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人狼と神隠しとテンプルナイツ

リアクション

「とりあえずこんなもんだろ」
 斎賀 昌毅(さいが・まさき)は、”籠手型HC弐式”をしまい込みながら、一息ついた。
 罠情報およびマップ情報を送っていたのは昌毅だった。
「ふっふっ、わざわざトラップを張るからには、見られたくない物がその先にあり……そして今もなお動いてるとなると」
「なると?」
 昌毅の持つHCをのぞき込みながら阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)は、これこそが心理と言わんばかりの顔で語り出した。
 それをキスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)が首をかしげながら聞いていた。
「だから、この手の物には正解ルートがあり、トラップの配置を確認していけば
 自ずと、その隠している物にたどり着けるのだよ。つまり『防衛計画』の応用なのだよ。逆算なのだよ」
「え、トラップの場所確認していくとお宝の位置がわかるの? 那由他ちゃん凄いの!!」
 へへんと自慢げに語る那由他に、キスクールは純粋に感動をしていた。
 その横で、一緒に行動していた早川 呼雪(はやかわ・こゆき)も、那由他の言葉に「ほお」と頷いた。
「さすがだな」
「那由多さんのおかげでここまで来れましたし。感服です」
 マリアは驚いた表情で、那由多を眺めていた。
「だいぶ来たんだし、そろそろ何か出てきても良いころだよね」
 横からヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)がげっそりした様子でしゃべる。
 この”何か”というのは別にモンスターとかではなく、人狼と神隠しに対する情報のことだった。
「疲れたか?」
「そりゃあもう。疲れない方がおかしいってもんだよ。ここまで永遠と歩き続けて3時間だしね」
 呼雪の言葉に、ヘルは大げさに答える。
 そして、ちらりと呼雪は、大はしゃぎしている那由他とキスクール達を見る。
 2人はまだまだ元気が有り余っているように見えた。
「あいつらは、まあ……別格だな」
 苦笑を浮かべながら、昌毅は答える。

「那由他ちゃん、言われたとおり魔法トラップを解いたの」
「へっへ〜、さあ気をとり直してお宝へレッツゴーなのだよ!」
 先を飛び跳ねるように走り出していくキスクール達に、昌毅達も慌ててついて行く。

「これは……なんだ?」
 呼雪が思わずつぶやいた。
 狭かった通路は突然広くなり、2階建ての家がまるごと入りそうな場所に出た。
 その中心にはぽつんと台座らしき物が置かれている。
「指輪が置かれてたっていう場所のようですね」
 小さな台座に、しゃがみ込んで調べながらマリアがつぶやく。
「この部屋に目新しい物って、これだけなのだよ」
 那由他はがっくりと肩を落としてため息をつく。


「収穫なかったわけじゃなさそうだよ?」
「どういうことだ」
 ヘルは何かをつかんだようだった。
 少し離れた場所で壁をヘルは、真剣な表情で見つめていた。
 気になり呼雪達も近づいてみる。そこには長い文が書かれていた。
「なんだ?」
「……指輪の封印に関する、石碑のようだねえ」
 ”サイコメトリ”で石碑の作られた過去を呼び出す。
 集中を要することから、すべてを読み取るには少し時間がかかりそうだった。

「指輪か……マリア様、その指輪を持って帰るように上層に命じられているのではないですか?」
「!」
 驚くマリアに、呼雪は「やはりですか」と確信した。
「わかりました。それならなんとしてでも指輪を回収しなければいけませんね」
「ごめんなさい……でもあまり無理はーー」
「いえ、あなたには教団の深部に踏み込んでほしいのですから。これくらい当たり前ですよ」
 ふっと軽く笑みを浮かべながら呼雪は言った。
 この人は教団のことを知ろうとしている……マリアにとって敵の中での唯一の仲間のように思えた。

「……」
 昌毅は二人のやりとりを離れたところで静かに聞いていた。
 (指輪を回収命令か……何をたくらんでるんだ)
 まさか、人類人狼計画? いやいや、もしくは巨大な人狼軍隊を……ないな。
 昌毅はさまざまな思考を巡らせる。
 しかし、グランツ教が指輪で何かを企む可能性は十分あることだけは確かだった。
「って、何やってんだおまえら」
「何にもないから腹いせにトラップなのだよ」
 キスクールと那由他はせっせとトラップを仕掛けていた。
 (これ<トラッパー>も、HCで送っておかないとな……)
 昌毅はため息をつきながらHCを開いた。

「石碑の謎がわかったよ!」
 喜びの声をヘルがあげる。
「何がわかった?」
「人狼の増え方について増えていたよ」
「増え方?」
「指輪は半径1メートル以内にいる人間を人狼に変えるーー」
 ヘルはマリアと呼雪に指輪の説明をする。
 その説明によると指輪は、近づく人を無差別に人狼に変える。ということだった。
 その逆、人狼から人に戻すためには、指輪を再びかざせば良いらしかった。