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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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4、宴会 〜毒を食らわば皿まで? 恐怖の料理〜


「さあ、諸君。わしとスタッフが手間暇をかけた料理だ。存分に味わうがよい、ただし……残さず食べることだ!」
 馬場校長は笑ってみせながらも、生徒達にさりげなく喝を入れたのだった。

 普通の料亭によく使われる漆塗りのお盆。そして漆器に様々な料理が盛りつけられて出てきた。
 馬場校長(と一部のスタッフ)が振る舞った料理なだけあるのだろうか、とてもおいしそうに見えた。

「いただきま――なっ……!?」
 ほんの少し口にいれただけで美紀は絶句した。
 あまりの衝撃が大きかったのだろう、最後の風船は割れてしまった。
 それは、決しておいしかったからではない、あまりのまずさに衝撃を受けたのだった。

「キュアポイゾンを掛けてもおいしくはならないなの……」
 斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)は先に、キュアポイゾンで毒をなくして食べてみる。が、味はどうしても変わらなかった。
 この味はまるで、生ごみのような……壮絶さを超える味をこらえながらも食べていた。
「で、でも、隣の人達、平然とこの料理を食べてるよ!?」
 伏見 さくら(ふしみ・さくら)が、驚いた声をあげながら隣の二人を指さした。
 その状況に思わずハツネは目を丸くした。
 レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)カノン・エルフィリア(かのん・えるふぃりあ)は無言でひたすら、出てきたご飯を食べていた。
「何ともないの?」
「えっ? ああ、なんとかこのくらいなら食べられる」
「私が作った料理だしね、ちょっと味つけを失敗したけどセーフよ!」
「ちょっと……?」
 不思議そうに覗き込むハツネたちに、レギオンは苦笑を浮かべながら答えた。
 そして、「ちょっと味付けを失敗した」という、カノンの顔をまじまじとみる。
 レギオンによると、カノンの料理は見た目がよくても筋金入りのまずさらしい。
 そう説明するレギオンにカノンは横腹を強くつつき、抗議の意志を示す。
「だって、本当のことだろう……後始末もさせられるし……」
「心はこもってるわよ!!」
 二人は軽い口げんかをし始めた。

「あ、お母さんわすれてたなの」
 思い出したように、親孝行のために連れてきていた斎藤 時尾(さいとう・ときお)へと、ハツネは振り返った。
 もしこのまずい料理を食べてしまっていたらと、心配しながら振り返ったのだが、それは無駄な心配だった。

「なかなかの飲みっぷりじゃのう!!」
「こういうところで飲むお酒は格別なのさ〜」
 斎藤 時尾(さいとう・ときお)天神山 保名(てんじんやま・やすな)が顔を紅くしながら、酔いどれていた。
 手には互いに一升瓶が握られており、その中身はお互い半分を切っていた。
「お、ハツネも飲むさね?」
「いえ、ハツネは今日は遠慮なの」
 ハツネが手を振って断ると、時尾と保名が再び飲み続ける。
(お酒が入ってるから、あまり味は気になってないみたいなの)
 内心、ほっとしながらハツネは楽しそうにお酒をのむ時尾を嬉しそうに眺めた。

「あの人達、茅炎白酒を軽く飲み干そうとしてるよ……」
 その様子をまた、別のところから眺めながらミナ・インバース(みな・いんばーす)はつぶやいた。
 実は2人が飲んでいるお酒は、普通のお酒ではなく【茅炎白酒】というもので、某国一番の高濃度と誇られる酒だった。
 本来であれば顔を真っ赤にして倒れると予想していただけに、この展開には予想外だった。

         §

「こ、これを……食べる」
 初那 蠡(ういな・にな)はごくりと喉を鳴らした。
 周りの話ではすごくまずいらしい料理。
 ちらりと右を向くと、同じように四十万 さくら(しじま・さくら)がこちらを見ていた。
「あの人達みたいにお酒を飲めば?」
「だめです! そんな危ないものは私が飲みます」
「あ、あはは、やめておこうかなあ」
「さくらのごはんは私がいただきます!」
「えっ!?」
 驚く四十万を押しのけ、蠡は四十万の目の前にあるご飯を取ると、口の中へと次々放り込んでいく。
 その表情は真剣そのものだが、次第に顔の色が真っ青になっていく。
「ちょ、ちょっと、蠡ちゃん! 大丈夫!?」
「だ……大丈夫です……あとちょっと……」
 勢いよく食べたせいか、胃から逆流してきそうな感覚に襲われるが、それをなんとかおしこめた。
 すべては四十万を守るためにだった。
「……ごちそう……さま……でした」
「あっ!」
 とたん、蠡は後ろへと倒れかけが、四十万があわてて抱きかかえた。
「無理しすぎだよ、蠡ちゃん……」
「膝枕……を」
「え? 膝枕をすればいいの!?」
 しばし、四十万は蠡を膝枕しながら看病してあげたのだった。

         §

「次はメインディッシュだぜ」
 そういうとローグが大きなお盆を奥から、中央へと運んできた。
 お盆の上には大きな布がかけられている。
「なんだこれ?」
 高円寺 海(こうえんじ・かい)が警戒しながらローグに聞くが、うなづくだけで何も答えてはくれなかった。
「何か嫌な予感がします。気を付けてください、海くん」
 杜守 柚(ともり・ゆず)が心配そうに海を見上げる。
 海はゆっくりと手をお盆の上に掛けられた布へと伸ばして、外した。
「は!?」
「これは……食べ物じゃないよね」
 コーヒーを片手に杜守 三月(ともり・みつき)がお盆の中を覗き込んだ。
 そこには、大きな蛇の食べ物ではなく、コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)が横たわっていた。
「では……いただきます」
「――っ、たべたらだめーっ!!」
 箸を手に持って、コアトルをつつこうとする、菊花 みのり(きくばな・みのり)の手をアルマー・ジェフェリア(あるまー・じぇふぇりあ)が、あわてて止めた。
 みのりは口を半開きにし、えっ?というような表情でアルマ―を見た。
「代わりに私がたべるわ!」
 アルマーがお盆の中のコアトルをつかむ。
「おいおい、それはさすがに食い物じゃないだろ」
 横にいたグレン・フォルカニアス(ぐれん・ふぉるかにあす)が驚きながら言った。
「私を本気で食べるのか!?」
 まさかの展開にコアトルは驚いた。周りの柚たちも事の展開に目をみはる。
「さすがにおなかを壊すんじゃないかなあ」
「た、たしかにそうかもしれません」
 三月の言葉にアルマーはお盆をもとの位置にもどした。
 仕掛けている本人であるコアトル自身も、内心ほっと安堵をつく。
 が、それもつかの間だった。
「なら、戦うまでよ。やりますよグレンさん」
「え、俺もやるのか?」
 アルマーが先になって、槍をコアトルに突き出す。
 それに続きグレンは、面倒そうな顔で剣をコアトルに突き出したのだった。
「へ? おいおい、ローグ!」
 あわててコアトルが助けを呼ぶが、ローグはどこかに行ったきり戻ってくる気配はなかった。
「どこから切りましょう……ゲテモノなら首から……」
「ちょっ、目がうつろになっってるぞ!!」
「まあ、とりあえず胴体をずさーっとやってみるか?」
「お前まで何、冷静に話してるんだ。おいっ、ローグ!!」
 ローグはやはり助けに来てくれず、その後、海と三月たちはよってなんとかグレイとアルマーは止められたのだった。。