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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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第二章 議論開始


清泉 北都(いずみ・ほくと)
「さてと、ここからは僕達の出番だ。
 ……とは言ったものの、何から手をつければいいんだろうねぇ」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「色々と考えてはきたものの、いざ話し合うとなると困るものですね。
 衛兵テントで聞き込みをしたルカルカ様以外は、生存者の方々とも初対面ですし」

 まさか、なんの脈絡もなく犯人を指名するわけにもいかない。
 そこに至るまでの議論と、それによって得られる裏付けが必要だ。
 とはいえこれだけの人数がいると、自分だけの意見を叫び続けるのも難しい……
 誰もが下手に動き出せない状況だと思われた、その時。

トマス・クラーク
「……我々は捜査情報についてはよく知りませんが、事件当時の証言ならば可能です。
 聞きたい事があれば遠慮なく言ってください」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「うーん。形式としては、裁判というかディスカッションよね。
 ならまずは、生き残りの5人も交えて、気になる点を整理してみない?
 ひとつの考えに固執するのは良くないと思うし……他の人の意見も聞きたいな」

アメリー・フラット
「え、でもぉ……犯人かもって疑われてる私たちが、
 議論に加わっちゃってもいいんですか……?」

サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)
「いいんだよ。正直なところ、情報不足を痛感していたからね。
 アリバイ確認は終わってるし、口裏を合わせられるような心配は無いさ」

 アメリーの疑問はもっともだったが、
 逆に犯人でない生き残りが何かを知る事で、議論が進展する可能性もある。
 早期解決が望まれる今回は、そこに賭けてみるのも吝かではないだろう。

金元 ななな(かねもと・ななな)
「あ、ポッと出でごめんだけど、なななは情報科少尉として議論を記録させてもらうよ。
 基本的には口を挟まないから、そのつもりでよろしくね!」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「あぁ、助かるよ。
 記録つけてもらえるんなら、みんな遠慮なく発言できそうだな。
 とりあえず不可解な点を挙げていけば、そっから犯人に繋がってくと思うぜ!」

レベッカ・チッコリーニ
「……あの青髪男は議論に参加してないのね。
 よかった、それならあたしも少しは快く協力できるわ」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「あはは……もしかしてダリルのことかな。
 なんか他にやる事があるとか言って抜けていっちゃった……」

早川 透
「……向こうの方に姿は見えるけどな。団長と参謀長の近くで何か話してやがる。
 ま、いないならいないで良いだろ、こっちはさっさと進めようぜ?」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「いいね、総勢20人の大議論の幕開け……。
 俺の自慢の推理を披露するにゃ、うってつけの舞台になりそうだ!」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「……アキラのバカは放っておくとして。
 そういうことならば、ちょうどセレスが1つの疑問点を挙げたいようじゃぞ」

 ルシェイメアの発言を受けて、この場にいる全員がセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)に注目した。
 唐突のフリだったので若干戸惑いつつも、意を決してセレスティアは語り出す。

セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「えっと……捜査の時にも情報として同期した事なのですが、
 <トマスのアリバイ><仮眠室の映像記録>が、矛盾しているんですよね」

トマス・クラーク
「えっ!?」

デュオ
「ククッ……アリバイに矛盾点だと? 面白い、詳細を聞かせてみよ」

セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「トマスさんが偉い人ルームを出て仮眠室へ行った理由は、
 アメリーさんに渡す資料を取ってくるため。そうでしたよね?」

トマス・クラーク
「……ええ。それは間違いありません」

セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「でも<仮眠室の映像記録>には……
 トマスさんが何も手にしないまま、南側の扉から出て行った映像が残っていたんですよ!」

 それは彼女の言う通り、捜査の時に既に明かされていた矛盾点だった。
 当然その点について気になっていた者も多いだろう。
 だが、捜査情報について特に聞かされていない生き残りの5人には、眉唾物の話である。

早川 透
「なっ……それホントかよ!?」

ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)
「あぁ、それワタシも気になってたんですよね〜。
 どうしてそんな嘘をついていたのか、フツーに考えると〜」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「トマスさんが犯人で、アリバイを偽装する必要があったから……
 まぁ、そう考えちゃうのも仕方ないよねぇ。僕もそう思ってたし」

アメリー・フラット
「そ、そんな……所長!?」

トマス・クラーク
「ま、待ってください。思い出しました!」

早川 透
「はっ、何を思い出したってんだよ? 自分が犯人だった事をかぁ!?」

 今までそれなりに大人しかった早川だが、
 トマスが怪しいと見るや否や、いきなり高圧的な態度へ豹変した!
 周囲は少々驚いたが、見かねたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が止めに入る。

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「待てって言ってるじゃない、少し落ち着きなさい。
 あんまり結論を急いでると逆に疑われるわよ?」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「きっと何か弁明する事があるんだわ。そうよね、トマス?」

トマス・クラーク
「……はい。思い返せば、確かに私は南側の扉から一度出ていました」

ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)
「それは、何のためにです?」

トマス・クラーク
「何のためといったら……確認のためですかね。
 資料を探している時、奇妙な音が休憩室のほうから聞こえた気がしたんですよ。
 それで、原因を探るために休憩室を覗きに行ったんです……」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「それって、かなり重要な手がかりなんじゃないかな?
 とても証言するのを忘れてしまうようには思えないけど」

トマス・クラーク
「いえ、それが私の気のせいだったようで。
 休憩室は無人で、音がたったような形跡もありませんでした。
 覗いた後はすぐに仮眠室へ戻りましたし、特に気に留めなかったんですよ」

セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「ですが、それなら<休憩室の映像記録>に、
 トマスさんが部屋を覗いた様子が映っているはずなんですが……」

トマス・クラーク
「はい。きっと映っているはずです」

サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)
「んー、キミはそう思うかもしれないけど、実際は映ってなかったんだよね」

トマス・クラーク
「え? そんなはずは」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「慌てんなって。その映像が残ってないのは、トマスのせいじゃないからよ」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「実は、トマスさんが仮眠室の南側の扉から出て行ったほんの数秒後から、
 全ての防犯カメラの映像が途絶えてたんだよねぇ。
 内部犯の偽装工作だと思うけど……きっとそのせいで映らなかったんだよ」

トマス・クラーク
「そんな! では私が休憩室を覗きに行っただけだという証拠は、
 もう残っていないという事ですか……」

早川 透
「白々しいぜ。どうせ証拠を残さないために、アンタが工作したんだろ!?」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「……いや、その可能性はないじゃろ。
 考えてもみるが良い。映像が途絶えたのは、トマス氏が仮眠室を出た数秒後じゃぞ?
 流石にそれだけの時間で管制室まで行き、映像を切ることはできんよ」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「それに、休憩室に顔を覗かせたところも映ってなかったとなると、
 映像が途絶えた22時05分、トマスはちょうど仮眠室〜休憩室間を移動中だった……
 そういうことになるわよね?」

デュオ
「ふむ……奴の証言を信じるのならば、そうだろうな」

早川 透
「そ、そうか! 所長が嘘の証言をしてる可能性だって、まだ残ってるぜ!」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「確かに残ってるけれど、それを確かめる術は今のところないわ。
 ここは一度置いといて、他の事にも目を付けた方が良いと思うわよ」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「そうね。最初にも言ったけど、ひとつの考えに固執するのは良くない……
 他に気がかりな事がある人はいないかしら?」

 ルカルカの発言を受けて、少しの間静まりかえる一同。