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夏合宿 どんぶらこ

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夏合宿 どんぶらこ

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    ★    ★    ★
 
「ふっ、真打ち登場ってな。それにしても、今日は運動したなあ」
 コキコキと肩を回しながら、紫月唯斗くんが言いました。いったい。なんの運動だったというのでしょうか。とりあえず、数ヶ月分の目の保養は、今日一日ですましたようです。
「まあ、まだいろいろと残ってるみたいですし、夜はこれからですね」
 お腹いっぱい食べて満足したり、疲れて動けなくなったりして浜辺に寝そべっている女の子たちを見渡してから、紫月唯斗くんはバーベキューの方へとむかいました。
あうう……、限界です……
 食べ過ぎたソア・ウェンボリスさんがぽっこりしたお腹をさすりながら、同じ姿になった悠久ノカナタさんと一緒に砂浜にゴロゴロと転がっていきました。
 
    ★    ★    ★
 
「美味しい料理はどこー!!」
 トップで出発しながら、度重なる沈没で日没近いゴールになってしまった屋良黎明華さんが、ほとんど涙目で叫びました。これでは、美味しい物が残っているか分かりません。
「お疲れー。はい、これ、御褒美ですよ」
 ずっとコミュの仲間たちを待っていた鬼龍貴仁くんが、とっておいたホタテの姿焼きを渡しました。
黎明華、胸キュンなのだ!
 涙を流さんばかりに、屋良黎明華さんが喜びます。
「それで、ティー・ティーたちは?」
「それが、まだなんですよねー」
 そう言って、思わず鬼龍貴仁くんが苦笑いを浮かべました。
 
    ★    ★    ★
 
「ああ、美味しい海産物が……。海老が、ホタテが……。すっかり食べ尽くされています。しくしくしく……」
 やっと辿り着いたときには、高級食材はすっかりなくなっていて、神代夕菜さんがしくしくと泣きだしました。
「夕菜ちゃんが、天然浮き袋を貸してくれなかったから遅くなったんですぅ。この貸しは高いですよ〜
「無理を言わないでください!」
 神代明日香さんに無茶を言われて、神代夕菜さんがしっかりと自分の胸をだきしめてガードしました。
「あのー、こっちですよー」
 もめている二人を、コハク・ソーロッドくんがそっと手招きします。
「最後の一つですけれど、よければどうぞ」
 そこにあった物は、光り輝く伊勢海老様でした。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
 握りしめたコハク・ソーロッドくんの手をブンブンと振って、神代夕菜さんがお礼を言いました。
「では、さっそくいただきま……」
 パクンとかぶりつこうとして、すぐに神代夕菜さんは伊勢海老を二つに割りました。
「これは渡せませんけれど、海老は二人で食べましょうね」
 そう言って、神代夕菜さんは神代明日香さんと伊勢海老を分け合いました。
 
    ★    ★    ★
 
「スイカさんが……。スイカさんがあ……。死んでしまいましたあ。しくしくしく……」
 ほとんど最後の方とはいえ、ゴールはできたのですが、源鉄心くんたちには犠牲者が出てしまいました。スイカさんです。
「仕方ない、諦めるしかないだろう」
「スイカさあ〜ん!」
 源鉄心くんに言われてもイコナ・ユア・クックブックさんは泣くだけです。岸に上陸したところから、一歩も動けません。
 そこへ、兵学舎のみんなもやってきました。
 みんなで海岸へ行こうとイコナ・ユア・クックブックさんを説得しているときでした。
「何か流れてきます」
 ティー・ティーさんが、何か丸い物が大量に流れてくるのを見つけて言いました。
 スイカです。
 野生のスイカが大量に流れてきたのでした。
「スイカですわ!!」
 イコナ・ユア・クックブックさんが復活します。
「よし、みんなでスイカを集めるぞ」
 鬼龍貴仁くんと源鉄心くんが川に入って、スイカを女の子たちに投げ渡します。大漁です。
「よし、これでラスト……。はあっ!?」
 鬼龍貴仁くんと源鉄心くんが、それぞれ最後のスイカと思った物を持ちあげたときでした。そのスイカには、胴体がついていました……。いえ、人です。それは、滝壺に落ちた霧島春美さんとディオネア・マスキプラさんだったのです。
「それはスイカじゃないからいらないですわ」
 イコナ・ユア・クックブックさんがそう言いました。
 
    ★    ★    ★
 
「絶望的ね……」
 今まさに水平線に沈もうとする太陽を見て、ラブ・リトルさんがつぶやきました。
 やっと、コア・ハーティオンくんの一行の御到着です。
「きっと、もう食べる物は残ってないわね」
 高天原鈿女さんが現実的に判断します。
「お腹空きましたあ……」
 夢宮未来さんはふらふらとしていて、空腹で今にも倒れそうです。
「とにかく、到着の報告をしなければいけないだろう」
 コア・ハーティオンくんの言葉で、のろのろとバーベキュー会場にむかいます。
「遅かったな。最後から二番目だ」
 ジェイス・銀霞さんに言われて、コア・ハーティオンくんたちはしょんぼりとしました。
「だが、まあ、無事でよかった。さあ、食え」
 そう言われてみた先には、バーベキューの網の上で、大量の巨大な魚が焼かれていました。
これはちょっと面白いささやかな贈り物よ
 意識を取り戻した霧島春美さんたちも、むさぼり食っています。
 それは、みんながつかまえてきたハクレンでした。