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シナリオ一本分探偵

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「……なぁ、さっきからお前ら何しているんだ?」
 ななな達のやり取りを見て高円寺 海(こうえんじ・かい)がどうしていいかわからないような表情を浮かべる。
 海だけではなく、この部屋には雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)アッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)も集められていた。小暮は別室で療養中である。
「さっきから推理推理って言っているけど、事件はもう解決したんでしょ? なんで私達が集められているの?」
 雅羅の言葉に海もその通りだと言わんばかりに頷く。
「事件も何も、小暮がミスって事故っただけって聞いたけど……まさか違うとでもいうのか?」
「いや……その通りなんだけどさ」
 アッシュの言葉にアゾートが困ったような表情になる。
「じゃあ何で推理何てしているの?」
 雅羅の問いに、アゾートは黙ってなななに視線を送る。
「え? なに? そ、そんなに見られたら照れるよー」
 その視線の意味も気付かず、なななが恥ずかしそうにくねくねと身をよじる。
 それで何となく雅羅だけでなく海やアッシュも理解した。『コイツのせいか』と。その通りである。
「もー、いつまで待たすんです!」
 長い茶番に我慢できなくなったのか、怒りながらペト・ペト(ぺと・ぺと)アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)の頭に乗ったまま現れる。
「まぁいいです。探偵のいる所に事件有り、つまりこの探偵であるペトが解決しなくてはいけないのです。さぁアキュート、とっとと事件を振り返るのです、助手として」
「いやお前いつから探偵になったんだよ! そもそも事件起きてねぇし、大体お前みたいな探偵がいるか!?」
 ちっちっち、とペトがアキュートの頭の上で指を鳴らす。
「アキュート……わかっていないです。今のこの時代、OLだって家政婦だって、しまいには三毛猫だって探偵になれるのです。だからペトが探偵だという事に全く疑問など無いのです。それに、告げているのですよ……今回の探偵はお前だと、ペトの緑色の葉緑素が!」
「葉緑素に緑以外有るかよ!」
 アキュートはそう言うが、探せばあるかもしれないというのが怖い。探す気は更々無いが。

「ホントツッコミ役他にいると楽だねー」
「ですねー」
 そんな二人を見てアゾートとボニーがのほほんと飲み物を飲んでいた。
「相当苦労したみたいね……貴方達」
 その二人を雅羅や海、アッシュが同情するような目で見ていた。

「大体何度も言うが、これは事故――」
「小暮はプールの中央、逆立ち状態で発見された! そうですね!?」
「お、おう、そうだな……けどそれがどうした?」
 言葉を遮ったペトの勢いに飲まれるアキュート。
「物事には全て理由があるのですよアキュート。この逆立ち状態……犯人からのメッセージが隠されているのですよ」
「あーそうかい。で、その犯人ってのに目星はついているのか?」
「勿論です」
 あっさりと頷くペトに、とアキュートの口から思わず驚きの声が漏れる。
「一体誰なんだよ、犯人は?」
 ふむ、とペトが目を閉じる。その様子を皆が固唾を飲んで見守る中、やがてゆっくりと口を開いた。
「犯人は小暮です」
「被害者犯人ってどういうことだよ!?」

「落ちつくのですアキュート……こうは考えられませんか? 小暮の死は偽装だった、と。誰か小暮が死んだことをちゃんと確認しましたか?」
「だからそもそも死んでねーから!」
 アキュートの言う通り、小暮は一応生きている。というかこの設定皆忘れているのではないだろうか? と時折疑いたくなってくる。
「死んだことにしておけば疑いは外れるのです。そして、監視の目を逃れた小暮は今ある人物を狙っているのです……恐らく、狙われているのは雅羅とななななのです」
「え、私?」
「なななも」
 雅羅となななが自分を指さす。それにペトが頷いた。
「……ちょっと口を挟むわね。そもそも、そんな偽装なんて面倒な事をする理由はあるの?」
「勿論です。動機があるのです。それが狙われている理由でもあるのです」
 雅羅の問いに、ペトが頷いた。
「――理由は、オパーイです」
「ペト、もういい。それ以上はよくない」

