校長室
2022年度 葦原明倫館大運動会ノ巻
リアクション公開中!
第4競技 リレー 早いもので、残すは男女5名ずつで争われるリレー競技のみとなった。 大きなグラウンドを、男性は1周、女性は半周する。 「こ、こんな僕でもスコシは役にたちたい……」 白組の第一走者は、アリステア・オブライエン(ありすてあ・おぶらいえん)。 おどおどしながらも、ライン内側に列を成す。 「アリステア、おぬし……運動なら体操服の方が適していると思うが……」 鬼束 幽(おにつか・かすか)がつっこんだのは、アリステアの服装について。 忍装束は、ただ走るだけのいまには向かないのではないかと。 「そそ、そんなこと……」 「あー成る程、仕方のない奴だ。 しかし良いか、運動とはいっても侮るなかれ。 これも修業ととらえるのだ」 なにかを察して、幽はそれ以上の追求を辞めた。 代わりに、競技へ出るにあたっての心得を教授していく。 「とはいっても……まあ、1位になれとかそういう事じゃない。 アリステアは普段の姿勢が悪いからな。 走るときくらい正常な形で走らなければ、任務にも支障をきたす。 男子なのだから、胸を張って走れよ」 「う、うん……」 「大丈夫か? 忍たるもの、これくらいで怯えていてはいかぬぞ」 幽の話を、頷きながら隣で聴いていたゲイル。 少しだけ心配になり、こちらもアドバイスをば。 「苦手なんです……あ、あの、ヒト多いところ。 センパイ達苦手なわけではないです。 イッショケンメがんばります……」 ゲイルの言葉を受け取ったアリステアは、狐面と強化骨格を装着した。 すると、なにやら変化が。 「リレー……走るという行為は、ニンジャにとってはチャメシ・インシデント」 猫背で根暗なおびえっぷりは、どこへいったのか。 自信満々に、走ることは日常茶飯事だと言い始めた。 「だがここはメーリンカン。 実際スゴイ級の兵が集うところ……ベイビーサブミッションという訳にはいかないようだ」 ベイビーサブミッションは赤子の手を捻る、実際はすごいとかとても、という感じの意味らしい。 変な日本語を使っているが、先程までとは打って変わって姿勢も態度もキリッとしている。 「シショー、安心してほしい。 虎穴に入らずんばタイガーを得ず……死ぬ気で走れば良いだけだ、古事記にもそうかいてある」 「虎穴に入らずんばタイガーを? あぁ、虎穴に入らずんば虎児を得ず、か。 ちょっと意味が違うぞそれは。 まぁ、一生懸命っていう心意気は伝わった。 頑張ればわらわの弁当を食わせてやるぞ! 後で弁当代払ってもらうがな!」 「ふふふふふ……特訓の成果、見せるとき!」 ピストル音とともに、最終レースは始まった。 スタートダッシュに成功したアリステアが、身体ひとつ分、前へ出る。 白組優位のまま、第2、第3、第4走者へと繋がれて。 「よし、そのままがんばって!」 赤組の第5走者はであるフィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)にも、バトンが渡った。 前を往くゲイルとの距離は、そう遠くない。 (準備運動は丁寧にやったし、いける気がするんだ!) 想いはときに、強い力へと変わる。 徐々に差を詰めていき、抜くか抜かないかというあたりでゴール。 「はぁ、はぁ、はぁ……」 「魔法使いと競ったのは初めてだが、速いのだな、フィッツ殿」 「ありがとう。 魔法使いは運動能力が低いと思われがちだけど、そんな事は無いんだよ?」 「というと?」 「魔法の箒に乗るのに、バランス能力も必要だし。 図書館の蔵書と格闘したり、実験器具を手入れしたり。 あとマテリアルコンポーネントの準備にだって、体力は必要な事があるんだよ」 「なるほど」 「それにそれに、イルミンスール魔法学校の中を毎日上り下りしているから、足腰は鍛えられてるんだよ!」 などとゲイルと話していると、既に走り終わっていた赤組男性陣も、輪の中に入ってくる。 勿論チームを応援しながら、各々の学校のことを紹介し合った。 「よーすけくん、こっちっ!」 「たっ、頼んだよっ!」 そうこうしているうちに、アンカーへと番がまわる。 身に纏う襷と、ここまで駆けたすべてのメンバーに誓って、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は全力を尽くした。 「はう〜っ、勝った〜っ!」 「やった、詩穂さんっ! 最後かっこよかったよ!」 「うん、よーすけくんのおかげだね!」 「あ〜いや〜そんな〜あ。 終わったらさ、お茶でもどうかな?」 ゴールテープを切った詩穂が、赤組のメンバーに迎えられる。 勝利を称え、労をねぎらうのかと思いきや、耀助は相変わらずで。 「う〜ん……でもごめんね、遠慮しておくよ。 だってよーすけくんは、詩穂のたくさんいるおともだちの中のひとりだからね☆」 ちょびっと、項垂れる耀助。 毎回この台詞を返されているというのに、懲りないヤツである。 「この際だから、はっきりさせておこう! 詩穂の好きな人はアイシャちゃん! アイシャちゃんが、パラミタや人々を守るために今もがんばっているから。 詩穂も、パラミタの平和の祭典のためにがんばったんだ!」 ということで、今回もまた誘いはすべて断られ……てない。 美女とランチをともにしていやがりましたね、めでたしめでたし。 「皆の者、お疲れさまであった! 結果を発表するでありんす〜」 早速、閉会式が始まった。 ハイナが、手許の封筒を開く。 「ふ〜むふむ。 勝ったのは……赤組でありんすっ!」 言い終わるよりも早く、いろいろなところからいろいろな声が漏れた。 「なになに……ほぅ、結構な接戦であったのだな。 各競技ごとの得点はというと……」 徒競走では1位、そのほかの競技では勝ったチームに、10点が入る計算ということで。 徒競走 → 赤組60点 白組40点 玉入れ → 赤組 5点 白組10点 綱引き → 赤組 5点 白組10点 リレー → 赤組10点 白組 5点 だ、そうな。 「いや〜素晴らしい大運動会であった。 観ていてとても面白かったえ、また次もできるとよいのぅ」 「皆さん、ごゆっくりお休みくださいませね」 ハイナと房姫から、一言ずつ受け取って。 無事に、2022年度の葦原明倫館大運動会は幕を下ろしたのであった。
▼担当マスター
浅倉紀音
▼マスターコメント
お待たせいたしました、リアクションを公開させていただきます。 皆様とてもがんばっていただいたので、素敵な結果となりました。 続いていくよう、今後も呼びかけのありました際にはご参加くださいませ。 楽しんでいただけていれば幸いです、本当にありがとうございました。