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 エピローグ

「麗華さん。本当は、わたくしも貴女が羨ましかった」
 沙耶が、ゆっくりと歩み寄りながら続けた。
「いつも元気な貴女に憧れていたわ」
「そうだったの……」
 少し恥ずかしそうに、麗華はうつむいた。
「あたしたち。自分に足りないところだけみて、嫉妬していたのね。話せばわかり合えたのに」
 口元をほころばせる麗華。鬼のような形相だった彼女に、ようやく笑みが浮かんだ。
「わたくしはこれ以上、貴女と争うつもりはありません。今回の件は不問に付すつもりです。……もちろん、瑛菜さんが許すなら、ですけれど」
 そう言って沙耶は、不安そうに瑛菜を見つめた。
 見つめられた方の瑛菜は、なんでもないというふうに肩をすくめる。
「あたしは気にしてないよ。スリル満点で楽しかったしね。誘拐されるなんて、これも有名人の特権でしょ」
 それを聞いて、ホっと胸をなでおろす沙耶。
 麗華に向き直ると、こう告げた。
「今度いっしょに、空京の街を歩きませんか。ルカルカさんに教わった、美味しいスイーツのお店があるんです」
 そう言って差し出された手。
 うつむく麗華が、照れながら握り返した。


 西園寺家と、綾小路院ヶ崎家。
 ふたつの財閥による抗争は、ふたりのお嬢様に芽生えた友情で、休戦状態に入った。



                                      ☆   ☆   ☆


 とはいえ。
 誘拐事件なんぞを企む麗華が、そうやすやすと引き下がるわけがない。
「ふふふ。今頃あの子、慌ててるでしょうね」
 私邸に戻った麗華が、懐から水筒を取り出す。
 彼女はちゃっかり、沙耶の持っていた水筒をくすねていたのだ。
「これを使えば、あたしの企業はうなぎのぼりね! おーほっほっほ!」
 さっそく中の血を使って、占いをはじめる麗華。出てきた予言どおりに、それぞれの政策を決めていく。
 しかし、彼女は知らなかった。
 水筒に入っているのは、沙耶ではなく、レオーナの(汚れた)血液であることを。

 そんな血を使った占いに、正しい予想がでるわけもなく――。
「ちょっと! どういうことなのよ!」
 後日。
 綾小路院ヶ崎家が傘下に収める、企業の株価はどんどん暴落していった。
「占いのとおりにやってるのに……ぜんぶ裏目に出てるじゃない!」
 ヒステリックな声を上げ、頭をかきむしる麗華。

 グループ再建のため奮闘する彼女であったが、それはまた、別のお話。

担当マスターより

▼担当マスター

水琴桜花

▼マスターコメント

 ご参加いただき、ありがとうございます〜。
 素敵なアクションがたくさんあって、とても刺激的でした。

 今回は黒幕の麗華を含めNPCが五人もいるので、それぞれの掛け合いを楽しんでいただけたらなと思います。
 そのせいで、プレイヤーさん同士のやりとりが薄くなってしまったかもしれず、その辺りはごめんなさいです。あと、自分でもタイトルはもうちょっと何とかならなかったのかなと思うのですが、他にしっくりくるのがひらめかなかったので、こんな感じになりました。
 まだまだ精進が必要ですね。もっと面白いシナリオが書けるように頑張ります。

 今回登場した、沙耶、鏡夜、麗華の三人は、きっかけがあれば他のシナリオでも出したいなと思います。そのときはまた、構っていただければ幸いです。

 もう、今年もおしまいですね〜。来年もどうぞ、よろしくお願い致します。
 それでは皆さま、よいお年を!