イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

正体不明の魔術師との対決準備?

リアクション公開中!

正体不明の魔術師との対決準備?

リアクション

 イルミンスール魔法学校、校長室。

「むぅ、これで上手くいかなかったら5度も同じ魔術師にやられた事になるですぅ」
 エリザベートは怒り顔で地図とにらめっこしていた。魔法学校なのに四度も一人の魔術師にやられては怒って当然だろう。

「大丈夫だよ」
 友人であるエリザベートが気になったルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を伴って登場。 
「二人共、どうしたですか?」
 まさかの登場にエリザベートは驚き、地図を机に置いてルカルカ達を迎えた。
「心配になって来たの」
 ルカルカはにっこりと笑顔。話を聞きつけルカルカが真っ先に思いついたのは怒り心配するエリザベートの顔だったのだ。
「……アーデルハイトがいないが」
 ダリルはアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)が見当たらない事に気付いた。
「大ババ様は手記の復元とかの作業をするみんなのお尻を叩きに行ったですぅ」
 エリザベートはアーデルハイトの鋭い指示が飛び交っているだろう現場を想像しながら答えた。
「……という事はあまり進んでいないのか?」
 ダリルはアーデルハイトの様子から作業の程度を読み取り、念のためと訊ねた。
「そうですぅ。分かった事は探索者の人に教えた事だけです。それよりも……」
 そう言ってエリザベートは溜息をつき、現在の不安に目を向けた。
「装置設置がうまく行っているか気掛かりなんだね?」
 ルカルカはエリザベートの不安を見抜いた。
「あの双子が参加しているというからな。皆も手こずっているだろう」
 ダリルは周囲に迷惑を掛けている双子の有様を想像していた。あの双子が関わるとなると作業の進捗具合は芳しくないだろうと。何せ何度も関わって来たので想像する事は容易い。
「ふーん、そっか。ダリルも皆が心配なのかぁ」
 ルカルカはにんまり。なぜならダリルの様子から作業だけでなく従事するみんなに対しての心配も潜んでいる事を見て取ったから。
「そうは言っていない。装置が正しく設置されたかを技術者として気掛かりなだけだ。あの双子が関わると面倒な事ばかりが起きるからな」
 ダリルは憮然とした態度で早口にルカルカの言葉を否定した。心配していた事ははっきり。
「……心配してくれてるですね〜」
 エリザベートはにっこりしながらダリルに言った。ダリルの心配などお見通しだ。
「……それはエリザベートもだろう?」
 ダリルはすぐに切り返した。先ほど溜息をついてたエリザベートの様子にも心配が潜んでいたのは明らかだから。
「……そうでもないですよ〜」
 エリザベートは間を置いてから平時と変わらぬ調子で答えた。誤魔化している事は明らか。
「そうか。まぁ、内心の心配を表に出すなどらしくないか」
 ダリルは誤魔化しなどバレバレなエリザベートの返答に軽く笑み浮かべてから言った。
「で、それ地図だよね。もしかしてこの印は事件が発生した場所? そうだ、こういう時は甘い物が一番! はい」
 二人のやり取りが終わったのを見計らい、ルカルカは机にある地図に気付きつつお菓子好きのエリザベートのために持参したチョコバーを取り出してエリザベートに渡した。
「ありがとうですぅ。いくつかの共通点はあるのにどうしてイルミンスールなのかが分からないですよ〜」
 エリザベートははむはむとチョコバーを食べながら地図について話した。
「ふーん。何か伝説とか発生地を繋げたら五芒星とか何かのマークになるとかは?」
 ルカルカは地図を確認しながらエリザベートに訊ねた。
「マークにはならないですけど、伝説は今の時点では無いですぅ。もう少し調べたら何か出るかもですけど」
 エリザベートはぷるりと頭を左右に振りながら残念な答えを口にする。いくつもの共通点は見出すのにどうしてこのイルミンスールなのかは未だに分からないのだ。
「事件後、調査をした事はあるが、何も異変は感じなかったな。もしかしたら本当に気まぐれなのかそれとも深く探りを入れなければ判明しないような何かがあるのか」
 ダリルは少々思案していた。古城変死伝説事件後に入念に確認したものの空振りで終わり前回の事件では嫌な魔力の気配を感じた事なども思考に含めるもこれと言ってイルミンスールである理由が思いつかない。
「まだ対決には時間があるんだし、調査をすればすぐに分かるよ」
 ルカルカは明るく言った。まだ装置の起動までには時間があるのだから何も出来ない訳ではないはず。
 突然、
「……?」
 エリザベートは遺跡で頑張る者達から声なき声での報告を受け、難しい顔で何事かを話し始めた。
「内容は何だったの? 装置設置に何か問題が起きた?」
 ルカルカは何か起きたのか心配しながら話を終えたエリザベートに訊ねた。
「……魔法凍結に反応して起動する強力な仕組みがあるですぅ。予想はしてたですけど」
 エリザベートは難しい顔のままだ。魔法中毒者の住居という事で何かしらあるだろうとは考えていたが、まさかの仕掛けだったようだ。
「それはまずいな」
 ダリルは冷静に一言。
「遺跡にいるのは頼りになる人達ばかりだから大丈夫だとは思うけど」
 ルカルカは遺跡が気になり始めているエリザベートに話を振る。
「そうですぅ。解除に関係する物もきっと見つかってるはずですから私が行かなくても大丈夫ですよ〜」
 プライドが高いエリザベートは気になりながらも行きたいとは言わない。
「でも現場で感じるものもあるかも……やっぱり、行こう!」
 ルカルカはそんなエリザベートにくすりと笑んでから助けに行くのではなくあくまでも現場での手掛かり調査の体裁を取りつつ手を差し出し誘う。
「……そうですね〜」
 調査のためならとエリザベートはルカルカの手を取り、現場に赴く事に。
 移動はルカルカの聖邪龍ケイオスブレードドラゴンであっという間だった。
 到着しても危険があるため侵入はせず、ルカルカ達に護られながら遺跡の前にいて、回避機能装置について思案していた。