじゃないんだけど……。お詫びに今度あなた達が主役の本を書くよ」
 『サイコキネシス』で近くのバケツに魚達を入れ、寂しそうに言葉をかけるなりポケットからメモ帳を取り出し、『暴れ魚と水の部屋』と書いた。オデット・オディールは、作家だったのだ。
「戻って様子を確認しなきゃ」
 気持ちを現在に戻したオデットは状況確認のため浴場に引き返した。