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 第2章 奇襲

「ワォォォォオオオオオンッ!」
 狼の鳴き声がたくさん重なり、町の隅々までエコーとなって鳴り響いた。
 その鳴き声とともに、大勢の人狼たちが町を徘徊する。
 人狼は、暗がりのレンガ通りに人影を確認すると、そちらへと静かに素早く近づいていく。
 人影はゆっくりと通りを抜けていく。
 満を喫して人狼たちが追いかけようとしたとき、女性らしき人影は一斉に走り出した。
「ガウッ!!」
 人影が走り続け、大きな広場まで出ると、立ち止まった。
 ゆっくりと近づいてくる、人狼たちだったが、突然銃声が鳴り響いた。
「ギャン――」
 一体の人狼が足を押さえて転がりまわる。
「まんまと、引っかかってくれたな」
「どうなるかと思ったけど、あくまで足の速さは人間で助かったわ」
 待ち受けるようにして物陰からグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が飛び出てくる。
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は軽い変装衣装をとると、一息ついた。
 その間も、銃声が鳴り響く。
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)はセレンフィリティと協力して、おとり作戦を決行していたのだった。

「命中!」
 次々と、グロリアーナたちの目の前に並ぶ人狼たちが足を押さえて倒れていく。
 見晴らしの良い家屋の二階、ローザマリアは狙撃銃を抱えるように構えたまま、静かに強く言った。
 ローザマリアはさらに、ほかの人狼の足元をねらい、狙撃していく。
 それらはすべて命中し人狼たちを後ろから徐々に減らしていった。

「ウウッ」
 しかし、グロリアーナの狙撃に間に合わない数の人狼達がゆっくりと低いうなり声をあげて、2人へと近づいていく。
 それを援護するように数発の銃声。
 近づいてくる数体の人狼が一斉にはその場に崩れていく。
 今度はセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が”ブラインドナイブス”で、死角を確保しつつ2人を援護していたのだった。
「こっから先はなんとしても通さないわよ! 何人たりとも!」
 セレンフィリティは何とかして、グロリアーナとセレアナにたどり着くなり叫んだ。
 というのも、この先は町人の3割が避難する避難所。1人も通すわけには行かなかった。
 人狼たちはこのままでは全員やられてしまうと思ったのか、一斉にこちらへと襲いかかった。

「来るわよ!」
 セレアナは2挺のハンドガン”【シュヴァルツ】【ヴァイス】”を目の前につきだし叫ぶと、人狼たちも襲いかかってきた。
「……騎士とは選ばれし者。今こそその義務を果たし全うするときぞ」
 グロリアーナは目を閉じながらつぶやくと、目をかっと開き人狼へと走り向かう。
 冷気を体に、巨大な険にまとわせて人狼へと”抜刀術『青龍』”を食らわせていく。
 足や手の筋を切られ、人狼たちはうなる。

「援護するわ!」
 ローザマリアはすばやく、銃弾のリロードを終えると再び狙撃銃を抱え込む。
 ノクトビジョンごしにスコープを覗き、次々と人狼を撃ち抜いていった。

 グロリアーナとはすこし離れた場所で、セレアナとセレンフィリティは奮闘していた。
「グアアアアッーー!」
 紅蓮の炎をまとった、銃弾が人狼の足をかすめる。
 直撃ではないものの、人狼の足には重大な損傷を与える。
「セレン!」
「わかってるわ!」
 セレアナのかけ声に、セレンフィリティは2挺拳銃を人狼へと向ける。
 すると、セレアナも同じ方向に銃口を構えると、2人は同時に銃弾を連続発射する。
 ぎらぎらと赤く燃える銃弾、きらきらと冷気を放つ銃弾、この2つの弾丸が平行に飛び交う。
 程なくして、人狼は数が減っていった……。