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リアクション
アスレチック広場。
「やれやれ仕方ない、遊び相手になってやろう」
法 正(ほう・せい)はそう言いながら滑り台やジャングルジムなどのアスレチックで遊んでいる子供達の所に行った。
言葉とは裏腹に結構乗り気だったりする。
「お前たち、チャンバラごっこでもしよう」
法正は声高く園児達に声をかけた。
「チャンバラごっこ? やるやる」
「面白そー」
「みんな、呼んで来るぞー」
園児達は即参加を決め、人数を増やすために参加者を引っ張りに行った。
「さすが、天才軍師のこーちょく、遊び相手も見事なものだ」
法正はぽつりと満足気につぶやきながら園児達が戻って来るのを待っていた。
「……蛙ですか」
動物変身薬を使った東 朱鷺(あずま・とき)は銀色の蛙に変わっていた。
「なかなか、面白い薬ですね」
朱鷺は、探求心溢れる銀色の瞳で変身した自分の姿を確認してからジャンプをしたり、手足を動かしたり口を開けたりして体を動かしてみる。その後、他の動物にも興味が湧く。
「……鳥に蛇に熊」
朱鷺は様々な動物に変身した園児達の観察を始めた。
「おぉ、銀色蛙。格好いいぜ!」
熊になった少年が羨ましそうに朱鷺に話しかけて来た。
「……キミは猫ですか」
朱鷺はじっと少年を見た。
「うん。そうだ、何かチャンバラごっこするって。遊ぼうぜ」
少年は元気にうなずき、朱鷺が気に入ったらしく遊びに誘う。
「……そうですね」
子供の相手が苦手な朱鷺はどうするか考え始めた。
「行こうぜ!」
答えの待てないやんちゃな少年は朱鷺の返事を待たず、朱鷺を抱えて法正の元に案内した。
「……困りましたね」
連れられた朱鷺は困ったようにつぶやいていた。これは付き合うしかないと。
「まずは木の枝を集めて二組にわかれて勝負だ」
法正は集まった園児達に武器となる木の枝採取を命じていた。
その時、
「参加するぞ!」
「……参加させて貰いますよ」
熊になった少年と朱鷺が現れた。
「お、ヨッシュ! いいぜ」
「早くやるぞ」
園児達は、やって来た二人を快く迎えた。
武器探しが始まった。
木の枝を拾った少年達は、
「じゃーん、スカイソード!」
ヴァルキリーの少年が立派な木の枝を高々と掲げる。
「うぉ、ウルトすげー」
そう言う獣人の少年は両手に木の枝を持って二刀流。
「拠点は、一組がジャングルジムで……」
法正はテンションが最高潮に達している園児達に拠点について説明を始めるが、突然中断させられた。
法正の説明を中断したのは、
「スカイソード!!」
「覚悟しろ! 怪人ヌメル!!」
武器を装備してテンションが上がった園児達の攻撃だった。
「あっ、痛い! こらっ! こーちょくは司令官だぞ、戦わないんだって!」
殺傷力は低いが、木の枝で叩かれるとさすがに痛い。しかも人数が多い。
「……わんぱくはいけませんよ」
朱鷺も注意をするが、テンションの高い子供達には全く効果が無い。
「怒ったぞ!」
「逃げろーー」
ウルトと二刀流少年カヅチが笑いながら他の子達と一緒に逃げて行く。
「こーちょくに攻撃したらどうなるか……」
法正ははむっと逃げる園児達をにらむ。
そんな法正の背後から忍び寄る影。
「ちょっ、小突くな!」
今度は背後から攻撃され、振り返り声を上げる。
そして、振り返ったら
「ひっさーーーつ」
「二刀流だぞ!!」
逃げたはずのウルトとカヅチ達が戻って来て攻撃する。
そんな事が何度も繰り返される。
園児達の猛攻を受けた法正はとうとう降参してしまった。
「痛っ! 痛い! うわぁああん!」
天才軍師として類い稀な采配を見せつけるつもりが、子供達のわんぱくさには敵わなかったようだ。
「……」
朱鷺は涙目の法正を見てからわんぱく少年達の方に向き直った。
