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第7章 お酒を武器とする人たち
「っく〜、やべぇな。すこし酔っちまったみたいだぜ」
 山葉 涼司(やまは・りょうじ)は少し顔を赤くしながらも飲み続けていた。
 というより、有名人であるためが飲まされる回数が他の人に比べると多かったようだ。
 そのために、普通の人よりお酒が強いはずの涼司でも酔いが回っていた。
 そんな涼司を山葉 加夜(やまは・かや)は心から心配していた。
「涼司くん、だいじょうぶですか?」
「ん? おお、大丈夫、大丈夫! まだまだいけるぜっ。つーか、加夜のほうこそ無理するなよ?」
「いえ、私はまだ飲んでいませんから。全然平気です!!」
 そんなことを言っていると、また一人涼司に近づいてきた。
「あの、お酒を造ってみたんですが、いかがですか?」
 近づいてきたのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)だった。その手にはたくさんの酒瓶が入った袋が提げられていた。
「おう、飲むぜ!」
「わあ、これって、スピリタスですね」
「良ければ加夜さんも」
「ありがとうございます」
 近遠は手際よくシルバーブレットと呼ばれる銀色の入れ物を取り出すと、その中にスピリタスを入れる。
 さらに、ワインやレモンジュースをその中に少しずつ入れられる。
「おい、これまさか」
「ええ、カクテルです。本当はエリザベス先生に飲ませるつもりだったんですが。というよりこれで酔わせてグリモワール書き取りを無かったことにさせたかったんですけどね」
 近遠が失敗したという風に照れ笑いを浮かべながらシルバーブレットにどんどん材料をいれる。
 入れ終え、勢いをつけてふると、それはできあがった。
「カクテルおいしそうですね!」
 できあがったカクテルに加夜は一瞬見とれてしまった。
 それは少し透き通ったオレンジ色をしていた。
「おう、さっそく飲もうぜ」
「そうですね」
 近遠は小さなグラスに次々とできあがったカクテルをつぎ分けると、加夜と涼司に振る舞った。
「っは〜うめぇな! それにスピリタスなだけあってアルコールもつええ」
「ふぇえっ……ちょっと酔ってしまったです……でも残すのもったいない」
 突然、目をうつろにしながら加夜は自分の残っているカクテルを見ながらつぶやいた。
 呂律の回らない口調に、酔ったことが伺える。
「りょーうじくんっ!」
「おおう? どうした?」
 突然涼司の目の前に加夜が抱きついてくる。
 すると、加夜は自分の残してたカクテルを口に全部入れる。
「ん――」
 とおもと、すぐに加夜は涼司の口に自身の口をつける。
 ゆっくりとしかし確実、自分の口から涼司の口へとお酒を移した。
「――っは」
「おい、おいかなり酔ってんじゃねえか」
「ええ、酔ってますねかなり」
 困惑する涼司に近遠はあっさり答えた。
「では、ボクはこれで」
 さらに逃げるように、持ってきたお酒と一緒に静かに去っていった。
「って、お、おい」
「りょーじーくんっ。私だけみて……ねえ、今度は涼司くんから口移ししてください〜」
「っ、しかたねえなあ」
 涼司は額に小さな汗をかきながらも、ちょっと照れくさそうに自身の口から加夜の口へとお酒を渡した。