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リアクション
■幕間:暴走の過程
「それで間違いないんだな?」
「ああ、一大ニュースだったからね。よおく覚えとるよ」
玖純 飛都(くすみ・ひさと)は街の人から得た情報が正しいであろうということを確信していた。
それはすでに他の人たちからも同じ証言を得ていたからだ。
浮遊大陸パラミタの出現に劣らないほどの事件が起きたのは記憶に新しい。それはパラミタの月にあるニルヴァーナへの回廊が開かれたというものだ。このたびの機械が暴走するという事件はその後から頻繁に起こるようになったのは確実であった。
彼は自問自答する。
それは調査に乗り出す前、暴走事故の話を聞いたときに頭に浮かんだ事例があったことに起因する。
(機械の暴走というと、地球では機晶石を用いた際に似たようなことが起きたという噂を聞いたことがあるな)
ここは地球ではなくパラミタだが……関係性がないとは言い切れなかった。
考えながら路地を歩いていると倉庫の並ぶ通りに出た。
倉庫の前で一組の男女が何かしら話しているのが見える。
「これらが暴走した物らしいですよ」
「どうなったのかは当事者から聞いてきたわ。あとは現物を確認して確証を得るだけね。機工士の私に任せなさい」
機工士という単語に呼び寄せられるように玖純は二人に近づくと、それが知り合いであることに気付いた。
「御凪じゃないか。アンタも暴走事故を調べてたのか」
「玖純君こそ。それでなにか面白いことでもわかったんですか?」
玖純は事故の多発し始めた時期がニルヴァーナへの回廊が開かれた頃だという話をした。
御凪も自分の推測を交えた暴走の原因について話す。そこへトーマが駆け寄ってきた。
「にいちゃん、お待たせ。調べてきたよ」
「大所帯になってきたな」
「それだけ情報が集まってきたってことですよ」
トーマを交え、情報交換を続ける。
「街の東部にはたしか遺跡があったな。石女神の遺跡と呼ばれている」
「遺跡からは機晶姫のパーツも発掘されているそうですよ」
共通点は機晶技術だ。今までは謎の多かった機晶技術だが、元ニルヴァーナ人のポータラカ人たちとの交流などで技術の源流がニルヴァーナ大陸にあることは少なからず知られている。
「遺跡はかなり古いものらしいな。それこそ古王国時代並に」
「そのあたりは遺跡調査の仕事を引き受けた人に聞いた方が確実でしょうね」
御凪は玖純に応えると自分を機工士と言っていた少女、アイシス・ウォーベック(あいしす・うぉーべっく)に声をかける。
「どうですか?」
「真人は探偵になれるわね」
アイシスは言うと残骸から取り外した機晶石をこちらに見せた。
ひび割れていて使い物になるのか素人からは判断ができない。
「証言と破損状態から察するに、真人の推測どおり威力が増したで正しいわ。正確には機晶石エネルギーが増大したってところかしらね」
ただ、と彼女は付け加える。
「機晶石が暴走の原因だとすると、しないものとするものに分かれる理由が見当たらないわね。この街にも機晶姫が何人か住んでいるようだけど、彼女たちの動力は機晶石なのよ。でも機晶姫が暴走した話はまだ聞いてないわ」
「つまりまだ情報が足りないってわけだな」
「そうよ。比較的、機晶石が大きいものほど暴走を起こしやすいという憶測はできるけどね」
「理由は?」
「燃料は多いほど燃えるでしょ?」
なるほど、と玖純は頷く。
「ここで調べることは調べましたし、他の方と合流して情報交換をしましょうか。街の人のためにも対策を考えなくてはいけませんしね」
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