「……このような事をするのならチャンバラごっこはやめた方が良さそうですね」
朱鷺は少年達に言い聞かせ始める。さすがに子供の相手が苦手でも今の状況を放置しておくわけにはいかない。
「えーー」
「やだ。やるー」
木の枝を持った少年達は文句を垂れる。
「相手の事を思いやれないのなら遊ぶのは無理です。キミ達は楽しい時間を過ごせるようにしてくれたのを台無しにしたのですよ。キミ達も嫌でしょう。友達を楽しませようとしたのに嫌な事をされたらどう思いますか」
朱鷺は法正に代わって子供達の相手をした。子供相手なので怒るよりもまずは年上の自分がしっかりと言い聞かせる必要があると思い、淡々と現実的な言葉を投げかける。
「……嫌だ」
「……怒る」
ぽつりと言い、しゅんと肩を落とす子供達。
そして、
「……ごめんなさい」
ぺこりと子供達は法正に頭を下げて謝った。
しかし、法正からの返事は無い。
「……チャンバラやろうぜ、司令官」
ウルトが恐る恐る法正に言葉をかけた。
「……もう、司令官には逆らわないか」
法正は少し涙目で訊ねた。
子供達はみんなこくりとうなずいた。
「ならば、始めるのだ。拠点はジャングルジムと滑り台なのだ」
子供達に謝られた法正はすっと涙を消して元気な天才軍師に戻った。
「よーし、始めるぞ」
ウルトは猛ダッシュで法正が司令官をするジャングルジムへ。
「行こう、司令官」
ヨッシュは朱鷺に言葉をかけて滑り台へ。いつの間にか朱鷺は二組の司令官となっていた。
白熱するチャンバラごっこが何とか無事始まった。
「あっ」
本を脇に挟んだ男の子がルファンの姿に気付くなり、走って来た。
「おお、シュウヤ君」
ルファンも気付き、立ち止まってシュウヤを迎えた。
「来てたんだ」
嬉しそうにルファンを見上げるシュウヤ。
「うむ、久しぶりに元気な顔を見たいと思ってのぅ」
「うん」
ルファンの言葉に元気にうなずくシュウヤ。
「友達はたくさん出来たかのぅ」
「出来たよ」
ルファンの問いかけにシュウヤはこれまた元気に答える。
「……ウル君に貸して貰ったんだ。もう少し勉強しろって」
シュウヤは、ズボンのポケットから先ほどウルトに渡された大量のスカイレンジャーのトレーディングカードを出してルファンに渡した。
「……勉強」
ルファンはぱらぱらとカードを見る。中にはスペシャルカードやシークレットカードと思われる派手な物もあった。ウルトのお気に入りである事は一目瞭然。それを貸したと言う事はシュウヤの事をしっかり友達と思っているのだろう。
「……大変じゃ」
ルファンはカードをシュウヤに返した。
「うん。時々、問題出してくるんだ」
シュウヤはうんざりと楽しさが同居した顔をした。
「楽しそうじゃな」
ルファンは、楽しそうなシュウヤに言った。
「うん。本を読むのは前から楽しかったけど、友達と遊ぶのも楽しいね」
変わらず読書家シュウヤは、分厚い本を抱えながら笑った。
「そうだ。今この本を読んでるんだ」
シュウヤは抱えていた本をルファンに見せようと渡した。
「……これは」
渡された本をぱらぱらとめくる。様々な遺跡や遺物について事細かに書かれた本で時々5歳児が読むには難しい言葉が出て来たりする。
「シュウヤ君はなかなか聡明じゃ」
本を返したルファンは感心してシュウヤの頭を撫でた。
「……ありがとう」
シュウヤは照れながら礼を言った。
その時、
「シュウヤーー、面白い話があるぞ、来いよ!」
ダン・ブラックモア(だん・ぶらっくもあ)のお話会に参加している友達が腕を振りながらシュウヤを呼んでいた。
「ヴァル君! じゃ、行くね」
シュウヤは自分を呼んだ地球人の少年ヴァルカに応えた後、ルファンに一言言ってから駆けて行った。
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