イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

海で楽しむ遊びと仕事

リアクション公開中!

海で楽しむ遊びと仕事

リアクション

 浜辺。

「いろいろと賑やかなことしてるなぁ」
 黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)は双子を眺めて一言。
「初めての海……楽しみにしていた……だけどゴーレムが暴れて楽しめない」
 ロザリエッタ・ディル・リオグリア(ろざりえった・りおぐりあ)の初めての海は予想外に賑やかなものになりそうだ。
「泳ぎの練習どころじゃないですぅ」
 御劒 史織(みつるぎ・しおり)はがっかりの顔で巨大なゴーレムを見ている。
「……海を楽しむにはゴーレムさんを止めるしかありませんね。竜斗さん」
 黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)は竜斗も同じ事を考えているだろうと思いながら言った。
「あぁ、予定変更だ。遊ぶのはゴーレムを退治してからだ」
 竜斗は妻の言葉にうなずいた。
「……戦いたくないけど、仕方ないから頑張る」
「うん、私も魔法で頑張るですぅ」
 ロザリエッタと史織はすっかりやる気。
 満場一致でゴーレム退治となった。
「大きさが大きさだから海に落として崩そう。という事で双子にはあのまま囮として頑張って貰おう」
 竜斗は早速作戦を立てるのだった。
「では、ゴーレムさんの誘導が必要ですね」
 ユリナが竜斗の作戦から必要な役目を見出した。
 その時、
「……その海に落とす作戦自分も手伝いますよ」
 近くを通ったザカコが竜斗達の話に加わった。
「そうしてくれると助かるよ」
 竜斗はザカコの協力に礼を言った。何せ相手は巨大なので人手は多い方がいい。
「ただ海に落とすよりも海の上まで氷の足場を作り、おびき込み、そこから全身を海の中に落とすのはどうでしょうか。囮については自分もあの双子で十分かと思います」
 ザカコは自分が考えた案を披露した。
 さらに
「海に沈めるなら破壊してからの方がより再生を遅らせる事が出来ると思うよ。ゴーレム粉砕は俺が巨大化してするから」
 これまた近くを通った陽一が加わった。
「氷の足場におびき寄せてゴーレムを粉砕して海の中へ沈めるか、うん、それで行こう」
 竜斗はザカコと陽一の案を頭の中で検証した後、採用する事にした。
 そして、作戦決行だ。

 浜辺。

「た、大変です。ヒスミさんとキスミさんがゴーレムに追いかけられて……な、なんとかして助けなくちゃ」
 リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は双子の様子に大慌て。エリザベートに付き添って来たらいつの間にやら騒ぎが耳に入っていた。
「ふふ、ここは元祖・リースの親友! のあたしに任せてよ。困っている親友のために頑張るよ。もちろんあの面白い双子も放っておけないし」
 両腕を腰に当てマーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)は任せろとばかりに旨を張る。
「あんなゴーレム、リースの親友であるこのあたしの下僕がパパっと倒しちゃうからリースはのんびり見学してていいわよ」
 ルゥルゥ・ディナシー(るぅるぅ・でぃなしー)が横目でマーガレットをにらんだ後、リースの援護に名乗り出る。
「そうそう、リースは中和する薬でも作っていたらいいよ。出来たらあたしがゴーレムに散布するから」
 ルゥルゥににらみ返してからマーガレットが言った。実はマーガレットとルゥルゥはリースの親友を巡ってライバル心を燃やしているのだ。
「そ、それじゃ、ゴーレムさんは二人に任せて私は、中和剤を作ります。崩しても再生するみたいですから」
 二人のライバル心を感じ、リースは恐る恐る言った。
 それを近くで耳にした
「それにはあの双子から薬の材料を聞き出す必要があるの」
 綾香が会話に入って来た。
「あ、はい。あ、あのもしかして同じ目的ですか?」
 リースはこくりとうなずいてから綾香に訊ねた。まだ綾香の目的を聞いていなかったので。
「そうじゃな。あの魔法薬に興味があってな。私が聞き出して来るからそなたはここで待っているがよい」
 綾香は答えるなり『バーストダッシュ』で双子の所に向かった。
「……あ、はい。お願いします。分かり次第、作製を始めますので」
 リースは高速で走る綾香の背中に言って見送った。

 綾香と別れた後。
「それじゃ、行って来るわね。薬の事は任せたわ。こっちはこっちで頑張るから」
「相手は薬が切れるまで再生し続けるから下僕達に手段は選ばず壊す気で攻撃するよう命令しなきゃね」
 マーガレットとルゥルゥは相手よりも親友のために活躍する気満々。
「あ、あの二人とも怪我人を出さないようにお願いします」
 嫌な予感を感じたリースは双子の身を守るべく気を付けるように注意をした。
「大丈夫だって。リース、何かあったらすぐに呼んで。飛んで来るから」
「リースがそう言うんだったら仕方なくだけど気を付けるわ。呼びつけたらこのあたしが誰よりも早く行ってあげてもいいわよ」
 マーガレットは元気に答え、ルゥルゥは小悪魔な感じで答えた。心なしか二人の間の空気が張り詰めていたり。
 とにもかくにも二人は急いでゴーレムに向かった。
「……ルゥルゥさん、マーガレット」
 リースは不安ながら見送り、綾香からの知らせを待つ事にした。