 アキュートが止めようとするがペトは止まらない。
「小暮は常々思っていたのです。どんどん増えていくオパーイキャラ。あいつらはオパーイで人気を集めている。その陰で自分はどんどんと隅に追いやられていく。その恨みはどんどんと募っていき、やがてこう思ったはず。復讐してやる、と」
 ペトがふっと、遠い目をして何処かを眺めた。
「最早全てのデカ乳を対象とした復讐の鬼と化した小暮も元は普通の男……それを狂わせたのはオパーイ……すべての元凶はオパーイなのかもしれないです」
「おいペト、何かうまい具合まとめたような空気にしてるけど、全くうまい事言えてないからな?」
 アキュートが呆れ気味に言うが、ツッコミ役の定めと言うべきか、ペトはガン無視した。
「成程、すべては女共のけしからん胸が悪いのか……」
 それまで黙って話を聞いていたアルマ・フリューゲル(あるま・ふりゅーげる)がすっくと立ち上がった。
「モテナサソーな不幸な男を陥れた胸……けしからん、非常にけしからんな」
 そう言うとアルマは手をわきわきと動かす。その動きは何かを揉みしだく動きであった。
 そして、ニヤリと笑みを浮かべると皆に顔を向き直る。その眼が捕らえていたのは、雅羅とななな。
「そんなけしからん胸は検査しなくてはならんなぁ! よし、オレが揉みしだいて検査してやらぁ!」
「おい待てお前その理屈はおかしいぞ!」
 アキュートが止めようとするが、鋭い瞳のままアルマは睨み付ける。
「あぁん!? 検査することによって人を狂わせる秘密がわかるかもしれねぇじゃねぇか! 根拠? ねぇよそんなの!」
「成程、一理あります」
「ねぇよそんなの!」
 うんうんと頷くペトにアキュートが怒鳴りつける。
「というわけでその胸揉みしだく! ああ一応言っておくがこれは検査であって私情は一切挟んでないからな! 挟んでないって言ってるだろチキショー何か色々挟めそうなでかい乳しやがってぇー!」
 血涙を流しながら、一番近くにいた雅羅に飛び掛かるアルマ。どう見ても私情、というか私怨しか見当たらない。
 私怨に満ちたアルマの手が、雅羅に伸びた瞬間――
「てい」
「あうぉッ!?」
パン、と部屋に軽い破裂音が響く。同時に、アルマの身体が一瞬跳ね、床に落ちた。
「悪いけど、そう簡単に触らせるほど安くないのよ」
 そう言って雅羅はバントラインスペシャルの銃口から立ち上る硝煙を息で吹き飛ばす。
「じゅ、銃とか反則じゃねーか……がふっ」
 それだけ言うと、アルマはぴくりとも動かなくなった。
「……またオパーイのせいで尊い犠牲が」
「何処が尊いんだ何処が」
 悲しそうに目を伏せるペトに、アキュートが突っ込んだ。
「ねぇ、ペド探偵ー」
「だだだだだ誰がペドですか! ペトはペトです!」

 なななに呼ばれ、怒ったようにペトが反論する。怒るのも無理は無い間違いだが。
「ある意味間違いじゃないだろ」
 呆れた様にアキュートが言う。まぁ、確かに。
「ところで何を持ってなななをおっきい判定にしたの? 別にななな、そういう設定ないよ?」
「へ? いや、その……」
 ペトが困ったように口淀む。確かに、なななにそういう設定は無い。雅羅はあるが。
「……なぁペトよ」
「なんですか、アキュート?」
「お前、まさか単なる嫉妬でこんな推理を――」
「そそそそそそんな馬鹿な事があるわけないじゃないです! ほらもう終わったんだから行くですよ! こ、このままで済むと思うなですよー!?」
 完全に負け犬の捨て台詞を残しつつ、ペトがアキュートを急かして退場していった。その後はまるで嵐が去ったように、部屋が静まり返る。
「……なんでボクは一切話題に触れられてないんだろう」
 ただ一人、アゾートが何処か釈然としない表情で自分の胸に手を当て、ぽつりと呟いた。

――デッドリスト入り、現在15名