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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

リアクション

 

ノーン・クリスタリア

 
 
「エントリーナンバー12番、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)さんです」
 シャレード・ムーンに呼ばれて、ノーン・クリスタリアが小走りに駆け出してきた。ストラップのついた青白いドレスは巻き衣になっていて、重なった部分が濃い青に輝き、スカート部分は細かいドレープを作りだしていた。腰の部分はキュッと水色の大きなサッシュで絞って脇の方で結び目を作り、端を長く垂らしてアクセントにしている。ストラップのついた胸元には水色の小花模様のブローチをつけ、そこから領布を羽衣のように腕越しにぐるりと回していた。青い髪は上の方で左右に纏めて水色のリボンで縛り、下の部分は自然と下へと流している。腕には幅の広い金のブレスレットを填め、足には脚絆タイプの薄い布をつけた上から小花のアクセサリーがならんだ編み上げサンダルを履いていた。
「やっと、ノーンの出番ですね」
 御神楽陽太が、ノーン・クリスタリアに目で合図して頑張れと応援する。
 花道を軽快に進んで行くと、突き当たりでノーン・クリスタリアが氷雪の翼を纏ってふわりと飛びあがった。サッシュの端が弧を描く。風に流されるように一回転すると、ノーン・クリスタリアが音もなく着地した。
 花道をステップで楽しそうに戻ってくると、ノーン・クリスタリアがステージの中央に立った。
「変身!」
 声高に言うと、着ていた氷霊の衣が氷雪比翼と共に溶けて霧となり、ノーン・クリスタリアの身体を被った。
「見ちゃいけません!」
 あわてて、ベアトリーチェ・アイブリンガーがコハク・ソーロッドの目をふさぐ。さすがに何度もになって、ちょっと疲れが見えている気もする。
 霧の中、ノーン・クリスタリアの衣装が、魔法少女の物に変化していった。
 髪に結びつけられていたリボンが鮮やかなエメラルドグリーンに変化し、首に水色のチョーカーが現れる。領布が薄く半透明になってむきだしの肩を優しく被い、若草色のキャミソールドレスと一体になったクリスタルブルーのシースルーガウンがふわりと裳裾を広げて床の上に広がっていった。青い靴に白いハイソックス姿の足を揃えて立つと、ノーン・クリスタリアが白手袋を填めた手を前へ差しのばした。
 静かに、雪解けのせせらぎのような歌声が響く。
『これはまた綺麗であります。ちょっと若すぎるのがおしいでありますが……』
 何がおしいのかよく分からないが、大洞剛太郎がノーン・クリスタリアの艶姿に見とれる。
「これは、なかなかいいですわね」
「ええ、聞き入ります」
 落ち着いた演出の歌に、アルティア・シールアムとイグナ・スプリントが静かに聞き入った。
「さあ、もう一曲いっちゃうよー!」
 大きく手を突きあげて可愛くジャンプすると、ノーン・クリスタリアが今度はアップテンポな歌を歌い出した。それまで穏やかだった照明が一変して、光が乱舞する。
「可愛いですわ! えい、えーい」
「あうっ……」
 ノリノリでユーリカ・アスゲージが腕を突きあげて応援した。その流れ弾を顎にくらって、非不未予異無亡病近遠が思わずのけぞる。
 コア・ハーティオンとアキラ・セイルーンもノリノリだ。
 源鉄心は、背後のアサシン軍団を気にしながら、ごく普通に拍手をしてごまかした。
「さあ、後は御褒美のランチだよねっ♪」
 ステージからの去り際に、ノーン・クリスタリアが素に戻ってこの後の御飯の心配をする。しっかりとマイクに拾われていた。
『ええと、育ち盛りのノーン・クリスタリアさんでした。それでは、寸評をお願いいたします』
 シャレード・ムーンが審査員に訊ねた。
『さすがですわね。静と動の切り替えがみごとでしたわ』
 身内びいきにならないようにと気をつけながらも、やっぱりノーン・クリスタリアにはちょっと甘いエリシア・ボックであった。
『やっぱりぃ、見た目と違って年齢は……ぐえっ』
『わたくしのノーンにそんな質問は許しませんわ!』
 見た目のロリロリと比べて実年齢がと言わんばかりの不動煙を、エリシア・ボックがヘッドロックをかまして黙らせた。
 
 
パフューム・ディオニウス

 
 
『続いては、エントリーナンバー13番、パフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)さんです』
「みんなー、元気してるー?」
 元気よく、ステージにパフューム・ディオニウスが走り込んできた。
 小振りの胸を頑張って強調したビスチェ・ブラウスの下のピンクのミニスカートを翻しながら、腰の後ろに結んだ大きなピンクのリボンをゆらして花道を駆け抜ける。
「あのお胸なら怖くないですわ」
 ユーリカ・アスゲージがほっとしてつぶやいたが、怖がるポイントがずれ始めているような気がする。
「どれどれー」
 端まで一気に駆け抜け、目の上に片手をかざして前屈みになると、パフューム・ディオニウスがぐるりと客席を見回した。
「コハクさん、見ちゃ……ああっ」
 ベアトリーチェ・アイブリンガーがガードしようとしたが、ときすでに遅く、ツンと突き出されたパフューム・ディオニウスのこぢんまりとしたお尻を直視してしまったコハク・ソーロッドがのけぞってピクピクしている。
「修行が足らないでありますね」
 しっかりと脳内録画した大洞剛太郎が、コハク・ソーロッドの方を見てちょっと勝ち誇った溜め息をつく。
「ははははは、これ、なんとかならないのか?」
「何か、問題でもあるのですか?」
 後ろのアサシン軍団を気にしつつ拍手する源鉄心に、イコナ・ユア・クックブックがじとーっと監視しながら答えた。
 客席にむかって満足そうにウインクをすると、パフューム・ディオニウスがまた全力疾走で花道を駆け戻っていった。
「あたしは、宣伝なんかしないからねー」
 どうせまた同じパターンだろうと期待されているのを裏切って、パフューム・ディオニウスが言った。
「でも、みんなお店に来てくれるよねっ。待ってるんだもん」
 パチンとウインクすると、パフューム・ディオニウスがステージ袖に走り去っていった。
「ふむ、これは一度行ってみるべきか……」
 感化されやすいコア・ハーティオンが、ディオニウス三姉妹の再三の広告に刷り込みをされてつぶやいた。
『さて、ディオニウス三姉妹のラストを飾るパフューム・ディオニウスさんでしたが、審査員のみなさんの感想はいかがでしたでしょうか』
『宣伝なら宣伝と言いなさい!』
 何しに出てきたのだと、エリシア・ボックが叫んだ。
『大丈夫だよ、お姉さんたちと比べて、十分に残念だものぉ』
 どうも、女の子のチャームポイントが少し特化している不動煙であった。