「キュピゥ! ピキュキュ、ピキュッピィ(わたぼ、海はじめて! 双子のお兄ちゃんたちと遊ぶよ)」
 わたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)は初めての海に大はしゃぎし、双子と遊ぶ気満々。
「スイカも一緒に食べるのだ」
 天禰 薫(あまね・かおる)は楽しそうにわたぼちゃんに言った。薫もまた双子と遊ぶつもりでスイカを持参していた。
「その前にする事がありそうだ」
 いち早く双子を発見した熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は渋い顔をしていた。
「この暑い中、楽しそうだね」
 熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)は双子を観察しながら愉しそうにしていた。何せ自分の冗談を真に受けて面白い反応をするから。
 そうやって双子を観察していた時、顔見知りに声をかけられた。

「こんなに暑い中、元気だなぁ。その様子を見に来たあたしもモノ好きかー」
 双子を眺める高瀬原 梢(たかせはら・こずえ)は双子が参加すると聞きつけやって来た。
「さてとどうしようかな。あたしもゴーレム退治に加わろうかな……あっ、薫ちゃんだ」
 梢は首を傾げながらどうするか考えていた時、目の端に顔見知りの薫達を発見し、声をかけに行った。

「薫ちゃん達も来てたんだね」
「そうなのだ。双子ちゃんとスイカを一緒に食べたいなって思って」
 梢の挨拶に薫は持って来たスイカを見せながら返事した。
「へぇ。あの双子、薫ちゃんに聞いてた通りだね。めちゃくちゃな事ばかりしてて一旦反省するけど喉もと過ぎればで、また面倒をおこすって。だから間近で見てみようと思って来たんだよ!」
 梢は薫に聞いた双子の事を思い出しながら自分がここにいる理由を話した。
「……物好きだな」
「それ思ってたところだよ。というかあの双子何時もあんなに元気なのかな?」
 思わず洩らす孝高の一言に梢は苦笑しながら答え、双子について訊ねた。生を見るのは初めてなので。
「いつもなのだ」
「少しは大人しくなればいいのだけどね」
 薫と孝明は即答した。
「……そうなんだ」
 と梢。孝明の事を怖い方だと思っているため不用意に近付かないように距離を開けていた。
「せっかくだからゴーレム退治に参加しようかなと思うんだけど。薫ちゃん達はどうするの?」
 梢は薫達の予定を訊ねた。良かったら一緒に行きたいなと。
「いつも通りだな。親父もだろ?」
「そうだね。あの子達は面白いからね」
 孝高と孝明はいつも通りの役目で参加を表明。
「我はわたぼちゃんと心のケアをするのだ」
「ピッキュ、ピキュ(双子のお兄ちゃんとスイカを食べるの)」
 薫とわたぼちゃんは双子の心のケアをする予定だ。
「そうなんだ。それじゃ、あたしは行くね」
 予定を聞き終えた梢は空飛ぶ箒に跨りゴーレム退治に向かった。
 この後、薫達も動いた。

「何で誰も助けてくれねぇんだよ」
「せっかく海に来て延々と追いかけっこなんか嫌だぜ」
 双子は自業自得だというのにぶつぶつ文句を垂れながらゴーレムから逃げていた。
 その時、
「学人!」
 ローズの合図が響く。
「分かってるよ」
 学人が『氷術』でゴーレムの腕を凍らせた。
「おわっ!?」
 背後を振り返った双子は驚き、声を上げた。
「二人とも離れて!」
 【紅玉】を構えたローズが双子に避難警告を出すと共に凍った腕を切断した。
「危ねぇ」
「腕が落ちてくるぞ」
 双子は落下する腕を慌てて避ける。
「体が鈍らないように軽く運動をさせて貰うか」
 『空手』を有するカンナは落下する腕が目的の位置まで来るのを待つ。
「おいおい、運動って」
 ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)がカンナの言動にツッコミを入れた。
「あたしは音楽以外だと、蹴りに自信がある。見とけ」
 双子にそう言うなりカンナはを『アンボーテクニック』でローズが切り落とした腕を蹴り上げ、三つに分割した。
「すげぇ、三つに分かれたぞ」
 キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)は轟音と共に三つに分割された腕に驚いた。
「このまま薬が切れるまで繰り返すよ」
 ローズは相棒達に指示を出した後、双子に振り返り、
「そうそう、言うの忘れてたけどこれが終わったらかき氷おごってね」
 御馳走するように言った。
 そこに
「私もおごって欲しいな」
 美羽が登場。
「なんで俺達がおごらなきゃならねぇんだよ」
「だよな」
 不満たらたらの双子。
「……理由は簡単だ。この騒ぎの原因だからだ」
 カンナが冷静に双子にツッコミを入れた。
「うっ」
「それは……」
 双子はカンナの正論に言葉を詰まらせた。
「絶対に何とかするからね。それより、切断した腕が」
 美羽はにこっと双子に笑いかけた後、地面に転がる腕を指さした。
「落ちた腕を踏みつけて吸収して腕が再生か。厄介な相手だね。というかあつい」
 美羽に言われ状況を確認した後、学人が双子の相手をするローズ達に言った。
「学人、やっぱりその格好じゃ、あついって」
 ローズは再び学人の服装に言葉を挟む。
「……無理矢理魔法で涼しくするからいい」
 そう言うなり学人は再び、ゴーレムを凍らせようと『氷術』を使う。
「凍らせるなら私も手伝うよ!」
 美羽は『ブリザード』でゴーレムを凍らせるのを手伝った。